世界各地から招聘される小林寛司シェフ監修の「レークハウス」へ
レストランメニューだけでなく、テイクアウトメニューまでというから、気軽に小林シェフのメニューを楽しむことが可能になった。栃木県の農産物の恵みを堪能できる新たな「Farm to Dining」が始まる「レークハウス」。その魅力を知るために訪れた、新メニュー披露会の内容を紹介する。
ご存じの方も多いと思うが、世界のフーディが注目する和歌山の一日一組限定レストラン「villa aida」のオーナーシェフである小林寛司氏。「ミシュランガイド京都・大阪+和歌山 2022」の二つ星とグリーンスターをダブル受賞、「Asia’s 50 Best Restaurants 2024」では35位。さらに「RED U-35 2024」にエントリーしたアンダー35歳の若手シェフが目指し注目している人物として2位に選ばれている。
イタリアでの4年間の修行を経て、「身の回りの食材でおいしいものを作る」という学びから、和歌山県岩出市ではレストランのほか、300種以上の野菜やハーブを育てる畑と向き合っている。「この土地だからこそ」「自分たちだからこそ」というアグリカルチャーガストロノミーを実現させているのだ。
栃木県の農産物での「Farm to Dining」
「ザ・リッツ・カールトン日光」でのコラボレーションの際に、中村健介総料理長をはじめスタッフと親交を深めていく中で、ホテルスタッフの皆さんの熱意と人柄の温かさ、柔らかい雰囲気を近くに感じ、今回のコンサルタント契約に至ったと語る小林シェフ。
今年10月のスタートまでに栃木の様々な野菜や果物などの農家、信頼できるパートナーを一緒に探したという。メニュー披露会の際にはパートナーとなった「日光あおぞら農園」の石川さんご夫婦から、「より自然に近い状態に土の力を戻し、微生物・バクテリア等の力を借り、無肥料・無農薬・除草剤を使わない自然農業を実践している」と聞いた。また、現在消滅しかけている栃木伝統野菜「舟石芋」を教えていただいた(写真の右トレイの手前の下から2番目、茶色俵形のじゃがいも)。
小林寛司シェフの秋のディナーメニュー
日光の地場の旬野菜を小林シェフの自由な発想で、ふんだんに使われた秋のディナーメニューは7品(24,000円)構成。
すると、話に聞いていた舟石芋を揚げて潰したものがゴロンと入っているスープからスタートとなった。白いんげん豆を煮た出汁にゴマのコクと帆立の旨みが加わった、味わい深いスープ。和歌山の畑から持ってきたというウインターセイボリーというハーブが添えられ、飲むごとにからだの中がゆっくりと温まっていく。
料理の説明の間に、「夏から秋へと、急にがらっとは変わらない、少しずつ変わる」という小林シェフ。その言葉に、自然を見つめ続け、小さい変化を見過ごさず食材と向き合っているシェフならではの言葉として記憶に残った。
「シェフの場合は食材名では料理を生むことはせず、その食材を目の前にしないとどんな料理になるかわからない。目の前にしたときに生まれるインスピレーションから料理が作られる」と語った小林有巳マダム&ソムリエの言葉も印象的だ。自身のインスピレーション源の自然を愛して作られているのが伝わってくる。
2品目は旬の秋野菜の恵みをダイレクトに感じる一皿だ。かぼちゃ、おいも、きのこは免疫力をあげてくれる食材。かぼちゃを焼いてハチミツを少し合わせて煮込んだペーストに、バターで火を通したさつまいも、しめじ、なめ茸、エリンギ、百合根を合わせ、スパイシーなソースを添えたもの。奥にある栃木産ゴマ、クミンやコリアンダーなどのシードを使ったスティックパイと合わせていただくと、違う食感や味わいが楽しめる。
コースの中で「このような発想はどこから?」などと、味やプレゼンテーションの驚きや感動が続く。その中でも衝撃を受け小林シェフを印象付けたのが3皿目の「さつまいも セロリ 塩レモン」。ピューレ状と形を残したさつまいもに上質なオリーブオイルをたっぷり含んだカリカリに焼かれたパン粉、その上にソテーされた旬のセロリがのせられた、熱々でいただくグラタンだ。さつまいもの甘み、ジュワと滲み出るオリーブオイルと宇都宮市産の「宮れもん」クミンがうまく絡んで、爽やかに仕上げてくれる。
続いて、日光市産舞茸のタリアテッレ。舞茸を一晩カリカリになるまで干して、食感と旨みを引き出したもの。ご想像通り、旨みを絡めたモチモチのタリアテッレと味を凝縮した香り高い舞茸、間違いなくおいしいストレートな一皿だ。普通に見えて普通じゃない特別な味。
ソムリエである有巳マダムが選んだ魚料理の白ワインは、トーマス・ニーデルマイヤー の「ソラリス2019」。標高1276メートルの位置するザ・リッツ・カールトン日光にかけて、北イタリアの標高600から800mで育てられたブドウを使ったワインに。エレガントな香ばしさを感じる美しい余韻が楽しめる。トーマス・ニーデルマイヤーの畑では、温暖化する気候に対応するチャレンジを行い、彼らの畑では、約30年一度も施肥をせずに、厳しい環境で栽培。畑は耕すことはなく、特に若いブドウの樹の畝にはヒマワリを植える独自の栽培メソッドで作られている。
