【カルティエ】タンク ルイ カルティエ
革新的かつエレガントな伝説のマスターピース
「タンク」ウォッチが生まれたのは1917年。第1次世界大戦の早期終結に貢献した戦車(タンク)に触発された3代目当主ルイ・カルティエが、戦車を上から見た姿に想を得てデザイン。後にアールデコと呼ばれる様式の先駆けとなった直線で構成される簡潔なフォルムは、誕生から100年以上たった今に通じるモダニティとエレガンスを持つ。1922年には、ケースに丸みを持たせた「タンク ルイ カルティエ」が誕生。"タンキスト"と呼ばれる愛好者には、アンディ・ウォーホル、ジャクリーン・ケネディ、イヴ・サンローランなど著名人が名を連ねる。
カトリーヌ・ドヌーヴも"タンキスト"のひとり。1984年に撮影された写真では、ゴージャスなイエローゴールドのブレスレットモデルを主役にブラックドレスを着こなしている。
【シャネル】J12 キャリバー 12.2
スタイリッシュな黒と白が新時代の到来を告げる
2000年の誕生と同時に爆発的な人気を呼んだシャネルの「J12」は、21世紀のアイコンウォッチと呼ばれる。生みの親は当時のシャネルのアーティスティックディレクター、ジャック・エリュ。メゾンにおける"美しいか否か"の判断を担っていた彼は、メゾンのコードを投影したデザインで時計界に新しい波を起こした。その精神は、現ウォッチメイキング クリエイション スタジオ ディレクターのアルノー・シャスタンに受け継がれる。「J12」のリニューアルを一任された彼は、細部の僅かな変化と新たなムーブメントによって、より美しく機能的に進化させた。
ジャック・エリュによるJ12のドローイング。ブラックセラミックを用いたファーストモデルが、的確に描き出されている。時計通で知られた、彼ならではの作品だ。
【ヴァン クリーフ&アーペル】スウィート アルハンブラ ウォッチ
変革期に時代の風をつかんだ幸運のお守りを手もとに
メゾンが初めて「アルハンブラ コレクション」を発表したのは、1968年。それまでの秩序が大きく変わり始めた難しい時期に舵取りを担ったのは、創設者の甥のジャック・アーペルだった。彼が同僚に贈った四つ葉のクローバーのエピソードは、今も語り継がれる。その幸運のシンボルをモチーフにしたコレクションの「毎日つけられる宝飾品」という新鮮なコンセプトに、ハイジュエラーに縁遠かった若者層が反応し、店に殺到した。以後人気が衰えることなく、プロダクトは時計にも広がる。文字盤に伝統的なギヨシェ彫りを施した時計は、メゾンの卓越した美意識と技術の融合を象徴する。
ジャック・アーペルが「決して希望を失ってはならない」とのメッセージを込めて同僚に贈った詩"Don’t Quit"と、それに添えた、自宅の庭で摘みとった四つ葉のクローバー。
【ロレックス】オイスター パーペチュアル デイトジャスト 31
現代の腕時計を支える機構の最新技術を集約したタイムピース
ロレックスの歩みは、1905年に創立者ハンス・ウイルスドルフがロンドンに興した時計専門商社に始まる。懐中時計が主流の時代に腕時計の将来性を予見した彼は、「短く、どの言語でも発音しやすく、覚えやすく、刻印した時に美しく見える」ブランド名を考案し、スイスを拠点に機能性の向上に邁進。世界初の防水性能を備えた「オイスター」をはじめ、現代の腕時計の基礎となる機能を次々に開発してきた。’45 年発表の「デイトジャスト」は、日付機能を備えた初の自動巻き防水クロノメーター腕時計。現在も最新の技術でアップデートされ、進化を続けている。
1926年に誕生した「オイスター」の防水性能の高さが、ロレックスの名を世界に広めた。英仏海峡を横断した初の女性スイマー、メルセデス・グライツの偉業をたたえる広告に「オイスター」を携行したと記されている。
【チューダー】ブラックベイ フィフティ-エイト
プロ仕様の機能性を日常のパートナーに
