星野アクア
今回、SPURのためだけに作画担当の横槍メンゴさんが描き下ろした『【推しの子】』のアートワーク。ハイジュエリーを身につけたアクアとルビーの姿をドラマティックに描き出した。
「ファッション誌である『SPUR』に、ルビーとアクアが芸能活動の一環として登場したら?と想像しながら描きました。普段は彩度が高いポップな絵を描くことが多いのですが、今回はシックな方向に。大人っぽくクールに見えるように心がけています。ポージングも二人の性格を意識。彼らが少し"おすまし"するなら、こんな感じじゃないかな(笑)」(横槍メンゴさん)
ほしの あくあ●俳優。芸能事務所「苺プロダクション」所属。幼少期、五反田泰志監督が手がける映画で役者としてのキャリアをスタート。バラエティから映画まで幅広い作品に出演。
リング〈Pt、アクアマリン、ダイヤモンド〉¥53,130,000(参考商品)/ティファニー・アンド・カンパニー・ジャパン・インク(ティファニー)
星野アクアが身につけたのは、彼の瞳の色を彷彿とさせるアクアマリンのリング。「アン王妃のレース」と呼ばれる野の花から着想を得た髪飾りのアーカイブスをもとにデザインした。花々を精巧に表現したダイヤモンドを敷き詰めた台座の上で、きらめきを放つピュアなブルー。凛とした佇まいの中に可憐さが宿るリングが、困難が待ち受けるアクアの未来を明るく照らす。
星野ルビー
宝石の名を有する主人公二人に合わせて選んだジュエリー。ここまで緻密なジュエリーを描くのは初めてだったと語る横槍さん。
「アクアとルビー、それぞれの瞳の色はジュエリーのカラーに合わせています。アクアは潔くボリュームのあるリングを一点だけ、というのも彼らしくてクール。一方、ルビーはネックレスだけでなく、イヤリングもつけて思いっきり華やかに。間違いなく"本物"であるハイジュエリーには、オーラのようなものがあると思うんです。それをきちんと表現できたらと、思いを込めました」(横槍メンゴさん)
ほしの るびー●アーティスト。芸能事務所「苺プロダクション」所属。アイドルグループ「B小町」を再結成し、デビュー。俳優の有馬かな、YouTuberのMEMちょの3名で活動中。
「ディオール ローズ」ネックレス¥100,000,000・同 イヤリング¥61,000,000〈ともにPG、ルビー、ダイヤモンド、ピンクサファイア〉(ともに予定価格)/クリスチャン ディオール(ディオール ファイン ジュエリー)
天真爛漫な性格の星野ルビーを彩るのは、「ディオール ローズ」コレクションより登場したネックレスとイヤリング。ルビー、ピンクサファイア、ダイヤモンドの石を並べ、ピンクの美しいグラデーションを描く。優美に咲くバラのごとく華やかなジュエリーこそ、エネルギッシュなルビーの魅力をさらにひき立てる。
1 天性のきらめきを放つアイは「愛」を求めアイドルに。作品を通底する「この芸能界において嘘は武器だ」の布石となる名場面
――「【推しの子】」のTVアニメが世界で反響を呼んでいますが、初めてご覧になったときのご感想は?
赤坂アカ(以下A) 第1話を観たときはとにかく驚きました。横を見たらメンゴ先生はボロボロ泣いてるし。
横槍メンゴ(以下M) 想像をはるかに超えた、ものすごい完成度。あんなの観せられたら泣いちゃうよ!
A ダンスシーンひとつとっても、カメラが舞台上を回り込んだり、引きの絵なのにCGを使っていなかったり。アニメという形にするうえで、あえて大変な道を選び取っているというか……。ここまで丁寧に作ってもらえるのか! という喜びがありました。
M 命を削って作られているんじゃないかと心配になるほどですよね。第1話にすべての力を注ぎ込んだのかと思いきや、オープニングもエンディングも第2話以降もずーっと素晴らしい!
2 幼少期に映画で共演し、アクアの演技力に衝撃を受けた、元天才子役で現在も俳優を続ける有馬かな。「日本で一番観られる側の人間が多い高校」の受験にやってきたルビー&アクアに再会
――お二人はこの作品を「芸能界モノ」とも「人間賛歌」とも表現されていますね。芸能界を軸に、家族、友情 、恋愛、転生、サスペンスなど多様な要素をちりばめつつ、登場人物の多い群像劇に仕立てた理由は?
A 芸能界のなかでも、役者とアイドルの道は描いてみたかったんです。主人公の二人が、アイドルの子どもとして生まれ変わるという設定は最初のフックでもあるし、自分自身、描いていて熱くなれるのは役者の話かなという思い入れのようなものもありました。
M 週刊連載で新しいキャラクターが次々に出てきたときは、先に言ってくれ〜! と叫びそうになりました(笑)。今回だけの登場かな、と思って描いたサブ的なキャラが、後々メインになったりもするので気が抜けません。
A それはメンゴ先生の絵がよすぎるから! キャラを予想以上に気に入ってしまって、また登場させたくなっちゃうんです。言うなれば、僕はマンガに聞きながら描いてるんですよ。
M うまいこと言うね。物語が進むにつれていろんなキャラクターにスポットライトが当てられ、結果的に群像劇になっていったよね。
A 芸能界におけるさまざまな業種の人たちが、どういった価値観で動いているかを描きたい。となると、客観的に捉えるより当事者を出して心情を語らせるほうがうまくいくというのもひとつの理由ですね。
3 ルビーの妙に語呂のいい記憶違い、「重曹を舐める天才子役」は、有馬かなの新しいニックネームに? アニメ放送時はTwitterのトレンドにも登場した
――テーマや人物の多彩さに加えて、描かれる時間も複層的ですね。
A 当初は大河ドラマ的なイメージというか、登場人物が世代を超えて、ゆっくり大人になっていく様を描きたいという思いがあったんです。
M 結果的にスピーディな展開になった。でも、このテンポがいいんだって褒められることも多いよね。
――連載を描き進めるうちに浮上してくる要素も多いんですか?
