いよいよ本格的なジンブーム到来の予感!? 生産者のこだわりが詰まったクラフトアルコールがますます増えるなか、巷でクラフトジンの人気が急上昇中! そこで今回の「うち飲み向上委員会」では、東京・中目黒にあるジントニック専門店『Antonic(アントニック)』の店主がナビゲートするビギナーにおすすめのクラフトジンをご紹介。うち飲みの新定番に! クラフトジン5選 ライターYOKOMIZO (以下Z )敷居が高そうと思っていたクラフトジン。ちょっと話を聞いてみたら、実はハードリカーの中でも初めの一歩にぴったりなんだとか! ジントニック専門店『アントニック』の店主・武田さんにジンのアレコレを教えていただきます。
武田光太さん (以下T )洋酒メーカーに勤めるうちに、バーに行く人やカクテルを飲む人を増やしたいという思いが湧き、4年前にバーをオープンしました。その時にジンを選んだのは、ジンを楽しむのにお酒の知識はいらないから! すごく自由で気軽なお酒なんですよ。今回は世界で最もポピュラーなジンの飲み方である、ジントニックがおいしく作れるジンを紹介します。
エディターAKIYAMA (以下A )ビギナーにおすすめの銘柄はもちろん、相性のいい料理もご案内。めくるめくジンの世界の扉を開きましょう。最後の「ベストうち飲み賞」もお見逃しなく!
味わいはもちろん、パッケージのデザインも魅力的「エンジン」
エンジン〈750㎖〉¥5,390/リードオフジャパン
Z まず初めにクラフトジンとは、どんなものなのでしょうか?
T ジンは世界中にある酒の中でも、製造についての定義が割と自由なんです。
A それは意外! ウィスキーやワインのように、国ごとに熟成年数や使用する原材料に関して細かいルールがあるのかなと思っていました。
T ジンは二次加工の酒。ベースとなるアルコールは、自社で造る必要はなく、買ってきたアルコールでも構いません。アルコールに天然の素材を漬け込み、蒸留して香りを移していくのがクラフトジンの造り方。この工程が香りを決め、重要なんです。それに比べてクラフト的ではないジンの場合は大量生産ができてコストを抑えるために、わざわざ蒸留せずエキスを使用します。
A なるほど! 酒の原材料も、漬け込む素材にもルールはないんですか?
T それに対しても法律がないので、造り手が自由にやっています。一般的に穀物由来のアルコールが多いですが、アルコールの原材料は何でも大丈夫。
Z すごいフリースタイル! もはや自由すぎて、逆に何をもってジンと言ったらいいのでしょうか?
T 唯一共通しているのがジュニパーベリーというスパイスだけ。すべてのジンに入っています。料理にも使われる、すっきりとした風味が特徴のスパイスです。
Z 見た目はコショウのような黒い玉ですね。こんな小さな存在が、ジンの核!
T ジュニパーベリーはこのまま入れてもいいし、砕いてもいいし、使う量も自由。その他の素材と一緒に漬け込みます。素材の組み合わせなど、レシピに造り手の嗅覚、味覚、好み、育った環境などが表れますね。
Z ジュニパーベリーはソウル、レシピにはバイブスが込められていたとは。クールな味わいに反して、ジンはアツいぜ!
A ヒップホップ的な解釈に偏っているから(笑)。でも、この1本目のクラフトジンは見た目からバイブスを、いや個性を感じます!
T エンジンは、モスキーノのディレクターだった方が手がけるクラフトジン。やはり、すごくキャッチーなパッケージですよね!
Z このジンにはどんな素材が漬け込まれているんですか?
T レモン、セージ、ダマスクローズを組み合わせています。ベースのアルコールの原料は小麦。原材料はEUと北米のオーガニック認証を取得していて100%オーガニックなジンです。
A ファーストアタックは柑橘系で、後味はローズがふわっと香りますね。セージの清涼感で、キリッと飲み口も爽やか 。
T エンジンが造られているエリアは、ピエモンテというワインの産地として有名な所。つまりお酒を飲みながら食事をする文化が成熟しているんですよね。だからこそエンジンも食べることが好きな人が造っているな、というバランスの良さがあります。
A 確かに食中酒としてもいけますね! 何が合いそうですか?
