【温泉×アート】が、日本の旅の新常識！ 注目宿や美術館と一緒に楽しめる日帰り温泉をご紹介

北杜市にはちゃんと訪れてみたいと思っていたのでとても楽しい時間でした。東京から車で2〜3時間ほどの距離ですが空気が澄んでいて、降り立ったときに自分のなかにたまっているよどみが、さらさらさら〜と流されていくようで気持ちがよかったです。おいしい空気を吸いながらアートに触れたり、温泉に入ったり、地元のごはんをいただいたり。リセットもできるし、アップデートもできる！　温泉とアートの組み合わせは最強なのでは？と思いました。
ーKAHO

八ヶ岳南麗の豊かな自然の中で、プリミティブな温泉と名作の数々に触れる
山梨県北杜市の滞在型複合施設、小淵沢アート＆ウェルネス。敷地内にはモニュメントのようなユニークな外観のホテルと、80年代を代表するアーティストであるキース・ヘリングの世界唯一の美術館を擁する。さらにホテル宿泊者専用の源泉かけ流し露天風呂「リラクゼーションスパ・キーフォレスト」も隣接。スパは貸し切り利用のため、木々に囲まれた景観が美しい天然温泉でゆったりとした時間を過ごすことができる。各建物を設計したのは個性的なデザインで知られる建築家、北川原温。縄文文化の遺跡が多く分布する小淵沢の特性を生かし、プリミティブな模様を随所に取り入れた芸術的な空間に仕上げた。海外からのゲストにも人気の高いリゾートで、心を解放して。

1・2　創設者・中村和男が1987年より収集したキース・へリングの作品が並ぶ美術館
3　天然の池のように見える形の温泉は、敷地内より湧き出す源泉かけ流しの塩化物泉。うぐいす色のやわらかな湯に触れた夏帆さんは「手を浸けるだけでも癒やされる！」と感動
4　無垢材のフローリングを張り、温かみのある空間を作り出しているホテル客室。全6室の客室はすべてテラスつき。ゆったりとしたスペースで、インテリアや壁材などがそれぞれ異なる
5　幾何学的な窓が印象的な、建物そのものがアートのようなホテル

DATA
山梨県北杜市小淵沢町10248の16
0551-36-8755（ホテル）
宿泊料金：￥48,400～／1室（2名利用時）。美術館では現在『開館15周年記念展：混沌と希望』を開催中。会期～5月21日　
https://www.kob-art.com/

アートが楽しめる湯宿

せせらぎの聞こえる湯とアートがなじむ宿、「もの派」菅木志雄の個人美術館を併設

那珂川の渓流沿いにあり、古くから「下野の薬湯」といわれた板室温泉。40度前後の源泉かけ流しのアルカリ性単純泉は、肌にやさしく長湯ができる。1551年創業という歴史をもつ大黒屋は、館内のそこかしこに現代美術作品がある「保養とアートの宿」。前衛作品も扱いながら、ゆったりと、まるで温泉に浸かるように作品を感じられる不思議な旅館だ。その秘密は、アーティストと息の長い関係性を育んできたため。近年再評価の動きが高まる「もの派」の現代美術作家・菅木志雄とは30年以上にわたる交流を重ね、個展開催や依頼制作を経て「倉庫美術館」を開館。17代目で宿を営む室井康希代表も、東京とロンドンで美術を学び、サロンでは毎月、新たに出会った美術家たちの展覧会を行なっている。レトロな館内と、のどかな自然になじむアートを眺めながら、長逗留をしたくなる。

1・2　菅木志雄作品およそ250点を展示、販売も行う「倉庫美術館」。1980年代後半から菅と交流を深め、2008年に開館。現在は作品づくりを支援してきた16代目、室井俊二会長が案内する鑑賞ツアー（要予約）が毎朝開催されている。李禹煥の大規模展や関根伸夫の回顧などで、今また注目が集まる「もの派」の魅力に触れて
3　客室は松・竹・梅の3館に分かれ、すべて南向き。松の館2階のシングルルームは、黄土の壁とさりげないアート、ぬくもりのある調度品が心地よく、ワーケーションにも最適
4　旅館前庭の門のような菅作品《木庭：風の耕路》に板室の風が吹き抜ける。野外作品も数多く、そぞろ歩きも楽しい