海のない栃木で出す魚料理について考え、小林シェフが描いた一皿は、「サステナブルフィッシュ」という回答。人気の魚や高級魚を乱獲するのを避け、そのとき採れたおいしい魚を使うという意味合いで、シェフが命名した。あえて、レストランで「サステナブルフィッシュ」という言葉を聞くことでゲストが何か考えることもあるかも知れない。また、料理やサービスを提供するスタッフも常にそのことを考え意識して欲しいという思いを込めた。
そしてこの日の「サステナブルフィッシュ」はイトヨリ。白ワインとエシャロットをベースにしたこっくりとしたバターソース。栃木県産のかんぴょうや薄くスライスされた冬瓜とよく合う。寿司など和食以外であまり出合わない「かんぴょう」に驚いて尋ねたところ、和歌山でも道の駅などであれば買い、削って料理によく使うとか。しかも、一時は栽培も試みていたそうだ。
肉料理に合わせたワインは、イタリア「ブレッサン2015」のピノネーロ。ヴェネツィアジューリア州で9世代に亘ってワインを作り続けている、ストイックなナチュラルワイン。口の中で広がる酸味と香りが特徴的。現在の作り手は家業を継ぐ前には小児がん末期の子どもたち心のケアをするセラピストして働いていた経歴を持つ。
肉料理は、フォアグラやトリュフは使わず、栃木の旬な野菜、牛蒡や玉ねぎなどを合わせ、落花生のおおまさりを使った赤ワインベースのソースで完成。肉の下に敷かれたフォアグラに見立てた山芋ローストとの相性もよく、ソースとともに「とちぎ霧降高原牛」のおいしさを一層引き出している。揚げた米、牛蒡、落花生のワイルドさも好相性で、ペロリといけるおいしさなのだ。
最後は、いちごだけでなく、梨も名産の栃木県を象徴するようなデザート。「秋月」梨をコンポートしたものとチョコレートケーキをいただいた。
料理説明の前半部分で小林シェフは「和歌山の『villa aida』との違いはここでしかない素材で、ここでしか食べられないものを用意した。そして、現在の『レークハウス』を大好きな方々もいるから、(自分が参加することは)レガシーに新しい方向性が加わったと考えている」と語った。コラボレーションより密度の濃い展開となった「レークハウス」。季節ごとに変わるメニューも楽しみだ。そして、まだ監修は始まったばかり。どんなふうに展開していくのか、目が離せない。また、その変化の過程も楽しみたいと思わせてくれた。
ネーミングも楽しい「L・A・K・Eサンドイッチ」をテイクアウト!
テイクアウトメニューで注目なのが、入り口左手のコーナーにある「Grab & Go」の、「L・A・K・Eサンドイッチ」1,800円。小林シェフ監修&命名の「L・A・K・E」はレタス、アボカド、ケール、エッグの頭文字から生まれた名前のサンドイッチ。ボリュームたっぷりのなので、ウォーキングや観光のランチとして、帰路の電車でいたただいても。
「ザ・リッツ・カールトン日光」で欠かせない楽しみポイント
ザ・リッツ・カールトン日光の人気の理由として話題になるのが、日光湯元源泉の温泉があること。世界のザ・リッツ・カールトンホテルの中で、初めて温泉を導入したホテル。そして、国立公園内に位置していることも有名だ。恵まれた自然に囲まれレイクサイドビューの絶景が楽しめる素晴らしいロケーションも、魅力的。意外と知られてないが、部屋からのバスビューも美しい。朝食前、中禅寺湖を眺めながらのバスタイムもおすすめしたい。
「ザ・バー」は必ず訪れたい。日本全国のプレミアムウイスキーの豊富なラインナップ
壁一面に広がるボトルは、日本地図に見立てて並べられた、北海道から沖縄までのプレミアムウイスキーの数々。レアなジャパニーズウイスキーが飲めると人気のバー。シグネチャーカクテルも種類豊富で、楽しめる。「ストロベリー キングダム」「華厳フォール」「名家の猿」「いろはのもみじ」など、ネーミングもユニークだが、ビジュアルも美しく、ここだけのカクテルが楽しめる。
乳白色の温泉が美肌へ、心穏やかな時間へ導く
内風呂と外風呂があり、星あかりの中でのんびりしたり、朝の光を浴びながらの温泉タイムも格別だ。
朝の座禅で頭をスッキリさせて、1日をスタート!
世界遺産「日光山輪王寺」の別院、中禅寺(立木観音)から僧侶が訪れ、座禅を行う貴重な体験だ。約30分という短い時間だが、意識を集中して取り組むと、心が整う。事前予約すれば誰でも参加できるアクティビティ。
ザ・リッツ・カールトン日光
住所:栃木県日光市中宮祠2482番地
TEL:0288-25-6666
レストラン予約:0288-25-5776
https://www.ritzcarlton.com/jp/hotels/japan/nikko
小林寛司氏監修メニュー
ランチコース ¥9,500(4品)、¥14,000(6品) セットメニュー ¥5,000(3品)、
ディナーコース ¥24,000(7品)
時間:ランチ 11:00~15:00(14:00 L.O.)、ディナー 17:00~22:00(20:30 L.O.)