「チューダー」の誕生は、1926年。ロレックスの創始者ハンス・ウイルスドルフの「ロレックスの技術と信頼を持って、確固たる品質と先駆性を備えた腕時計を創りたい」とのビジョンによって興されたブランドだ。その確かな技術力で、世界各国の海軍のためのプロフェッショナル ダイバーズウォッチを、数世代にわたって製造してきたことで知られる。「ブラックベイ」は、’54 年に発表されたブランド初のダイバーズウォッチを、現代の技術で再解釈。ヴィンテージ風の意匠と最新の機能を併せ持ち、日常使いにも活躍しそうだ。
「ブラックベイ フィフティ-エイト」のデザインソースとなった、1975年デビューの「オイスター プリンス サブマリーナー」。時針や秒針の形も現代のモデルに受け継がれている。
【ラルフ ローレン】RL スティラップ スモールリンク ブラック
デザイナーの時計への愛を凝縮して
デザイナーのラルフ・ローレンは、ヴィンテージウォッチのコレクターとしても知られる。美しい時計を愛する彼が発表するコレクションには、特別なこだわりが感じられる。「私は、本物だけが持つ信頼感や人の生き方を表現する時計を作りたいと思っています」と彼は語る。鐙の形をケースに表現した「スティラップ」コレクションは、乗馬と共にある自身の暮らしの中から生まれたもの。まるでシルクのビロードのように艶やかな黒も、彼が愛する色のひとつ。それをまとったピースに、スイスの高度な時計製造技術が集約されている。
ヴィンテージの時計と車のコレクターとしても有名なラルフ・ローレン。写真で着用しているタンク ウォッチも収集品のひとつ。「スーツにはエレガントな時計が似合う」と語っている。
【オメガ】スピードマスター 38mm
正確無比な計測で命を救ったムーンウォッチ
1960年代からアメリカで進められた、有人宇宙計画。その公式装備品に、過酷なテストを経て選ばれたのが、オメガの「スピードマスター プロフェッショナル」だ。この時計はアポロ13号計画で、クルーの命を救う役割を果たす。宇宙船の酸素タンクが爆発し、乗務員は月着陸船に移ったが、電力節約のため地球との交信設備以外は使用禁止。そんな状況下、軌道を手動で修正する緊急非常事態に。「スピードマスター」がエンジンを正確に14秒間噴射させるための計測を遂行し、全員が無事に地球への帰還を果たした。
1969年7月、アポロ11号の月面着陸船操縦士を務めたバズ・オルドリンが携行していた「スピードマスター」と、NASAによる承認書。彼はこの時計を着用して、月での船外活動を行なった。
【ロンジン】ドルチェヴィータ イヴィ
時代にフィットするエレガンスを表現
ロンジンの「ドルチェヴィータ」がデビューしたのは1997年のこと。エレガンスを発信するブランドに、最近新たな兆しが見える。ファーストモデルの着想源となった’25年制作ピースのレクタンギュラーケースはそのままに、独創的なコラボレーションモデルを発表。デザインを手がけたイヴォンヌ・ライヒムート(YVY イヴィ)は、スイス・チューリヒを拠点とするデザイナー&スタイリストで、グラムロック風デザインを得意とすることで知られる。スタイリッシュな新作に注目してみよう。
若き日のオードリー・ヘップバーンが体現するエレガンスと、クラシカルなデザインイメージを重ねた、初期の広告ビジュアル。
【エルメス】ケープコッド
メゾンのDNAが新たな創造の連鎖を生む
1991年の誕生以来、エルメスの時計を象徴する「ケープコッド」。デザイナーのアンリ・ドリニーは、長方形に正方形を重ねたユニークなフォルムを生み出した。文字盤を囲むケースのなめらかな曲線と端正な直線が、美しいコントラストを描き出す。そのデザインは、’38年に4代目ロベール・デュマが錨の鎖に着想を得て考案した「シェーヌ・ダンクル」にインスパイアされたもの。さらに文字盤にコマのモチーフを配して、「ケープコッド」と「シェーヌ・ダンクル」を自由な発想で融合し、オンリーワンのタイムピースを創った。
エルメスの腕時計の歴史は、独創的なレザー使いの「ポルト・オニオン」から始まる。1912年撮影の3代目エミール・エルメスの娘たちの写真には同モデルを着用する少女の姿が写っている。