T ジンは元々、フードペアリングを目的とした酒ではないのですが、世界中どこでも造れるのがよさ。ですので、テロワール合わせがいいんじゃないかなと思います。エンジンならイタリアンはいかがでしょう。
Z クリームパスタを食べたい。こってり系でも口の中の脂っぽさをスッと切ってくれそうです !
ジンの入門編におすすめ! ジャパニーズジン「桜尾」
桜尾〈700㎖〉¥2,310/サクラオブルワリーアンドディスティラリー
T 桜尾は、広島の国産ジン。入門編のジンとしてイチオシです! グリーンレモン、ネーブルや夏みかん、柚子を使っているんですけど、かといって柑橘類の存在感が突出しているわけではなく、スタイリッシュな味わいに仕上げたバランスのいいジンになっています。
Z おいし〜! 柑橘類特有のほろ苦さを余韻に感じます。ヒノキ、緑茶、赤紫蘇の和素材の香りが鼻に抜け、爽快かつ芳醇ですね 。
T 今日のラインナップの中でも、最もニュートラルな味わいだと思います。
A 桜尾に合わせる料理は何がおすすめですか?
T スーパーでも買える一番手に入りやすいジンなので、一緒にスナックを買って楽しんでいただけたら。カジュアルに飲むなら、まずはこれ ! クラフトジンなのにとっても手に入れやすい価格帯なんです。
Z 確かに今回のラインナップの中では一番手頃なプライス!
T 蒸留所の親会社はチューハイなどのベースになる甲類焼酎を造っています。先ほどジンの造り方を説明しましたが、ここは元々甲類焼酎を造っているので、ベースのスピリッツを自社で持っている。だからリーズナブルな価格が可能なんです! 高品質かつコストパフォーマンスが高い、素晴らしい国産ジンです。
A 条件が揃っていたわけですね。
日本酒のような香りがユニーク。国産ジン「ナンバーエイト ジン」
ナンバーエイト ジン〈750㎖〉¥4,235/ナンバーエイト・ディスティラリー
T この蒸留所を運営しているのは、「リゴレット」などを手掛けるレストラングループで、横浜港の埠頭に蒸留所があります。ナンバーエイト ジンは、酒粕から粕取り焼酎という酒を造り、それがベースに。レストランで出るレモンの皮やアボカドの種、コーヒー豆などの廃棄される素材を漬け込み、造っているジンなんです 。
A 循環させて、おいしいクラフトジンを造れるなんてよいことしかない!
Z 香りが今までの二つと全く異なり、日本酒のような香りがする! ちょっとまろやかで、優しい甘みがあって飲みやすいです 。このジンが選ばれた理由は、素材のユニークさでしょうか?
T 二つ理由があって、一つは価格です。国産ジンが今とても価格が上昇しているなか、コスパが抜群。もう一つはレストラングループが造っているジンなので、食事と合うんですよね。ベースが焼酎なので、お刺身やお寿司など和食と合わせるのがおすすめ 。
Z 私はおでんをいただきたいなと思いました!
葡萄から造るフローラルなフレンチジン「ジーヴァイン フロレゾン ジン」
ジーヴァイン フロレゾン ジン〈700㎖〉¥6,820/コートーコーポレーション
T ジーヴァイン フロレゾン ジンはフランスのコニャック地方で造られていて、ベースのアルコールにコニャックにも用いられる白葡萄品種ユニ・ブランを100%使用しています。葡萄の果実で原酒を造り、葡萄の花を漬け込んでいるのが特徴です。
A コニャックはブランデーですよね?
T コニャックブランデーといえば高級酒の代名詞。でもこのジンがブランデーのような味わいかというと、そうではなく白葡萄の爽やかさを感じてもらえると思います。
Z フランス産ジンの中でもジーヴァイン フロレゾン ジンを選ばれた理由は?
T 普段ワインをよく飲むというお客様に必ずおすすめするジンなんです 。ワインに合わせるような食事とのも相性もよいと思います。
Z わあ、華やか! マスカットのキュッとした甘みがありますね 。
T 爽やかなスタイルで、甘いけど甘すぎない。スイーツとも相性抜群ですよ。フランスの焼き菓子や、この季節ならシャインマスカットのスイーツとペアリングしてもいいですね !
