大切な人と食べたい料理
「旅の楽しみのひとつは、知らなかった味に出合うこと」。現地の味を思い出したり、まだ見ぬ土地を想像しながら生まれたレシピが、旅情を刺激する。いつもの食卓で、非日常を味わおう。
バインクオンとは
ベトナムで作られる、伝統的な蒸し春巻き。米粉を使った生地に炒めた豚肉などの具材を巻き、魚醤を使ったヌクチャムなどの甘酸っぱいたれをつけて食べる。「ベトナム風の豚肉ソーセージを添えるのも定番の食べ方なので、アジア食材店などで見つけたらぜひ使ってみて」

ベトナム料理といえば生春巻きが日本ではよく知られているけれど、しっとりもちっとした食感のバインクオン(蒸し春巻き)もおいしいもの。
「現地ではストリートフードとして作られる蒸し春巻きは、形など気にせず、生地の厚みもさまざま。本来は鍋の上に布が張られた独特な道具を使いますが、フライパンでも気楽においしく作れます」。特有のもちっとした食感は、米粉ならでは。片栗粉を配合して柔らかい生地に仕上げるのがコツだ。
「本来、生地は寝かせて軽く発酵させるけれど、そこまで時間をかけず火を入れる少し前に粉と水を合わせておく程度で十分。水分の多い生地なので、縁がパリッとするくらいに焼いてもすぐにしんなりして巻きやすくなります」。合わせる野菜はたっぷりと。
「にんじんは花形に切って、ちょっと可愛らしく工夫すると気分が出ます。野菜を盛り合わせて、ヌクチャムをかけてサラダ風に召し上がれ」。ベトナム産ビールを添えれば、すっかり旅気分に。
材料&レシピ
ベトナムのバインクオン
米粉
100g
片栗粉
50g
豚挽き肉
約250g
乾燥きくらげ
5g
長ねぎ
1/4本
しょうゆ
大さじ1
てん菜糖
小さじ1
塩
適宜
植物油
適宜
きゅうり
1本
もやし
約1袋
香菜
2〜3株
パプリカ(黄色)
小1個
にんじん
スライス4枚
〈ヌクチャム(たれ)〉
ヌクマム
大さじ5
米酢
大さじ3
てん菜糖
大さじ2
ライム(またはレモン)
1/2個
にんにくのすりおろし
1片分
赤唐辛子(粗みじん)
1本分
皮つきピーナッツ
30g
フライドオニオン
適宜
まずは生地を作る。米粉、片栗粉、塩少々をボウルに入れ、水400㎖(分量外)を数回に分けて加え、泡立て器でよく混ぜ合わせる。きゅうりは筋状に皮をむき斜めに薄切り。もやしは根を取って水に5分ほど浸す。パプリカは縦に4等分してへたと種を取り、横に薄切り。香菜は水に5分ほど浸けて根を切り、食べやすく切り分ける。にんじんは三角形に切り込みを入れ花形にする。それぞれラップをかけて冷蔵庫へ。皮つきピーナッツはグラインダーで挽くか、細かく刻んでおく。
具を作る。乾燥きくらげはぬるま湯で戻し、粗みじんに。長ねぎもみじん切りする。フライパンに植物油少々を入れて温め、長ねぎを炒める。豚挽き肉ときくらげを加え、火が通ってきたらしょうゆ、てん菜糖、塩少々で味つけし、水分が飛んだら火を止めてバットに移し、粗熱を取る。
ヌクチャムを作る。ヌクマムと米酢をボウルに入れ、てん菜糖を加えてよく混ぜて溶かす。ライムは輪切りにして皮を切り離し、実を粗く刻んでボウルに加える。にんにくのすりおろし、赤唐辛子も加え、スプーンでライムをつぶすようにしてよく混ぜておく。
①の生地の粉が沈殿しているので丁寧に混ぜる。まな板にラップを張っておく。フライパンを弱めの中火で温め、油を入れて軽くふき取る。いったん火から外し、レードル1杯弱(約50㎖)の生地を流し入れ、フライパンを傾けて手早く広げる。中火にかけて縁がはがれてきたら上下を返す。数秒火を通してまな板のラップの上に取る。②の具をスプーンで手前に細長くのせ、手早く巻いて両端を押さえる。
生地の粉が沈澱しやすいので、常によく混ぜながら④を繰り返し、合計12本ほど春巻きを作り、1本を2等分して器に盛る。①のにんじん以外の野菜をたっぷり盛り合わせて、①のピーナッツとフライドオニオンをふりかけ、にんじんを散らして③のヌクチャムを添える。

ながお ともこ●フードコーディネーター。オンラインストア、SOUPs(soup-s.shop/)を展開。「オリジナルのスパイスミックスやペーストを試作中。夏を通り越し、冬においしい魅惑の一品が完成する予感。乞うご期待」