飛行機に乗る機会があると、あらためて欲しくなるのがノイズキャンセリング付きのヘッドホン。普段はイヤホン派の私も、長時間の移動中は耳全体を包み込んでくれて、バッテリーも長時間持つヘッドホンがやはり頼れる存在です。
そんな中で発表されたNothing初のヘッドホン「Headphone (1)」。海外での発表を見たときは、「イヤホンの次はヘッドホンか〜」と思ってしまったのですが、先日日本で開催されたイベントで実物を見てみたら、思わず「可愛い〜」と声が出てしまいました。Nothingらしいスケルトンデザインに、どこかレトロな雰囲気を感じさせるフォルムとディティール。そこに未来的な要素をうまく融合させた、Nothing独自のデザイン哲学がきちんと落とし込まれていて、心をつかまれました。
Headphone (1)のホワイト
しかも価格は39,800円と、デザインコンシャスなヘッドホンの中では良心的。それでいて、音響部分はイギリスのメーカー「KEF」との共同開発という信頼感のある設計。どんな音楽でも自然に聞こえるように作られていて、良い意味でクセがなく、誰にとっても扱いやすい、バランスの取れた音作り。もっと低音を利かせたい、などの好みに合わせた音の調整をしたい場合は、アプリから細かくカスタマイズできるようにもなっています。
Headphone (1)のブラック
イベント会場で短時間試聴した際の印象としては、ノイキャンもそれなりに利いている印象でしたが、先日、レビュー用にお借りしたHeadphone (1)を実際に移動中の飛行機の中で使ってみました。結果から言うと、飛行機の低音エンジン音は少し残る感覚があり、“完全に静寂になる”という感じではありませんでした。もちろん、気になるノイズは概ねカットしてくれますが、ノイズキャンセル機能を重視する方は、より高価格帯のノイズキャンセリングに特化したモデルを選んだ方が良いかも。
とはいえ、私には装着感がとても良く、約329gとややしっかりした重量ながら、不思議と“重さを感じにくい”設計になっているように感じました。長時間の装着でも疲れにくい印象です。 また、右側に3つ設けられている物理ボタンの操作も直感的で、ノイズキャンセルと外部音取り込みの切り替えや、再生・停止などの操作もスムーズ。使っていてストレスを感じません。
また、Headphone (1)とともにNothingの最新スマホ「Phone (3)」も登場しています。Phone (2)からデザインが刷新され、小型化したとのことだったのですが、手に持った印象ではそこまでの小ささは感じられず。iPhoneのProシリーズと比較すると、まだやや大きめな印象。
Phone (3)ブラック
日本版はFeliCa対応で、SuicaやiDなどの決済機能も使えて安心。また、Nothingらしいアイコンやフォント、アニメーションが心地よく、日々の操作にちょっとした高揚感を添えてくれます。
2週間ほどお借りして使ってみましたが、面白いなと思ったのは、AI機能がスマホの基本機能(OS)に自然と馴染み、操作の延長で使えるようになっていること。中でも注目したのが、以下の3つの新機能です。
Essential Space スクリーンショットや音声メモなどを保存しておくと、記録した情報をもとにAIが要約やリマインダー、タスクを提案してくれる、“もうひとつの脳”のように使えるメモスペース。専用のボタン(Essential Key)を軽く触るだけで撮影・録音ができ、Essential Spaceに保存されます。現状は画面の表示や操作方法が少しわかりづらい部分もあるので、今後に期待。
スクリーンショットや音声メモなどを保存しておくと要約、リマインダー、タスクなどをAIが提案してくれる「Essential Space」
Flip to Record スマホを裏返して、サイドボタンを長押しするだけで録音がスタート。AIが文字起こし・要約してEssential Spaceに保存してくれます。記録したいときに即使える、ハード×ソフトの融合を感じさせる機能です。
Essential News AIがユーザーの興味に合わせてニュースを要約し、英語で音声読み上げ。トピックの切り替わり時には、紙をめくるような効果音が鳴り、まるで雑誌を読んでいるかのような感覚に。Nothingらしい遊び心が効いています。
そしてもちろん、Nothing Phoneならではの“光る背面”も健在。丸い窓のようなかたちになった「Glyph Matrix」は、着信や通知、音量表示だけでなく、簡単なミニゲームやツール(ストップウォッチやバッテリー残量の表示など)の「Glyph Toys」にも対応しています。通知ごとに異なる光り方に設定できるだけでなく、機能としての拡張性や遊び心も感じられるのが魅力。旧モデルの大胆な光の演出に比べると、やや控えめな印象はありますが、実用性と楽しさのバランスがとれた操作感に進化したな、と感じます。
「ビン回し」のGlyph Toysは瓶を回して方角や誰かを選ぶもの。パーティなどで活躍するかも?
最近のスマホは、性能面ではどの機種も“もう十分すぎる”くらいに成熟しているな、と感じます。だからこそ、「何を選ぶか」はスペックよりも、自分の感性や好みにフィットするかどうか——たとえば、「どんな写真が撮れるか」や「画面オフのときのたたずまいが好きか」——そんな感覚的な部分が決め手になってきている気がします。
Phone (3)で撮影。明るく写る傾向なので少し暗めに調整してあげると良い感じに。
Phone (3)も、カメラなどハイエンドスマホが押さえるべきポイントは押さえつつ、背面の光の演出や全体のたたずまいは唯一無二。毎日手にするものだからこそ、自分の気持ちがふっと動くような要素は、何より大切だと思います。
ルックス、音、手触り、使い心地——自分の心が「これがいい」と感じるもの。それがわかってくると、不思議と“選ぶ理由”も、自然と見えてくるのかな、なんて思う今日この頃なのでした。