5　那珂川に面した「露天の湯」は改修工事を行なったばかりで開放感満点。（屋根は現在設置済み）
6　ほかに、趣の異なる内湯「ひのきの湯」と「たいようの湯」。黄土浴サウナの「アタラクシア」も併設　
7　落ち着いた趣の旅館玄関

DATA
栃木県那須塩原市板室856番地
0287-69-0226
宿泊料金：￥26,400〜／1名（「松の館シングルルーム」1室1名利用時、1泊2食つき。サービス料込み）　
http://www.itamuro-daikokuya.com/

今、注目すべき現代アーティストが集う。サイトスペシフィックな温泉ホテル

眼下には、湯煙のぼる別府市街と別府湾。別府八湯のひとつ、堀田温泉の断層崖の上に2020年にオープンした滞在型のリゾートホテル。客室は全35室、各部屋に専用の源泉かけ流し半露天風呂がしつらえられ、こちらもすべて海と街を見下ろす絶景！　クリエイティブディレクションをgraf、建築と空間デザインを大分の建築設計事務所DABURA.m Inc.が行なったスタイリッシュな館内には、コンテンポラリーアートを大胆に配置。アートキュレーションの担当は地元で企業と芸術をつなぐ活動を行うNPO法人、BEPPU PROJECT。ほぼすべてがホテルのための依頼作品で、土地にインスピレーションを受けて制作された。注目の同時代作家たちが、今、別府という温泉地に刺激を受け、また刺激を与える脈動が感じとれる。

8　古くからの湯治場でもある堀田温泉の泉質は、硫化水素型硫黄泉。温熱効果の高い石風呂との相乗効果で、じっくり温まる
9　 別府市街と別府湾を望むツインルーム。バルコニーの右手側が客室半露天風呂になっている
10　各室内にも別府温泉にまつわるアートが。ベッドのバックボードにあるのは、泉イネの作品《湯は聴く色》
11　ロビー・レセプションエリアの吹き抜けに下がる作品は、別府の土地の記憶をモチーフにした、大巻伸嗣《Gravity and Grace −ゆだま−》。発光するオブジェの右下の壁面には、月のようにその光を受けるもうひとつの作品《Echoes Crystallization》がある

DATA
大分県別府市堀田6組
0977-76-5303
宿泊料金：￥50,000〜（「デラックスツイン」1室2名利用時。サービス料込み）
https://beppu-galleria-midobaru.jp

ミュージアムの敷地内にある、露天風呂つき隈研吾建築に宿泊

湯の里・湯布院のCOMICO ART MUSEUM YUFUINは、コンパクトな美術館ながら、見ごたえある現代アートが充実。隈研吾設計の建物も、焼杉の壁と低く連なる屋根を用いて、街並みにしっくりとなじんでいる。実は同じ敷地内に1棟貸し・温泉つきの簡易宿所COMICO ART HOUSE YUFUINを有する。「竹」と「土」の2棟の宿泊施設は、美術館の＂離れ＂のようにシームレスにつながりながら、おこもり感も満点。滞在してみると、ミニマルだからこそ景観と素材を重んじる隈建築の原点が伝わってくる。滞在中は無料で美術館を鑑賞でき、2階建ての「土」棟の窓からは、奈良美智《Your Dog》の姿も！　杉本博司や草間彌生の作品を近くに感じながら、由布岳の見える貸切露天風呂に浸かる、そんな贅沢な一夜を体験して。

