ここしばらくは家で過ごしています。外出は控えて、普段なかなかできないような、部屋の細かな部分を掃除したり(シンクまで磨きました!)、ピアノの練習を再開したり、夜はベランダに出て月を見たり(4月に見たスーパームーン大きかった!)。この時間を無駄にしないようにといつもの3倍は映画や本に触れるようにしています。僕にとって仕事のためのインプットは、映画と本なんです。
山関連の映画で、絶対的におすすめしたいのが『MERU(メルー)』というアメリカのドキュメンタリー。僕が大学の3年か4年くらいのときだったかな。公開しているのは知っていたんですが、当時は観ていなくて。動画配信サイトで見つけて「あのとき観られなかった作品だ!」とさっそく視聴。いやー、すごかった! メルーってヒマラヤ山脈の山のひとつなんですけど、その中央にそびえるのが「シャークスフィン」という岩壁。垂直にそびえ立っていて、世界中の登山家、クライマーたちが「いつか登ってやる!」と競い合っていたわけです。シャークスフィンの中でも誰も登ったことがない難ルートに3人の登山家たちが挑戦する、という展開なのですが、うちひとりがプロのカメラマンで、その映像がすごい! 垂直の壁を少しずつ頂上目指してクライミングしては、岩壁からロープでテントをつり下げてその中で休む。これを数日繰り返してじわじわと登るしかないんですが、宙づりのテントの中で寝るなんて考えられない! カメラの技術が進んでいるからきれいな山や迫力ある映像はある程度誰にでも撮れるかな、と思うんです。が、このテントの中の様子やハラハラする登攀の場面は本人だからこそ撮影できたシーン。生きるか死ぬかの瀬戸際でもカメラを回すどん欲さ。カメラを回すことがこの人にとって生きることなんだ、と凄みを感じました。彼らは、一度は撤退するんですが、このあとがドラマなんです。3人にはそれぞれ事情があって、それでもまた結集するという。あとは観てほしい!
おすすめしたい本は、この連載で対談もさせていただいた写真家・石川直樹さんの『ぼくの道具』。極地登山に必要な道具が直樹さんの目線で紹介されているんですが、中学時代に買ったバックパックでチョモランマに登った話とか、旅先でバスの運転手さんに目印代わりに直接ザックに「日本人」と現地の言葉でマジックで書かれた話とか、登山をしない人でも面白いと思います。
もう1冊が『新編 山小屋主人の炉端話』。実在する山小屋のご主人の話を集めたものなんですが、めちゃめちゃいい。僕は怪談って信じないんですけど、北八ヶ岳の白駒荘の「消えた河童」というエピソードを読んだら、そのリアルな描写や河童が消えざるを得なかった理由から、昔は本当にいたのかも、と考えさせられました。家にいて山を思う。僕のステイホームでした。
1・2 今回の写真は、自宅でセルフィー!「本はだいたいリビングで読みます! お風呂では読まない派」