【韓国・ソウル】工芸品の名店7選。スタイリスト飯島朋子が本気でセレクト!

陶器から布もの、金工品まで、世界中から熱い視線を集める韓国の工芸品。プライベートでもたびたびソウルを訪れ陶器を買い集めているスタイリスト、飯島朋子さんとともに、クラフトの名店を訪れた。店主こだわりのセレクトにうなり、作家と語り合い、行く先々でショッピング。プロが渡韓する価値ありと太鼓判を押す7店舗だ。

陶器から布もの、金工品まで、世界中から熱い視線を集める韓国の工芸品。プライベートでもたびたびソウルを訪れ陶器を買い集めているスタイリスト、飯島朋子さんとともに、クラフトの名店を訪れた。店主こだわりのセレクトにうなり、作家と語り合い、行く先々でショッピング。プロが渡韓する価値ありと太鼓判を押す7店舗だ。

SIKIJANG(シギジャン / 식기장)

SIKIJANG(シギジャン / 식기장)
1 広い店内に並ぶ数々の陶器を前に真剣にセレクトする飯島さん。2階はギャラリー

韓国クラフト界の信頼を集める店

「食器棚」という意味を持つSIKIJANGは、クラフトショップブームの草分け的な存在だ。その名の通り食卓に並ぶ皿、カトラリーから料理の道具までが所狭しと並んでいる。オーナーのチョン・ソヨンさんは、作家からの相談を受けることも多く、ときにはアトリエに足繁く通い二人三脚で一から商品作りを進めることも。佇まいの美しさはもちろん、彼女が大切にしているのは機能性。たとえば繊細なガラスには熱に耐えられるような性能を求めたり、料理の色がつきにくい粉引きを作家と一緒に追究する。「伝統的な技術を習得した上で、独自性を出すことができる人が本物」だという。以前もここで食器を購入したという飯島さんは「チョンさんの鋭い審美眼と、どこよりも早く作家を見つけるという意気込みを感じます」と語る。

SIKIJANG(シギジャン / 식기장)
2 あえて入れた気泡に味があるチョ・ヒョンソンさんのグラス(₩100,000) 3 ツイードのようなキム・ジョンウンさんのグラス(₩100,000〜₩220,000)。ガラスを細い糸状に伸ばし、積み重ねるという緻密な作業を要す 4 作家カン・ミンギョンさんの粉引きのボウル(₩55,000〜₩77, 000)。「薄いのに頑丈」と飯島さんも愛用中
Shop Data

서울특별시 강남구 삼성로141길 9 1층
1F, 9 Samseong-ro 141-gil, Gangnam-gu
電話番号:02−541−6480
最寄駅:7号線清潭駅 営業:10時〜12時 13時〜19時 休:日曜

Saeksilmoonyangnubi(セクシルムンヤンヌビ / 색실문양누비공방)

Saeksilmoonyangnubi(セクシルムンヤンヌビ / 색실문양누비공방)
1 韓国の伝統的なヘッドピース、ペッシテンギ(₩600,000)

色糸で描くドリーミーな刺し子

韓屋で工房兼ショップを営むキム・ユンソンさんは、古くから伝わる刺し子技術を、独学で蘇らせ発展させた。伝統工芸復興の第一人者だ。ある日祖父が持つタバコ入れの刺しゅうに目を奪われ、見よう見真似で作り始めたのが始まり。それから40年、今やブランドとコラボレーションしたり日本の福岡でも教室を開いたりしてこの工芸を伝えている。工程は、まず韓糸を指で撚ってこよりを作り、次にそれを芯にして両側から布で挟む。続いて芯の脇を糸で縫っていくことで独特の模様を描いていく。娘のイム・ヒジンさんは弘益大学の繊維美術科博士課程に通い、母が始めた刺し子「セクシルヌビ」を現代アートへと昇華している。「先祖代々ではなく、独学で形にしていったという事実に驚きます。生活に溶け込む作品を提案するお母さんと、グラフィカルなアートへ再解釈する娘さんの掛け合いがほほえましかったです」(飯島さん)

