北海道ワインにフォーカスした「うち飲み向上委員会vol.20」に続き、ワイン好きライターの門前がお届けします。ワイン好きとはいっても(もちろん)何でもよいわけではなく、自分なりに選ぶ際のポイントがいくつかあります。今回は、そんなポイントを満たす優秀な“お値打ち”ロゼワインたちをご紹介!
なぜ今月ロゼをピックアップするのかといえば、ずばり、色が華やかだから(笑)。じめじめして少し憂鬱な梅雨シーズンも、きれい色のワインで気分をあげて乗り切りましょう!というわけです。ロゼというほかに、今回セレクトした基準は3つ。私が普段のうち飲み用ワインを選ぶ際にも重視しているポイントです。
まずは、農薬や化学肥料を使わずに栽培した葡萄を使用するなど、できるだけ「ナチュラルな造り」。そして、「遊び心のきいたエチケット(ラベル)」。「えっ、見た目!?」と思われるかもしれませんが、飲む前の第一印象も大事かなと。手土産にもぴったりですし、エチケットがちょっとしたカンバセーションピースにもなってくれます。最後に「コストパフォーマンス」。デイリーに飲める価格も重要ですよね。ナチュラルな造りで、センスのよい見た目で、お手頃。……なかなかわがままですが(汗)、世の中にはそんなリクエストを満たしてくれる素晴らしいワインがあるんです!(造り手さんに感謝!!)
きりっと冷やしてごくごく飲みたい、軽やかな「ル・タン・デ・ジタン ロゼ2020」
最初にご紹介するのは、南仏で兄弟が中心となって営む家族経営のワイナリー、マス・ド・ジャニーニのロゼ。音楽好きの兄弟がギターを片手に葡萄を踏むカラフルなエチケットからして存在感たっぷり! マス・ド・ジャニーニが使用するのは、自社で栽培した葡萄のみ。ビオロジック(有機栽培)を認定するにはいくつかの団体がありますが、エコセール、ユーロリーフの認証を受けています。
有機栽培の葡萄を使い、添加物(SO2=酸化防止剤)も少量に止めるなど、ナチュラルな造りを心がけているワイナリーの人気シリーズが「ル・タン・デ・ジタン」。覚えやすいインパクトのあるエチケットと手頃な価格も相まって、ナチュラルワイン好きにはお馴染み(?)のロングセラーです。
使用品種は南仏で多く栽培されている黒葡萄、サンソーやカリニャンなど。2020年ヴィンテージに使用した葡萄は皮が薄かったそうで、色は控えめなサーモンピンク。いちご、チェリー、ザクロなどを思わせる香りと少しハーブを彷彿とさせる爽やかな味わい、フレッシュな果実味があり、なんとも軽やか。このワインを輸入しているインポーターいわく、「BLTサンドイッチなどのカスクートとカジュアルに楽しむほか、柑橘のドレッシングを使ったカルパッチョやラタトゥイユなど、酸味がきいた料理との相性も抜群」とのこと。軽やかなので最初の1杯にもぴったりですね。これからの季節、きりっと冷やしてごくごく飲みたいワインです。
果実味、酸味、コクをあわせもったバランスのよい「シャポー・ムロン・ロゼ 2020」
続いては、先にご紹介した南仏から北上しまして、パリ南西のロワールを拠点とするジェレミー・ユシェのロゼ。ワイングラスに帽子を被せて人物のように見立てたエチケットからしてセンス抜群! もちろん見た目だけではなく、丁寧で真摯な造りもこのワイナリーの特徴。25年前から化学肥料の使用を一部ストップし、2001年から葡萄の有機栽培を始めました。「シャポー・ムロン・ロゼ」は、ジェレミー・ユシェが造るいちばん手頃なエントリーラインのシリーズ。すべてではありませんが、化学肥料無使用や有機栽培を含む葡萄から造られています。
使用品種は、銘醸地・ブルゴーニュを代表する黒葡萄のピノ・ノワールとガメイ。先に紹介したロゼよりもしっかりした色で、いちご、ラズベリー、ブラックベリーなどさまざまなベリー系の果実を思わせる奥行きのある香り。飲むと、チャーミングな香りに反してきりっとドライ。べたっとした甘さがないので食中酒にぴったり。果実味、酸味、コクをあわせもった、非常にバランスのよい味わいです。
