「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。

【レシピ】バスクのピペラード【長尾智子の旅する食卓】
「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。
ピペラードとは
トマト、ピーマン、玉ねぎ、にんにくなどを炒め、エスプレット (バスク地方の赤唐辛子) や生ハムを加えて煮込んだバスク地方の伝統的な家庭料理。南仏のラタトゥイユと似ているが、生ハムや唐辛子粉を加えるところが異なる。オムレツのように仕上げることもある。

バスクとは、スペイン北西部とフランス南西部にまたがる地域のこと。フランス領バスクの代表料理であるピペラードは、バスク語でピーマンを意味する"piper"が語源。「食いしん坊なバスク人らしい、身近な材料を生かした定番料理。炒め煮した野菜の卵とじ、と思うと気楽に作れるのでは」。
卵は全体にからませて、固くなるまで火を通さずに途中で止めるのがコツ。「ジャンボン・ド・バイヨンヌなど、バスク特産の生ハムは最近日本でも少量で手頃な値段で売られているのでぜひ探してみて。添加物を使わず、豚肉と塩だけで作られたシンプルな生ハムを焼いてのせるのが、味つけの一番のポイントと言えるから」。
生ハムで全体のバランスが取れて、特別な一品に。「赤唐辛子粉もバスクのエスペレット村産がベストだけど、同様に辛すぎずうまみのある韓国唐辛子もおすすめです」。野菜の甘みと卵のまろやかさ、赤唐辛子のメリハリのきいた組み合わせで、"野菜の卵とじ"が洒落たアペロに早変わり。
材料&レシピ
バスクのピペラード
トマト
中2個
ししとう
10本
ピーマン
2個
パプリカ(黄)
小1個
玉ねぎ
1/2個
にんにく
1片
生ハム
3枚
卵
2個
赤唐辛子粉(粗挽き)
適宜
塩
適宜
植物油
約大さじ1
そら豆
適宜
レモン(黄色)
適宜
好みのナッツ
適宜
トマトは4等分してへたを切り落とし、1切れを3等分する。ししとうはへたを切り落として2等分、ピーマンは縦2等分してへたと種を取り、それを3等分にする。パプリカもピーマンと同様に切り、さらに幅が広めの拍子木くらいの大きさに切る。玉ねぎは薄めにスライスし、横に3等分する。にんにくは2等分して芯を外し、粗く刻む。
フライパンに植物油を入れ、弱火で玉ねぎとにんにくを軽く炒める。香りが出てきたらトマト以外の残りの①を入れ、軽めに塩をふり、全体に油が回る程度にざっと炒め、トマトと赤唐辛子粉ふたつまみ程度を加える。強めの中火にし、トマトの水分を飛ばすようにして炒め煮する。焦げつかないように火加減を調整し、材料に火が通ってしんなりしてきたら、いったん火を止める。
別のフライパンに、生ハムを3等分に切り分けて中火にかけ、両面を軽く焼いて取り出す。それを繰り返して全部焼く。
ボウルに卵を割り入れ、よく溶きほぐす。②のフライパンを中火にかけて溶き卵を流し入れ、ざっと混ぜたら火を止める。器に盛り、③で焼いた生ハムをのせて赤唐辛子粉を少々ふる。
そら豆はさやをむき、弱火にかけたフライパンに並べ入れ、火を強めて焼き色がつくまで両面を焼く。焼き上がりに塩をふって器に盛り、レモンを添える。ナッツ、飲み物やパンと一緒にピペラードに添える。

ながお ともこ●フードコーディネーター。雑誌等で活躍する一方、オンラインストア、SOUPsを展開。「秋冬は親交のあるお店とのコラボレーションを考えています。内容はまだ妄想の世界の中なので、決まったらお知らせを」