A おしゃれ〜! 確かにこのジンならスイーツに負けない、贅沢な気分に浸れそうです。
オリーブとハーブが香るスペイン産「ジンマーレ」
ジンマーレ〈700㎖〉¥4,950/ブラウンフォーマンジャパン
T スペインのコスタドラダという港町で造られているジンです。ピンチョス、パエリヤとは疑いの余地もなく合います。ジンは世界中で造られているからこそ、その土地の文化と一緒に楽しんでもらいたい!
A ワインやウィスキーは地域ごとにスタイルがありますが、スペイン産ジンに共通する特色はありますか?
T 最近のトレンドでいうとスペイン産ジンは、香りが強いかな。飲んだ時に、香りの構成がわかりやすいものが多いですね。
Z オリーブの香りがすごい! 余韻にはローズマリーやタイムの苦み、香ばしさを感じますね。これは本当に食中酒。地中海沿いのレストランにいる気分を味わえます 。
A 私はジンを冷凍室で保存しているんですけど、これってアリですか? 冷凍することによって、ちょっとトロミが出るのが好きで!
T バーでの保存方法として、冷凍保存がポピュラーでしたね。今まではテクスチャーだけが変わっていた印象なんですけど、最近のクラフトジンはすごく複雑なレシピで造っているものが多いので、冷凍、冷蔵、常温でそれぞれ香りの出る順番が変わります 。常温保存ではシトラスが香っていたけれど、冷蔵保存にしたらスパイシーな香りを最初に感じるとか 。それが魅力になっています。
A 面白いですね! どの保存方法がおすすめということもなく、好みでいいんでしょうか?
T はい。ただしメーカー推奨ではないのでご注意ください! 冷凍室でジンを保管する文化は日本発祥なので、海外の商品はコルクが壊れるのでやめてくださいと言っているところも多いんです。
きっちり冷やすのがコツ! おいしいジントニックの作り方
武田さんの店で提供するのは、ジントニックオンリー。その理由は、ジンは製法上、味自体が薄く、香りが強い液体に仕上がるため、ストレートやロックで飲むのに適していないから。ソーダ割りにしても、ウイスキーほど味が濃くないので、香りだけが強いチューハイになってしまうそう。トニックウォーターで作るジントニックは、香りと味のバランスもよく、ベストな飲み方! ここでは、バーで飲むような1杯を自宅で作る方法をお届けします。
[材料] お好みのジン 20ml トニックウォーター 100ml 氷 適量(冷凍室の製氷器で作ったものでOK)
[作り方] ❶グラスに氷を入れ、マドラー(箸でもOK)でグラスが冷えたと感じるまでクルクル回す。溶け出した水は流す。 ❷ジンを❶のグラスに注ぐ。マドラーでグラスが冷えたと感じるまでクルクル回す。 ❸トニックウォーターを注ぐ。軽く1回転半くらいマドラーで回すと、おいしいジントニックが完成!
〜今回の「ベストうち飲み賞」を発表!〜
A 国産ジンの「桜尾」を「ベストうち飲み賞」に選ばせていただきたいです! コスパ最強の1本。
T 値段が安い理由が明確で、マイナスポイントがない。素晴らしい造り手です。まずはベーシックな「桜尾」を1本自宅に、2本目、3本目にキャラ違いのジンを嗜んでいただくのがいいのかなと思います。ジンは常温保存ができ、開栓後も賞味期限はありません 。
Z 武田さんが選ぶ「ベストうち飲み賞」は何でしょうか?
T では、「ジーヴァイン フロレゾン ジン」を! 前職はレミーマルタンというコニャックブランデーの会社で勤めていて、やっぱりフランスのものが好きなんですよね。ぜひお気に入りのスイーツと一緒にうち飲みを楽しんでいただきたいです。今日紹介しているのはすべてクラフトジンで、ちょっと高いなと思うかもしれないけど、ジンにはこれ以上高いクラスってないんです。「ジーヴァイン フロレゾン ジン」などが、世界中のラグジュアリーホテルのラウンジや、ハイエンドなバーで出されているクラス。最高級クラスは天井知らずの超高額であるウイスキーやワインと比べ、お手頃だと思います。
A ジントニックは1杯当たり、何mlのジンを使いますか?
T 当店の場合は20mlですね。アルコール度数は7%くらい。
Z 700mlのボトルだったら35杯は飲める! ロマネコンティは気軽に飲めないけれど、最高級のクラフトジンなら毎晩飲めますね。皆さんもぜひ、クラフトジンでうち飲みを楽しんでください。