インポーターのおすすめ料理は、「ある程度タンニン(食事の際、口のなかの脂分を取り去る効果があるとされる渋み成分)があるので、豚肉など動物性の脂と好相性。魚も淡白な白身より、脂ののったものや赤身にマッチ。素揚げや中華系の揚げ物もおすすめ。餃子や春巻きも試していただきたいですね」。納得! フレッシュななかにコク、厚みを感じるワインなので、前菜からパンチのきいた料理までカバーしてくれそう。1本で幅広いお料理に寄り添ってくれる嬉しいワインですね。
しっかりとした飲みごたえがある、赤ワイン好きにもおすすめしたい「ラ ビュヴェット ロゼ」
最後は再び南仏より。フランスのなかでも手頃な価格のワインをうみだしている南仏地方ですが、近年ではスペインやポルトガル、イタリアなど他国の低価格ワインに押されている状況なのだそう。そんななか、低価格というだけでは将来苦しくなることを予見して、1978年から品質向上に取り組んでいる稀有な存在がカステルモール協同組合。葡萄の収穫はすべて手摘み、品種別に発酵の手法を変えるなど、丁寧できめ細かな造りのワインを手頃な価格で提供し続けている生産者です。
「ビュヴェット」シリーズのロゼに使用されている品種は、グルナッシュ、サンソー、カリニャンなど、南仏でよく育てられている黒葡萄たち。収穫した年によって差があるかと思いますが、今回紹介したロゼのなかでいちばん濃い鮮やかな色味で、アルコール度数もいちばん高め。フレッシュななかにタンニンの渋みやほどよい苦味を感じ、飲みごたえがあります。ボリュームがあるワインや赤ワインが好きな人にも推したいロゼ。豊かな果実味も備えているので、カクテルがお好きな方にも合うのではないでしょうか。
インポーターのおすすめは、「鶏肉や豚肉のグリル、サーモンとアスパラガスのソテー、香辛料のあまり強くない中華料理など。ワインのきりっとした酸が、白身肉や魚介に寄り添い、味とコクを引き立てます」。確かに! 飲みごたえがありますが、赤ワインよりも軽やかなので、食材もお料理も重すぎないものが合うんですね。開けやすいスクリューキャップなのも嬉しい「ビュヴェット」。お値段もキャップも味わいも、いろんな意味で気軽に飲むことができるワインです。
今回は「ナチュラルな造り」「センスのよい見た目」「お手頃」と、三拍子揃った“お値段以上”の価値があるロゼを紹介しました。どれも¥2,000以下とは思えない、丁寧かつ真摯に造られたクオリティの高いワインたち。どのシリーズもロゼのほか白と赤が揃っているので、全種類コンプリートしても楽しいですよ(笑)。
どれも魅力的で選び難いですが、「ベストうち飲み賞」は果実味、酸味、コクをバランスよく備えた「シャポー・ムロン・ロゼ 2020」にしたいと思います。
改めて、軽やか&フレッシュでありながら旨みやコクも備えたロゼはうち飲みにぴったりだなとしみじみ。自宅ではレストランのペアリングのように一皿ごとにワインを変えるのは難しいので、1本で軽めからボリュームのあるお料理にまでマッチしてくれる存在はありがたいですよね。お財布にも優しい今回の3本、忖度抜きで力強くおすすめします!!
【うち飲み向上委員会メンバー】
門前直子(もんぜん なおこ)
食べること&飲むことが大好きなフリーランスエディター/ライター。エンゲル係数がやたら高いものの、日々見て見ぬ振り。セレクトショップ「ガリャルダガランテ」から昨年スタートしたライフスタイルライン「カーサ ガリャルダガランテ」では、期間限定で販売するフード&ドリンク(ワインや日本酒、シードルなど)のセレクトを担当。https://www.instagram.com/gkgkmgmg/?hl=ja