A 最初から決めていることが8割、残りが2割という感触ですね。
M もともと決めていたところにエッセンスやアドリブが加わってくる。
A 「重曹を舐める天才子役」のフレーズ(3) なんて、まさにアドリブで出てきた表現。まさかあんなにフィーチャーされるとは思ってなかったです。
M 共作ならではの即興性というか、ライブ感も楽しんで描いてます。
4 二人の入学後は先輩・後輩の関係に。いつもかぶっているベレー帽は幼い頃からのトレードマーク
――連載とアニメが並行して進みますが、アニメからマンガへの影響も?
M 影響はかなり受けてます! アニメは抽象化するのが巧みなんです。こういうふうに描いたらいいんだ〜と真似してみたり、色をこうすると映えるな、と逆輸入することもありますよ。
A アニメで描出されたディテールを立てるためにこんな話も描いてみよう、と新しいアイデアにつながることも。
M 第1話の試写を観終わったあと、アカ先生から前もって渡されていたネームの、ある場面の台詞と表情を変更したいって連絡がきて。アニメの熱量にあおられるように、マンガのニュアンスを調整したこともありました。
――マンガからアニメへの絵の変換といえば、口の表現が印象的でした。
M そうなんです! 私の絵、口の上の線に特徴があるんですけど、ばっちり拾って、再現してもらってうれしかったですね。初めはアニメ化するにあたって、制作側と頻繁にコミュニケーションを取る必要があるのかな、と思っていたんです。だけど、序盤に少しやりとりして、そこからフィードバックをしっかりもらえているので、私のほうはほぼ全面的にお任せしちゃってます。
5 ガールズグループ「B小町」で新人アイドルとして活動を始めた有馬かな。客席から応援を送るアクアの心を狙い撃ち!
――その上で、連載ではマンガならではの表現への挑戦もあるんでしょうか。
M 「線」のきれいさだけは、マンガ家がアニメに勝てる武器なんだと師匠に教えられて。自分なりに「線」にいろんなものを込めようと描いてきたんです。が、『【推しの子】』はアニメの「線」もすごくて。特にエンディング!
A 見開きの1枚絵の迫力もマンガならではの要素だよね。と言いつつ、僕が『かぐや様は告らせたい』を描いていたときは、アニメ化したときにスタッフの方々を困らせないように、見開きの使い方も計算してたな。
M アカ先生はアニメに優しい。アニメになったときの見栄えや、アニメ化の成功についてもしっかり考えていて、プロデューサーみたいだよね。
A せっかくだから、関わっている人たちをがっかりさせたくないという気持ちがあって。それに、アニメ化で盛り上がると、その熱を受けて、こっちの熱も上がるというリターンもあるんです。マンガは一人でも描けるけど、僕は周りからの期待やプレッシャーがあったほうが頑張れるタイプなんですよ。
6 アイドルになるために生まれてきたような星野ルビー、人気YouTuberにしてインフルエンサーのMEMちょ、芸歴最長の有馬かながタッグを組んだ、新生「B小町」
希望の星を輝かせるため、絶望という暗闇を描く
——『【推しの子】』という作品で一番描きたい感情ってなんでしょうか?
M いろんな種類の感情があるけど、どれかひとつというより、深度が大切かな。いろいろな感情を、これまでの自分の作品では到達したことのないレベルで、深く表現したいと思っています。今回はネームを描いてもらっているので、アカ先生が表現したいと思っているラインを超えたところまで描き切ることが理想ですね。
A 僕が描きたい感情は、生きることの苦しみ、絶望になるのかな。
M アカ先生、絶望してるの?
A 希望を持って生きてますよ!
M でも描きたいのは絶望なんだね。
A 絶望と希望は表裏一体だから、そこを描きたいんだと思う。
M 希望を描くための助走なんだね。
A 星を輝かせるためには、そこに暗闇を置かなきゃいけないんです。
M じゃあこの物語、最後はちゃんと救済されるんですか? みんな幸せになれるんですか?
A 終わりは見えてる、というか物語の最後はちゃんと決まってます!
7 人気マンガを原作にした『東京ブレイド』2.5次元舞台。当代一の呼び声高い劇団ララライのエース・黒川あかねと、アクア、有馬かなの演技が舞台上で化学反応を起こす!
――4月で連載3周年。いつか終わりがきてしまうのは寂しいですが……。
M 『【推しの子】』は不可逆的な物語。〝エンドレスに日常が続くストーリー〟という展開にはならないんですよね。
A 「物語の終わりはここしかない」というタイミングがあると思ってる。
M アカ先生は、分析と客観視の鬼だよね。それに、作品を引いたところから見るのも得意。
A 全部を俯瞰で考えることはできないし、書きながら、こんな展開になっちゃうのか〜と思うこともあります。でもめちゃくちゃ考えてるよ。
M 頭使って描いていくタイプだよね。私はひたすら寄りの人間で、マンガを描いてるときは、ほかのことを考えられないタイプなので、本当に頼りにしています。みんなも、やっぱりアカ先生は天才だ!って言ってるよ!
A ヒットは確実にメンゴ先生の力ですよ!僕一人で描いてたらこんなことにならないよ!
M 立ててくれるね〜!
A 結局、一番星を輝かせるためには夜空が必要だって話なんですよね。
M せっかく二人で一緒に作るんだから、お互い補い合って、連載もアニメも最後まで駆け抜けようね!