Saeksilmoonyangnubi(セクシルムンヤンヌビ / 색실문양누비공방)
2 刺し子「セクシルヌビ」の途中段階である帯。両側からこよりを布で挟んでいる仕組みがわかる 3 作家のキム・ユンソンさんと娘のイム・ヒジンさん。イムさん作の大きなアートピースの前で 4 ハチをかたどったカラフルなブローチ(各₩160,000) 5 こよりの作り方を習う飯島さん。「メディテーション効果を感じますが、力がいる!」
Shop Data

서울특별시 종로구 북촌로12길 17
17 Bukchon-ro 12-gil, Jongno-gu
電話番号:02−733−2577
最寄駅:3号線安国駅 営業:10時〜17時 休:日・火曜

OJACRAFT(オジャクラフト / 오자크래프트)

OJACRAFT(オジャクラフト / 오자크래프트)
1 オーナメント(各₩36,000〜)。黒い粘土で作り、黒い釉薬に通したあと白い釉薬に浸すことでアンティーク感のある風合いに 2 人気のブラックシリーズ。白磁の土をベースにあえて黒い釉薬を用いて味わい深い黒を実現。一般的な下地としての焼成、酸化の焼成を行なったあと再度ガス窯で焼くことで、表面に金属のような光沢が生まれる 3 オジャさんは音楽活動を、ゼビさんは写真撮影も行う

夫婦が構築するファンタジーワールド

グラフィックデザイナーとして最前線で20年間働き続けてきた作家のオジャさんは、心身ともに疲れ切ったある日、大学時代に学んでいた陶芸を再開。「自分の精神を癒やすために童心に帰るモチーフを作り始めた」と語る。妻のゼビさんと二人で生み出すモノトーンの陶器は、ヴィンテージから着想を得て、ユーモアが宿る今の作風へと進化させていった。「ずる賢い狐、幸運を運ぶ燕」など一つひとつに物語が込められていて面白い。マグカップ(5・最下段)の取っ手は、「幼少期に家で何も気にせず木馬で遊んでいた、とても幸福な記憶から着想を得ました」(オジャさん)。飯島さんは、「持っているとポジティブな気持ちになる作品。デザイン畑出身の二人なだけに、空間の中で陶器がどう在るかということまで想像して作られています」と彼らの世界へ引き込まれていた。

OJACRAFT(オジャクラフト / 오자크래프트)
4 白磁に青磁の釉薬を用いて水面のような質感を表現。皿(₩400,000) 
OJACRAFT(オジャクラフト / 오자크래프트)
5 木馬から着想したマグカップ(各₩70,000)
Shop Data

서울특별시 마포구 성미산로29길 42, 2층
2F, 42 Seongmisan-ro 29-gil, Mapo-gu

※5月半ばから以下へ移転。
서울특별시 서대문구 연희로11가길 24, 3층
3F, 24 Yeonhui-ro 11ga-gil, Seodaemun-gu

電話番号:070−7788−7232
最寄駅:京義・中央線加佐駅 営業:13時〜19時 休:月・火曜

Baat(バッ / 밪)

Baat(バッ / 밪)
1 キム・ドンワンさん作。花瓶を作る際余った部分で作られた箸置き(各₩40,000) 2 若手アーティスト、キム・ハウンさん作の容器(₩200,000)。うさぎがピンク色の壁を登る愛らしいデザイン 3 2階のギャラリー。1階は韓国茶を楽しめるカフェ

茶道具が織りなす宇宙に触れてみて

母の影響で子どもの頃からお茶に触れてきたというオーナーのチョン・ヘジュさんが2014年にオープンしたギャラリーショップは、著名人も訪れるお茶教室兼カフェsansuhwa(p.138)に併設されている。「お茶は年配の人が嗜むものという先入観を払拭したくて」始めたという。茶道具を中心に取り扱い、1年に8回から9回のサイクルで展示を開催する。作品をセレクトする基準は、「専門家でもビギナーでも楽しめるもの」。会期には、作家とテーマに沿った茶会を開くこともある。展示し終わったあとの作品は1階のショップで購入することができる。「オーナーのチョンさんは作家の方針をすみずみまで理解したキュレーター。手に取って楽しめるミュージアムに来ているような感覚になります。少し値は張りますが"一生もの"が見つかる場所です」(飯島さん)

