U なるほど。言うなれば大関レベルのジョージアワインが日本にあまり輸入されていなかったということですね。
L 二つ目の理由は、亡くなった私の祖父はワインがすごく好きな人で、彼の夢を叶えたかったんです。ジョージアでは家の敷地に農園とともに葡萄畑があるのが割と当たり前で、実家でも自家製ワインを造っていました。祖父は葡萄に対してとても愛情を持って育てていて、「ジョージアワインが一番だよ。いつか世界にもっともっと広まればいいのにね」と話していたんです。
U いい話だ〜。お祖父ちゃん孝行ですね(涙)。
L 祖父はクヴェヴリ製法の赤ワインを特に愛していたので、そのワインは絶対に仕入れたいと思っていました。
U 今回はなんと各ワインのキャラクターを、相撲における勝ちが決まった時の技「決まり手」に例えちゃいます! 「ベストうち飲み賞」とともにそれぞれチェックしてくださいね。
復活を遂げた、古来の品種「ヒフヴィ2021」/決まり手・寄り切り
ヒフヴィ2021〈750㎖〉¥5,500/ロイヤルジョージア
T ジョージアはオレンジワインの原点。現地ではアンバーワインと呼ばれていますが、ジョージアのオレンジワインは西ヨーロッパや日本のものと比べると色が濃いですよね。果実を破砕した後、果皮と一緒に醸す“マセラシオン”の時間が長いのでしょうか?
L 一般的なジョージアのオレンジワインはご指摘の通り。でも、このヒフヴィはバランスを考え、マセラシオンをそこまで長くしないで、飲みやすくしてもらっています。色の濃さから想像するよりも、しなやかな味わいなんですよ。
U レヴァンさんが営む「Royal Georgia」で輸入されているワインは、製造にも関わっていらっしゃるんですか?
L はい、テイストからエチケットまでプロデュースしています。私がプロデュースしているのは「ジョージアンワイナリー」という1905年から家族経営をしているワイナリーで、葡萄は無農薬栽培、クヴェヴリ製法で造られています。このワインはジョージアでも売られていなくて、全部私のところで販売しています。酒屋にも卸していますが、アニヴェルセル表参道や東京會舘でも飲めますよ!
U すごい、ビジネスマンとしてもやり手でいらっしゃる!! このオレンジワインは白葡萄のヒフヴィとのことですが、これはジョージアの土着品種でしょうか?
L はい。10年くらい前は、ヒフヴィが少なくなってしまって全滅するんじゃないかと言われていました。でも、おいしいからと皆が木を増やしていき、最近はまたヒフヴィのワインがたくさん造られるように。このワインは「サクラアワード2024」でゴールドを獲ったんですよ!
L うちのワインは見た目の色の濃さからイメージするより、飲みやすいんですよ。日本食は優しい味が多いので、重すぎたり、エッジが効きすぎたりする辛口は合わない。繊細な味つけが損なわれてしまう。ムツヴァネはジョージアらしい個性がありながら、フードフレンドリーなんです。
U 田邉さんはどんなペアリングをしたいですか?
T ワインにカラメル感や、ナツメグを感じるので、甘めのソースが合うと思います。また、肉の脂質とタンニンは相性抜群なので、焼き鳥や豚の角煮はいかがでしょうか。
L 合うと思います! ちなみに、カヘティ地方のローカルフードは、肉の串焼き。廃棄する葡萄の木を燃やしてバーベキューをするんですけど、肉の香りも、味わいも格別で、本当に最高!
T ジョージアはごはんもおいしそうですね!
L ジョージアは歓待する文化なので、帰国すると、皆が毎回もてなしてくれるんです。肉やチーズ、ハチャプリなどが名物料理。特にジョージアのフレッシュなチーズを食べたら、他のものは食べられないくらいおいしいんですよ。ジョージアは楽しいけれど、一週間もいるとそろそろ味噌汁を食べたくなるから不思議(笑)。今は、日本とジョージアを行き来しているバランスがベストですね。
T 悩ましいですが、オレンジワインの「ムツヴァネ2021」を!! 元々好きな品種でしたが、僕が飲んできたものより、すごくまろやか。ムツヴァネにはスパイシーで、ストロングな印象を持っていたのですが、今日いただいたワインは角がなく、蜜っぽい甘さもあり、華やかなスタイルでした。赤ワインに使うような、大きなワイングラスで飲むのがおすすめですね。
L 田邉さんが仰るように、オレンジワインは大ぶりのワイングラスで飲むと、より香りが立ち上がっていいですよね。クヴェヴリ製法のワインは、時間が経つにつれ、味が変化していくところも魅力。大きいグラスだと空気が入りやすく、味も柔らかくなりますよ。
T あと、このワインはあまり冷やしすぎず、10度を上回るくらいが飲み頃。
L 基本的に、おいしいワインはキンキンに冷やさないほうがいいと思います。味がよくわかりますし。
U 本当にどれもレベルが高くて、お値段以上の味がしましたね。改めて田邉さん、今回のワインはいかがでしたか?
L ジョージア国内にはたくさんワイナリーがありますが、このワイナリーのどこに惹かれたかというと家族経営で、皆が仲良く、すごく愛情を持ってワイン造りをしているところ。小規模で、お金儲けだけが目的ではなくて、おいしいワインを造りたいという気持ちが一番にあるんです。そういう人たちが造るワインがいいと思いました。葡萄へのこだわりもすごいし、たくさんの人にぜひ飲んでいただきたいです。
U 一杯飲んだら、そのおいしさに感動してジョージアワイン愛に開眼すること間違いなし! 皆さんもぜひお試しくださいね!