6月の記事の時点ですでに「暑い暑い」とへたり気味でしたが、ますます暑さが加速してますね……。こんな時はキンキンに冷やしたワインを飲まないとやってられない(笑)ライター門前です。
今回のテーマは話題のオレンジワイン! 赤、白、ロゼに続く第4のワインといわれ、ここ数年で急速に知名度を高めている存在。提供する飲食店や扱うショップも増えて、飲んだり見たりしたことがある方も多いのではないでしょうか。
名前が名前なので、オレンジで造ったワインと思いがちですが、葡萄を原料とするれっきとしたワイン。白葡萄を果皮や種子とともに発酵させることで、その色素が抽出されてオレンジのような色になります。私がオレンジワインの存在を知ったのは8年ほど前。ホームパーティでソムリエさんが持ってきたのがオレンジワイン。飲んだことのない色と味に衝撃を受けて以来、家に常備&飲食店でグラスワインが出ているとつい注文してしまうほど大好きです。
今回は、オレンジワイン好きな方はもちろん、「気になっていた」「飲んでみたい」という方にぜひおすすめしたい、¥1,000台(造り手さんに感謝……!)のお手頃オレンジワインをご紹介します。
価格に加え、この連載ではおなじみの門前基準、「おいしい」「できるだけナチュラルな造り」「かわいいエチケット(ラベル)」もクリアした優れもの揃い。オレンジワインデビューにもぴったりの3本です。
クセがなく爽やか、白ワイン感覚で飲める「オレンジワイン アランサット」
最初にご紹介するのは、カジュアルなイタリアンでオンリストしていることも多い「オレンジワイン アランサット」。これは飲めば納得! 仕入れやすい手頃な価格で、クセが強すぎず爽やかで万人に好かれそうな味。好みがわからない不特定多数のお客さんがくるレストランにとって非常に安心して提供できるワインではないかと。
造り手は北イタリアのフリウリ=ヴェネツィア・ジュリアを拠点とするボルゴ・サヴァイアン。オレンジワインがうまれたのはジョージア(ワイン発祥の地でもあります。その歴史はなんと8000年!)ですが、近年のオレンジワイン人気の火付け役はフリウリの人気醸造家たち。“オレンジワインの聖地”と言われることもあります。そんなフリウリにあって、小規模な家族経営で真摯に醸造しているのがこのワイナリー。オーガニック認証は受けていませんが、葡萄栽培にリュット・レゾネ(減農薬栽培)を採用しています。
色はゴールデンイエロー。濃すぎず薄すぎずの黄みがかったオレンジです。使用品種はフリウリ名産のピノ・グリージョが85%、残りはソーヴィニヨン・ブラン。清涼感のあるソーヴィニヨン・ブランが少し入っているからか、爽やかな白ワイン感覚でごくごく飲めてしまいます。程よいタンニン(渋味成分)やふくよかさも備えているので、旨味のある料理やちょっとクセのある料理とも好相性。例えば味噌や塩麹など発酵調味料を使った料理や中華料理、タイ料理などエスニック料理。……って、この守備範囲の広さよ……! いい意味で個性が強すぎないので、料理と合わせやすく、食中酒にぴったり。オレンジワイン“入門編”としてもおすすめです。
ルーマニア最大規模のワイナリー発! 英国で大ヒットした、その名も「オレンジワイン」
続いてご紹介するのは、ルーマニア(!)のワイン。わたくし、初めてルーマニアのワインを飲みましたが、調べてみると彼の地でワイン醸造が始まったのは紀元前4000年。実は6000年の歴史をもつ“ワイン大国”だったんですね……! こちらは、ルーマニアのなかでも最大規模のワイナリー「クラメレ レカシュ」が英国への輸出用に造ったオレンジワイン。数年前に英国で発売されるやいなや、瞬く間に大ヒットしたとか。
開けるのが楽なスクリューキャップ/シンプルでキュートなエチケット/渋すぎず親しみやすい味わい/天然酵母使用、酸化防止剤不使用、ヴィーガン対応とナチュラルな造り/お手頃な価格と、魅力的な要素が詰まっているんですもの……大ヒットにもうなずけます。
「ワインの原料は葡萄だけなのに、ヴィーガン対応って?」という疑問にお答えしますと、ワインの醸造には清澄というにごりを取る工程があるのですが、卵白など動物性の清澄剤を使うことがあります。それに対して、植物性の清澄剤を使ったものや無清澄のワインがヴィーガン対応といわれるんですね。