12　奈良美智《Your Dog》。MUSEUM2階オープンギャラリーにて、由布岳を背に佇む
13　客室棟「竹」の内湯越しに見る露天風呂。湯布院温泉は、やわらかな泉質の弱アルカリ性単純温泉
14　美術館エントランス
15　宮島達男《Time Waterfall　panel #COM》。デジタルカウンターの数字が落下するインスタレーション
16　「竹」棟は平屋建てで2名まで宿泊可能。美術館に隣接しながら、ファサードの植栽でプライベート感を保っている
17　「竹」棟の客室、天井は網代編み。庭園が四季折々の表情を見せる

DATA
大分県由布市湯布院町川上2995の1
宿泊料金：￥88,000〜／1棟（「竹」2名利用時。12歳以下宿泊不可）
https://camy.oita.jp/cahy

神通峡のランドスケープに映える建築と土地に根ざした立体作品を、名湯と堪能

立山連峰から富山湾へと流れる神通川を眼前に、湯量豊かな春日温泉と多彩なアートを感じて滞在できる、隠れ家的リゾートホテル。エントランス前では清水久兵衞の彫刻に迎えられ、内藤廣建築の新館ロビーへ。通常は構造体に用いるコンクリートを表に出し校倉に組んだ壁面など、斬新な発想と工法で作られた伸びやかな建物が心地いい。ホテルの周囲には、現代作家の立体作品とともに神三ダムの雄大な眺めを望める庭園があり、川べりのアートウォークを楽しむことができる。部屋ごとにデザインの異なる客室をはじめ、館内にもさまざまな絵画やオブジェが並ぶ。富山にゆかりの深い陶芸や彫刻作家、盛んなガラス工芸など、この土地ならではの作品に出合えるのも魅力。

1　春日温泉は美肌に効果があるとされるナトリウム塩化物泉。大浴場の露天風呂は、野趣のある赤石。ほかに温泉露天風呂、サウナなどを備えたスパ施設も
2　4室が温泉つき客室。111号室（恋華の間）では青森ヒバの和風呂から絶景を独り占め
3　温泉つきスイートにある中庭には、内田鋼一の立体作品《静謐》が
4・5　とらや赤坂店などを手がけた内藤廣のダイナミックな建築も見どころ

DATA
富山県富山市春日56の2
076-467-5550　
宿泊料金：￥35,000〜／1名（スタンダード2名1室利用時。サービス料込み）
https://www.garaku.co.jp

露天風呂つきスイートルーム「呼風」で、柳幸典の作品をまるごと＂体感＂する

丹波の南側に位置する＂京の奥座敷＂、亀岡・湯の花温泉。創業68年になる「すみや亀峰菴」には、かつてオノ・ヨーコがジョン・レノンを連れて訪れたことも。そんな老舗の三代目、山田智社長が現代美術家の柳幸典に依頼しオープンしたのが、アートルーム「呼風」。古代ギリシャのイカロス神話と迷宮に着想を得た回廊、2つの露天風呂、菊と刀などのモチーフをちりばめたベッドルームとダイニングルームからなる140㎡のスイートは、まさに＂泊まれる現代アート＂。特に透明なアクリルの直方体に温泉を満たした「天の風呂」では、めくるめく浮遊感を味わえる。先鋭的で刺激に満ちた空間だけれど、心をほぐして楽しめるのは、体を芯から温める天然ラジウム泉の効果ゆえ。非日常に身を浸してリフレッシュしたい。

6　旅館のロビー「百代」も柳がリノベーションを手がけ、ギャラリーを兼ねる。迫力のある立体作品《Nagato70・Ⅰ-Ⅱ》が印象的
7　エントランスには《Study for Japanese Art Hokusai》
8　「呼風」専用の露天温泉「天の風呂」。日光がプリズム反射して、浴槽に虹が生まれる
9　もうひとつの「地の風呂」。壁は陶芸家・石井直人による織部釉の陶板、浴槽は 左官職人・久住章の手によるもの。ほかにも和紙職人のハタノワタルなど、丹波在住の伝統の担い手の技が随所に
10　「呼風」専用の鉄扉を開けると「イカロスの回廊」。異世界に誘われる
11　回廊には三島由紀夫の言葉が書かれている

