「ゆくゆくは槍ヶ岳でテント泊をしたい」という目標をかなえるために、まずはテント選びから。今回のアドバイザーは、「テント泊といえばこの方!」といわれる山岳ライターの高橋庄太郎さん。険しい山をどんどん登りたい、という僕の山のスタイルに合わせて、おすすめの一人用テントを4張りも持ってきてくれました。
高橋さんは元集英社の編集者。山が好きで山岳系のフリーライターになり、今では日本中の山のほか、知床や西表島の海でカヤックを漕ぐ旅も。テント泊は年間100日以上!(井之脇さん)パンツ¥40,000/オーバーリバー(マービン・ポンティアック)シャツ・靴/スタイリスト私物
軽量で快適であるための開発努力が詰まったテントに興味津々の井之脇さん
井之脇海(以下、井) 去年、番組の撮影で谷川連峰で沢登りをしたんです。そのとき初めて2泊3日で山の中でテント泊をしたんですけど、それがとても楽しくて!
高橋庄太郎(以下、高) テントの中で寝るっていいよね。僕は登山っていうよりテント泊が好きなんだよ。テントで寝たいから、山に行ってるみたいなところがある(笑)。
井 テント旅のよさってなんですか?
高 だって、自由じゃない。たとえば、登山をして山小屋に泊まるとする。小屋はごはんの時間も内容も、寝る時間も起きる時間も全部決まっているでしょ? テントならいつ何をしようが何を食べようが自由だけど、その分自分ですべてを用意しないといけない。「自由と自立」がテント旅にはあるんだよね。井之脇くんは、百名山を全部登りたいんだよね?
井 そうなんです。北アルプスにテントで行きたいと思ってます。
高 テント泊ができたら難易度が高い百名山も挑戦できるよ。たとえば、北海道のトムラウシ。登山口から頂上までだいぶあるし、山小屋も遠いし。今夏は、新型コロナの影響が大きくて登山者が多い山域は小屋を閉めるところも多いんだよね。山のテント場も予約が必要でソーシャルディスタンスを保つために人数制限をするから、これまでと同じように山に泊まることが難しくなるのかもね。スペースが限られているから、一人しか寝ないのに3人用のテントを使うとかは遠慮したほうがいいね。以前ならひとつのテントに何人かで寝たりもしていたけど、これからはシェアすることを避けないといけなくなるね。
井 そうですよね。山でのマナーも変わりそうですね。
高 初めての人にはベースキャンプ的なテント泊もいいよね。上高地の小梨平に泊まって、そこを拠点としてピストンで1日目は蝶ヶ岳、2日目は焼岳とか。前に、北アルプスの三俣山荘のテント場に4泊したんだけど、初日は鷲羽岳、2日目は黒部五郎岳、3日目は雲ノ平って、毎日違う山に行くのも楽しい。
井 重い荷物はテントに置いておけるからいいですね! ところで、今日持ってきてくださった4張りのテントはどんな特徴がありますか?
高 槍ヶ岳に行きたいって聞いていたから、槍ヶ岳山頂にアクセスがいいテント場みたいに、地面が岩のような場所でも張れる“自立型”をおすすめしたい。「ライペン」「モンベル」の国内メーカー、「ニーモ」「ビッグアグネス」の海外メーカーのもの合計4張りを選んだんだけど。軽量でコスパがいい、とか、デザインがいい、とか人によって好みもあるから、比べてみるといいよ。フライ(テント本体の上に張る雨風よけのシート)は、明るくて目立つ色のものを選びました。レインウェアにもいえることなんだけど、霧にまぎれてたり、木と同化したりで見つけられない!ってならないようにね。僕が執筆した山雑誌『ワンダーフォーゲル』『PEAKS』各8月号のソロテント特集でも詳しく書きました(笑)。
井 読みます(笑)。この連載でテント泊ロケを予定しているんです。どのテントを買おうかなー!