Baat(バッ / 밪)
4 絵画を学んでいたチョ・ジャンヒョンさんは、人生半ばで陶芸の道へ。高麗青磁の伝統を研究し、モダンに解釈している。あえて土の厚みの差や指の跡を残したり、思いもよらない奇抜な形を表現したり。日本人の料理家や作家にもファンが多い
Baat(バッ / 밪)
5 チョさんの蓮の花が咲いたようなボウル(₩650,000)とティーポット(₩1,200,000)
Shop Data

서울특별시 용산구 한남대로20길 21-14
21-14 Hannam-daero 20-gil, Yongsan-gu
電話番号:02−749−3138
最寄駅:京義・中央線漢南駅 営業:12時〜19時 休:日・月曜

HORANG Seochon(ホラング ソチョン / 호랑 서촌)

HORANG Seochon(ホラング ソチョン / 호랑 서촌)
1 マット仕上げのステンレス。ナイフ、フォーク、スプーンがセットになったテーブルサイズセット(₩69,000)。デザートサイズセット(₩57, 000)も。ほか、刻印サービスあり

「あったらいいな」を実現したカトラリー

ライフスタイルショップで輸入販売に携わっていたペ・ヨンヒさんが2020年に設立したブランド。店舗は今年の2月にオープンしたばかりだ。モダンなカトラリーは40年以上の経験を持つ職人によって手作業で作られている。素晴らしいのはそのアイデア。ヘッドが浮かび、テーブルを汚さないように設計されている。またナイフは寝かせずに着地面に対して垂直に置く仕様。「重りが入っているため横に倒しても自動的に垂直に戻ります」(ペさん)。チタンでステンレスをコーティングした漆黒のカトラリーも人気。「何げない所作へのこだわりを、美しく日用品に落とし込んでいて素敵です」(飯島さん)

HORANG Seochon(ホラング ソチョン / 호랑 서촌)
2 古い韓屋の柱や梁を生かした内観。カウンターとして使用されているのはパク・ホングさんの作品。松が炭化される際に出来上がる模様を生かした 3 高級感あふれるゴールドエディション 4 代表兼デザイナーのペ・ヨンヒさん
Shop Data

서울특별시 종로구 자하문로 40
40 Jahamun-ro, Jongno-gu
電話番号:02−722−3088
最寄駅:3号線景福宮駅 営業:11時〜19時 休:月曜・祝日

KARTCART(カートカート / 카트카트)

KARTCART(カートカート / 카트카트)
1 コンパクトな店内 2 イ・ジョンソクさんによる陶器製マグネット(1箱₩95,000) 3 パク・ジヘさんによるミニほうき(₩20,000〜)

気軽にアーティな日用品を買うなら

北村韓屋村に宿泊施設を運営するノスタルジアホテルが提案するクラフトショップ。ホテルで使用している雑貨が並べられており、宿泊者のためのスーベニアショップとしても機能する。名前の由来は"Kアートをカートに入れる"。気鋭の新人作家に依頼している、伝統工芸をコンテンポラリーに解釈した日用品が揃う。たとえばマグネット(2)は、青磁や白磁の粘土を使い、インレイ細工を用いて陶芸品をミニチュアで表現。その緻密さに驚く。「友人のためのギフトが見つかる店。若い世代の方も楽しめると思います」と飯島さんもお土産を購入。

Maison EENK (メゾン インク / 메종 잉크)
4 チョン・ソヘさんによる花瓶(₩450,000)は、伝統的なパッチワークの質感をセラミックに落とし込んだ作品。実際に布で縫った花瓶をベースに石膏で型を作り、土を流し込む
Shop Data

서울특별시 종로구 북촌로9길 16-1
16-1 Bukchon-ro 9-gil, Jongno-gu
電話番号:なし
最寄駅:3号線安国駅 営業:10時〜18時 休:日・月曜

Jangsaengho(コンエジャンセンホ / 공예 장생호)