色は今回ご紹介する他の2本と比べて明らかに濃い橙色。使用品種はソーヴィニヨン・ブラン、リースリング、マスカット・オットネル(ワインが苦手な人をワイン好きにする品種と言われている葡萄です)など。その年にベストなブレンドをするため、毎年使用する品種は変わるのだとか。
香りには少し甘さを感じるアプリコットのようなニュアンスがあり、飲むと柑橘を思わせるフレッシュさがあります。色も香りも味わいも、文字通りオレンジを感じさせる1本。柑橘を使ったサラダや柑橘のソースを添えた魚料理とも合いそうですし、ふくよかさや旨味もあるので、和の出汁を使った料理にも優しく寄り添ってくれます。小声ですが、「じゃがビー」のバターしょうゆ味にものすごく合います(笑)。
ハーブのような爽やかさと力強い味わいをあわせもった「20000 Leguas(ベインテミル レグアス)」
最後にご紹介するのはスペインの内陸部、カスティーリャ・ラ・マンチャを拠点に、完全有機栽培にこだわるワイナリーのオレンジワイン。カスティーリャ・ラ・マンチャはコストパフォーマンスが高い気軽なワインを数多く生産している地域。葡萄の栽培農家の4代目にあたる兄妹が一念発起してナチュラルなワイン造りを掲げてワイナリーを設立したのだとか。高地に自社畑をもっており、このワインは標高800mの畑から造られたもの。ご参考までに、日本の銘醸地、山梨・勝沼町は標高300〜600mです。
葡萄の栽培にあたってはビオディナミ*とビオロジック(有機栽培)を採用していますが、こちらのワインはビオロジック。スペインのオーガニック認定機関「SHC」の認証も受けています。栽培のみならず、醸造の過程でも環境を汚染しないよう努力を続けている、未来を見据えたワイナリーです。*有機栽培のひとつ。化学肥料や農薬を使わないほか、天体の運行に合わせて、自然物質による調合剤を使用する農法。
色は1本目の「オレンジワイン アランサット」と同じゴールデンイエロー。使用品種はワイン用白葡萄の代表格・シャルドネ、華やかな香りをもつヴィオニエ、スペインワインの主要な葡萄品種のひとつで、カヴァに使われるマカベオ(別名ビウラ)。香りにも味わいにも爽やかさがあり、かすかに苦味も感じられます。といってもネガティブな苦味ではなく、爽やかさに奥行きを与えているような印象。
飲むと、程よくタンニンと酸味があり、しっかりとしたボリューム。グラタンなどコクのある味わいの料理や、揚げ物、生姜焼きなど家庭的な和の肉料理にも合いそうです。またまた小声で、なぜか鮭皮チップスにもすごく合うんですよね……。というわけで焼き魚ともマッチしそうな気がします。ワイナリーのご兄妹もまさか自分たちのワインと鮭皮チップスが好相性だなんて想像もしないでしょうね(笑)。
今回はオレンジワイン“入門編”にもぴったりな、手頃な価格で上質な味わいが楽しめるコストパフォーマンスの高い3本をご紹介しました。どれもクセは少ないですが、ふくよかさや旨味という共通点があって、醤油や味噌を使った日常のおうちごはんにもぴったり。リーズナブルなのでマイ“ハウスワイン”にするのもおすすめです。
どれも魅力があって選び難いところですが、今回の「ベストうち飲み賞」はひときわ飲みやすいうえに程よいタンニンやふくよかさも備えた「オレンジワイン アランサット」にしたいと思います。
知名度が急速に高まっているオレンジワイン。発祥の地・ジョージアではオレンジワインのことをアンバー(琥珀)ワインと言うように、非常に深い色のものもあります。ジョージアの伝統的なワインの醸造にはクヴェヴリという素焼きの壺や甕を使っており(ユネスコ無形文化遺産にも登録されている醸造法!)、色も香りも味わいも力強く滋味を感じるワインに仕上がるのが特徴。淡い色から濃い色まで飲み比べて、自分の好みを見つけるのも一興。この優秀なワインたちをきっかけに、奥深きオレンジワインの世界へ飛び込んでみてはいかがでしょう?
【うち飲み向上委員会メンバー】
門前直子(もんぜん なおこ)
食べること&飲むことが大好きなフリーランスエディター/ライター。エンゲル係数がやたら高いものの、日々見て見ぬ振り。セレクトショップ「ガリャルダガランテ」から昨年スタートしたライフスタイルライン「カーサ ガリャルダガランテ」では、期間限定で販売するフード&ドリンク(ワインや日本酒、シードルなど)のセレクトを担当。https://www.instagram.com/gkgkmgmg/?hl=ja