千早茜とぼる塾 田辺智加のティーパーティー
[田辺さん]ワンピース¥20,790/アズ ノゥ アズ(アズ ノゥ アズ オオラカ) ピアス/本人私物 [千早さん]すべて本人私物
心ときめく〝ブルー・ハヴェリ〟のアフタヌーンティー
2階の扉を開けると、ふわりと漂うスパイスの香り。深いブルーに繊細な金の装飾が映える。ハヴェリというインドの邸宅をイメージしているというお店は、芸能界の〝スイーツ女王〟こと、ぼる塾・田辺智加さんのチョイスだ。
千早茜(以下C) 〝ヌン活〟はしているほうですけど、インドのアフタヌーンティーは初めて。さすが田辺さん、いろんなお店を知っていますね。
田辺智加(以下T) いえいえ。私には食の師匠と呼べる友人が何人かいて、ここもそのひとりからのおすすめで。ベタでお恥ずかしいんですけど、最近映画の『RRR』にハマった影響もあって、気になっていたお店です。
C チャイがお代わり自由って新鮮だし、インドのスイーツも味が想像できないものばかり。あ、世界一甘いお菓子(グラブジャムン)もある! メニュー選びから楽しいですね。
ひよこ豆の粉で作ったスパイスとハーブ香る食事系ケーキ、ドークラ。「香りがお惣菜みたいで、食欲が刺激される~。しょっぱい系のおやつもチャイに合うのよね」(田辺さん)
前世でつながりがあったのかしら?
ふたりの対面は、この日が3度目。初の邂逅は、ぼる塾のラジオ特番にゲストとして千早さんが出演したときだ。当初は、お笑い芸人の田辺さんに緊張したそう。
C すべての芸人さんという訳ではないですが、イジりや自虐、時に大きな声を出すところを苦手に感じて。でも、ぼる塾さんのYouTubeをいくつか拝見したら、全然違った。皆さん仲よしで、食への愛があふれていて。それで番組におじゃましたら、田辺さんとあまりに食の趣味が合ってびっくりしました。好きな紅茶のブランドどころか銘柄まで同じ、サロン・デュ・ショコラにかける金額や情熱も、とらやへの愛も一緒で。
T 私たち、前世で何かつながりがあったのかしら? というレベルでね。あの日は本当に楽しくて。私、あんなに喋ることめったにないですもん。
後日、メンバーのあんりさんも加えた3人で、千早さんおすすめの中国茶店へ。以来、ゆるやかな交流が続いている。
「チャイの甘さが控えめだから、塩味にも甘みにも合う。アフタヌーンティーっていろいろな種類を飲みたいがために、お茶でお腹が膨れがちだから、基本1種類というスタイルは潔くていいですよね」(千早さん)
食に目覚めたきっかけは
T 私、食に関しては英才教育を受けましたね。裕福じゃなかったけれど、休みの日にはよくデパートへ行く家庭で。母はマドレーヌやシフォンケーキを焼くのも好きで、私も小学2年生くらいのときに初めてクッキーを作って学校に持って行ったんです。そしたらみんながおいしいって言ってくれて、先生も「上手だね、通信簿を配る日は持ってきていいよ」って。お菓子のおかげで人と仲よくなれたことが多い人生でした。本当に「食べものありがとう!」って思います。
C 私は反対に、小さい頃は食べるのが嫌いだったんですよ。でも少し成長してから、テレビで見て食べたいと思ったものを自分で買ったらすごくおいしくて。あぁ自分は人に与えられて食べるのが嫌いだったんだ、自由に選んで食べるのはこんなに好きなんだと気づいたんです。だから食のエッセイでは、個人が幸せに食べる環境を整えるために、周りからの圧や思い込みをとっぱらおうよ、ということをよく書いています。
人参とミルクが2層になったお菓子、ガジャルバルフィ。「人参は嫌いなんですが、これはちゃんと素材の味がするのに食べやすく、美味」(田辺さん)
食の情報源はどこから?
C 田辺さんは、地方ロケとかもあるから各地の食情報にも詳しそうですね。
T そうですね。でも地方のお菓子は、現地まで行く時間がなかなか取れないので、都内のアンテナショップで店員さんにおすすめを聞いたり、百貨店の地方銘菓コーナーをチェックしたりします。
C なるほど。私は古い雑誌のスイーツ特集やギフト特集をチェックして、今も残っているものを狙ったりしますね。やっぱり長く続いているというのは説得力があるので。あとは「シェフ追い」「パティシエ追い」で、名店や、好きなお店で修業した店舗に行ったりとか。
T 雑誌は私も。テレビやSNSはどうしても新しくて映えるものを求められるんですけど、雑誌って昔からあるおいしいものを、当たり前とせず新鮮に見せてくれるから信頼できますね。
丸いスナック(プリ)に、スパイスウォーターを注ぐ。「スパイスウォーターは乳酸発酵しているような風味で、さわやか。対照的に、プリの皮はしっかりした食感でクリスピー。初めての味わいです」(千早さん)
グルメ、美食家と呼ばないで
C こういう仕事をしていると、「グルメなんでしょ?」と言われてモヤッとすることがあって。田辺さんはどうですか?
T あります~。私、美食家でもグルメでもないんですよ、ただ食べるのが好きなだけ。あとは大食いと思われがちで。確かにたくさん食べるけど、私たちは雑に食べてない。一つひとつの料理やお菓子にすごく情熱をかけてるの!
C わかります。お菓子って非常に気持ちを持っていかれるので、立て続けには向き合えないですよね。たとえばオーボンヴュータンの焼き菓子セットを食べたあとに、ほかのお菓子は食べられない。
T まさに「持っていかれる」。この気持ちを初めて言葉にしてもらえてうれしい……。千早さんの本もそうなんですけど、食についての表現が豊かで、しっくりくるんですよね。私もそうなりたいなぁ。
C 私は田辺さんの食レポは、作り手へのリスペクトがあるのがとっても素敵だなと思います。グルメな芸能人の方もいっぱいいると思うんですけど、作り手へのリスペクトが欠けて見えると悲しい気持ちになるので。
T 変に例えるとか、ふざけるとかは絶対にしないって決めてます。だって、私たちを幸せにするために作ってくれているのに、ふざけるのはダメでしょう。私は「オモシロではなく愛を」の姿勢を大事にしていきたいです。
C 影響力のある方がそういう姿勢でいてくれると、安心します。またぜひお茶しましょう。いつか本場・フランスで、我々の愛するチョコレートを巡る旅もしてみたいですね。
T ぜひいつかショコラ旅を!
SHOP DATA
インド料理 ムンバイ 四谷店 + The India Tea House
いただいたのは、「ロイヤル アフタヌーンティーセット」(¥4,000)。伝統的なインド菓子14品・マサラチャイなど。
東京都新宿区四谷1の8の6 ホリナカビル1&2F
03-3350-0777
営業時間:11時~22時LO、11時〜21時LO(土・日) 無休
https://mumbaijapan.com/yotsuya/