2022.10.06

たまにはちょっと遠出を。アート鑑賞なら郊外へ【新しいソウルが、私たちを呼んでいる!Part.3】

ソウル市内にも美術館はたくさんあるけど、アートを堪能するならぜひ郊外まで足を延ばしてみて。広い土地を活かした壮大な建築とユニークな展示。遠出する価値のある、3つのアートスポットをリポート!

Mimesis Art Museum 미메시 스아 트뮤지엄

たまにはちょっと遠出を。アート鑑賞なら郊の画像_1

1 曲線と直線の対比に見惚れる、モダニズムを極めた外観
2 パク・チャンヨンのチャーミングな作品、《怪しい雌犬》が芝生の上で出迎えてくれる
3 自然光と照明を駆使した、明るく心地よい館内
4 展示スペースも湾曲していて非現実的なムードを演出。ひとつひとつの作品がダイナミックに見える
5・6 アーティスト、ユン・セロムの特別展『ある日のかけら03』(〜9月25日)。加工を繰り返し滑らかに仕上げたアクリル断面をカラフルに染色。 光を受けると反射し合い、新しい色を作り出すのが魅力

名建築の中でモダンアートに触れる

ソウル駅から公共交通機関で1時間ほどの場所にある、出版関連の事業の会社が集まった文化複合エリア・坡州ブックシティ。その中に2010年に開館したのがMimesis Art Museumだ。

建物は猫の前足から着想を得て曲線を印象的に使用。モダニズム建築の巨匠と呼ばれるポルトガル人のアルヴァロ・シザが手がけた。潔く装飾を抑えた美しさを求めて訪れるファンが多く、ドラマなどのロケ地として使用されたことも。

端正なコンクリートの外観に対して、館内は温かみのあるホワイトとウッドが基調に。地上3階、地下1階の中には、開放感のある展示スペースのほかに、カフェやブック&アートショップも備えている。エキシビションでは、絵画から造形まで、注目の韓国人アーティストを主にピックアップ。ブックシティならではのシリーズ展『BOOK+IMAGE』も人気を博している。アンディ・ウォーホルやドストエフスキー、ゴッホなど、著名な芸術家や作家を書籍から掘り下げる企画だ。

ソウルから少し離れているからこそ味わうことができる広い空と贅沢なスペース、穏やかに流れる時間がここにはある。心地よい空間で、韓国の"今"見るべきアートにぜひ出合ってみてほしい。

京畿道坡州市文発路253 경기도 파주시 문발로 253
031−955−4100
営業時間:11月〜4月:10時〜18時(最終入場17時)、5月〜10月:10時〜19時(最終入場18時)
定休日:月・火曜
入場料:₩7,000

https://mimesisartmuseum.co.kr/

Museum SAN 뮤지엄 산

たまにはちょっと遠出を。アート鑑賞なら郊の画像_2

7 ウォーターガーデンには、存在感を放つアレクサンダー・リーバーマンの作品《アーチウェイ》が鎮座。潜ったその先に本館がある
8 安藤忠雄が新羅古墳からインスピレーションを得て設計した瞑想館。中は空洞になっており、中央の切れ込みから光が差し込む仕様
9 カフェテラスから広がる、木々と水が調和する壮大な景色

芸術の中で自分を解放したいなら

江原道の細長く延びる山裾に建つMuseum SANは、アート、建築、自然が共存する文化空間。「Disconnect to Connect(接続のための断絶)」をコンセプトに、訪れる人に心の休息を与えている。

設計を担当したのは日本を代表する建築家、安藤忠雄。2万2000坪の広大な土地には、山道沿いにウェルカムセンター、フラワーガーデン、ウォーターガーデン、本館、瞑想館、ストーンガーデン、そして光と空間の芸術家、ジェームズ・タレルの館が連なっている。花畑や白樺の森が広がるエリアの奥には、薄く水が張られた庭園が登場。そこを抜けると坡州石で覆われた本館へとたどり着く。歩みを進めるたびに景色が変わり、夢のような世界へと連れ出してくれる。

館内の展示作品だけでなく敷地一帯がアート作品となっているミュージアムは、一歩足を踏み入れた瞬間に、思わず深呼吸をしたくなるような開放感であふれている。日々の喧騒から少し離れて自分を癒やし、また頑張る活力を養う芸術体験がここにはある。

江原道原州市地正面オークバレー2ギル 260 강원도 원주시 지정면 오크밸리2길 260  033−730−9000
営業時間:美術館10時〜18時(最終入場17時)※10時25分から40分おきに入場可能
定休日:月曜
入場料:美術館₩19,000、美術館+ジェームズ・タレル館₩35,000、美術館+瞑想館₩35,000、美術館+ジェームズ・タレル館+瞑想館₩40,000


http://www.museumsan.org/

Nam June Paik Art Center 백남준 아트 센터

たまにはちょっと遠出を。アート鑑賞なら郊の画像_3

10 《TV CELLO》は3台のTVモニターをプレキシガラスで包みチェロの形に。弦を弾くと電子音が鳴り、映像が変化する
11 ナム・ジュン・パイク生誕90周年を記念する特別展では、大規模メディア作品《システィーナ礼拝堂》を設置。手前には小型モニターとケーブルによる《Video Chandelier No.1》を吊り下げた
12 入り口近くに展示されているのはパイクの代表的な作品《Global Groove》。植物が生い茂る中で咲き誇る花のようにTVモニターが設置されている

アティチュードを脈々と受け継ぐ場所

1932年に韓国で生まれたナム・ジュン・パイク。TVモニターを用いたインスタレーションの先駆者で、「ビデオ・アートの父」とも称される人物だ。さらに、映像作品やアートロボットなど多岐にわたる制作活動を精力的に行なった。

その功績をたたえ、京畿道にこのアートセンターが完成したのは2008年のこと。生前彼はこの場所を「ナム・ジュン・パイクが生き続ける家」と語った。その想いは今日まで継承されている。ただ展示するのではなく、作家への理解と共感の増進というプロジェクトに積極的に取り組む。

初期から近年まで、パイクの作品を包括的に展示しているほか、次世代アーティストの紹介、ワークショップ、教育プログラムなど未来に目を向けた運営も行なっているのが特徴。ここに来れば、メディアアートの名作だけでなく、"これから"に出合うことができる。ナム・ジュン・パイクの先見性に端を発した場所での創造的な実験が、今後どんな芸術を生み出していくのか目撃したい。

京畿道龍仁市器興区白南準路10 경기도 용인시 기흥구 백남준로 10
031−201−8500
営業時間:10時〜18時(最終入場17時)
定休日:月曜、正月、旧盆
入場無料(※特別企画展によって料金が発生する場合あり)

https://njp.ggcf.kr/

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