Jangsaengho(コンエジャンセンホ / 공예 장생호)
1 飯島さんはキム・サンインさん(Haeinyo)の器がお気に入り

卓越したセンスで選び抜かれた器

「本当にいいものを見てきた、ストイックなセンスを持つ人だと思います」と飯島さんが感嘆したオーナー、チョン・ヒョンジュさん。アンティークショップを営む両親のもと幼い頃から審美眼を磨き、ギャラリー勤務を経たのち、2017年に自身の店をオープンした。「生活に溶け込むような、肩の力を抜いて楽しめる作品をセレクトしています」と語る。チョンさんがおすすめするのは人気作家、キム・サンインさんの白い器。朝鮮時代の白磁から着想を得た、すっきりとした切り口のモダンな佇まいが魅力だ。「ヴィンテージ家具の選び方や、陶器の配置の仕方など店内の至るところでインテリアのヒントが見つかります」(飯島さん)

Jangsaengho(コンエジャンセンホ / 공예 장생호)
2 キャンディのようなカラフルな一輪挿しはチョン・スビンさんによる作品(₩58,000〜₩120,000) 3 キム・ドンワンさんによる色みが美しいグラス作品。カップ(各₩120,000)、花瓶 小(₩210,000)・同 大(₩580,000) 4 キム・サンインさんによるプレート(₩150,000)は飯島さんも持ち帰り。「日本ではなかなかない高さがある器はテーブルで絵になります」
Shop Data

서울특별시 종로구 인사동10길 23-4
23-4 Insadong 10-gil, Jongno-gu
電話番号:02−739−5575
最寄駅:3号線安国駅 営業:11時〜19時 不定休※インスタグラムでチェック

飯島さんが買ったもの

訪れた各店舗で飯島さんが自分や友人のために選び抜いた逸品をお披露目。

Saeksilmoonyangnubiのボタン

Saeksilmoonyangnubiのボタン
ボタン(₩300,000)/Saeksilmoonyangnubi

「クラフトを日々のスタイルにさりげなく取り入れるならこんなアクセサリーで。ポップな配色もコンテンポラリーな趣」。婚礼でかぶる伝統的な冠チョクトゥリをかたどった。

チョ・ジャンヒョンさんの茶器

チョ・ジャンヒョンさんの茶器
ティーポット(₩750,000)・湯呑み(各₩80, 000)・浅い湯呑み(₩120,000)/Baat

「ポットの傘部分にお湯を注ぐと、きれいに落ちていく様子が楽しめる。茶を嗜むことへの心意気を感じます。大胆さと繊細さが共存」。

チェ・スボンさんのうちわ

チェ・スボンさんのうちわ
うちわ(₩20,000)/KARTCART

丈夫な韓紙と竹を用いたトラディショナルなデザイン。「うちわは撮影の際にも日常生活にも重宝します。これで日本の暑い時季も乗り越えられそうです」。夏から販売を開始する。

SIKIJANG + Aragongbangのグラスティーポットとカップ

SIKIJANG + Aragongbangのグラスティーポットとカップ
ティーポット(₩200,000)・カップ(₩45,000)/SIKIJANG

「色づいたパーツの可愛さに惹かれて購入しました」。持ち手を平たく仕上げるには、熱で両端から引っ張るという高度な技術を要する。繊細ながら熱耐性あり。

OJACRAFTのセラミック

OJACRAFTのセラミック
ザクロのオブジェ(₩125,000)・皿(₩165,000)/OJACRAFT

実物そっくりのモチーフは、石膏で型を作って粘土を流し込んで作る。「使い道はなくともただ置いてあって素敵なものにドラマを感じます」。

HORANGのカトラリー

HORANGのカトラリー
スプーンと箸のセット、マット仕上げステンレス(₩36,000)・同 ブラック(₩36,000)/HORANG Seochon

右はチタンコーティングを施した唯一無二のカトラリー。「黒いお箸やスプーンは珍しいのでこの機会に購入」。

キム・サンインさんの白い器

キム・サンインさんの白い器
蓋つきの器(₩250,000)・小皿(₩40,000)/Jangsaengho

内蓋に描かれた梅は、忍耐、純潔、長寿を象徴する。「まるで服の裏地にデザインがあるように、内蓋は自分だけに秘密の楽しみを運んでくれそう」。

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