DATA
京都府亀岡市ひえ田野町柿花宮ノ奥25番地
0771-22-7722
宿泊料金：￥110,000〜／1室（「アートルーム呼風」2名利用時の1名料金、5名まで宿泊可能。1泊2食つき）　
https://hakutai.sumiya.ne.jp/artroom-kohoo/

ミュージアムと楽しむ日帰り温泉

レトロな旅館建築に、芦ノ湖と富士山の絶景を同時に楽しむことができる露天風呂が自慢。

12　女性風呂「胡蝶」からの眺め。蛸川温泉は箱根十七湯の中で一番新しく、泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
13　4月中旬から下旬にかけて、樹齢約100年の一本桜の開花を楽しめる
14　本館の建物は国登録有形文化財。「浜名湖ホテル」を移築したもの

DATA
神奈川県足柄下郡箱根町元箱根139
0460-83-1121
入館料：大人￥2,030ほか
https://www.princehotels.co.jp/ryuguden/

富士箱根伊豆国立公園内に位置し、西洋絵画から現代アートまで、幅広い作品群を収蔵。19世紀〜現代の作家によるさまざまな「部屋」にまつわる表現を、ステイホームを経て改めて見つめ直す展覧会を開催中。

15・16　大きなガラス窓から見える緑豊かな山々と暖かな日差しが美しい美術館
17　草間彌生《ベッド、水玉強迫》2002年、ポーラ美術館 ＣYAYOI KUSAMA
18　ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年、ポーラ美術館

DATA
神奈川県足柄下郡箱根町仙石原小塚山1285
0460-84-2111
https://www.polamuseum.or.jp
展覧会『部屋のみる夢ーボナールからティルマンス、現代の作家まで』　会期／〜7月2日（会期中無休）

ロン・ミュエク作品など巨大な常設展示が見どころ。身体とコミュニケーション、セクシュアリティをテーマに作品を手がける百瀬文の個展を開催中。

19　《定点観測（父の場合）》2013-2014年 シングルチャンネル・ビデオ、10 分26秒
20　《Interpreter》 2022年 紙にインクジェットプリント、サイズ可変
21　美術館外観。チェ・ジョンファ作品《フラワー・ホース》が目印

DATA
青森県十和田市西二番町10の9
0176-20-1127
https://towadaartcenter.com
展覧会『百瀬文 口を寄せる』会期／～6月4日

市街地に温泉が湧き、気軽に湯めぐりを楽しめる十和田。十和田市現代美術館の徒歩圏内にも味わい深い湯がたくさん。なかでも、十和田温泉は、地元の人に愛されてきたまちなか温泉。源泉かけ流しのナトリウム強塩化物強塩泉を源泉・中温・低温で楽しめる。

22・23　施設外観と内湯。ほかにもサウナがあり、人気を集める

DATA
青森県十和田市西四番町4の6
0176-58-5218
入浴料：大人￥420（3月1日より￥450）ほか

原美術館 ARCから車で10分ほど。老舗旅館の横手館で、万葉の時代から湧き出るといわれる伊香保温泉「黄金の湯」を堪能して。

24　大正9年に建築された横手館本館。徳富蘇峰筆による看板がかかる
25　貸切家族風呂は予約制で入浴可能
26　源泉かけ流しの大浴場は、「折鶴の湯」（写真）と「月光の湯」の2つ（男女入れ替え制）

DATA
群馬県渋川市伊香保町伊香保11番地
0279-72-3244
入館料：大人￥1,150ほか
https://www.yokotekan.com

2021年1月に惜しまれながら閉館した品川の原美術館が、渋川市の別館と統合し、リニューアルオープン。

27　3月24日から始まる展覧会では、原美術館の現代美術コレクションと、原六郎の東洋古美術コレクションとを展観
28　やなぎみわ《My Grandmothers:AI》2003年

DATA
群馬県渋川市金井2855の1
0279-24-6585
https://www.haramuseum.or.jp
展覧会『青空は、太陽の反対側にある』
会期／第1期（春夏季）3月24日〜9月3日　第2期（秋冬季）9月9日〜2024年1月8日