こんな今だからこそ、マンガのチカラ

入社試験の時に一次面接から最終面接までほとんど漫画の話しかしなかった、という元漫画誌編集志望です(入社以来ファッション誌に携わっておりますが)。最近では、忙しさにかまけてチェックできていない作品も多いのですが、そんな中でもずっと新刊を楽しみにしている作品の一つがよしながふみ先生の『大奥』。ロングラン連載のこの名作は、現在幕末編が進行中で、クライマックスへ向けて大きな時代のうねりの中にある様々な人物の姿を描いています。

幸運なことに今回、この大ファンであるよしながふみ先生に取材が叶いまして、最初から作品をじっくり読み返していたのですが、改めてびっくりしたのは「現代の予言の書ですか?」というくらい、歴史漫画でありながら、現代社会に通じるテーマが描かれていることです。疫病の流行とそのワクチンの開発、というまさに今のコロナ禍とリンクした内容はもちろんですが、男女以外のカップルで血の繋がらない子どもを育てるということ、女性の連帯、親子の関係、男でも女でもない存在、読めば読むほど気付きがたくさんある作品です。取材日には、インタビュアーである女子漫画研究家の小田真琴さんが写真の10巻を持ってきていたのも印象的です。「人は、病に、勝てる。」というコピーと大奥メンバーの笑顔のカバーイラスト。この笑顔の美しさに泣きたくなるので、詳しくは作品を読んでいただきたいのですが、そんな作品に込められた気づきに、今の多様性社会について考えるヒントがあるのでは、というのが今回のテーマの出発点でした。

今回の「マンガのチカラ」特集のサブタイトルは、「あなたの隣のもしもを想像してみよう」。誰かの立場を想像すること、自分と似た立場の人の気持ちに心を重ねて見ること、誰かと“違う”ということに気づくこと、そんな多様性の認められつつある現代だからこそ私たちのすぐそばにある問題。漫画はたくさんの気付きを豊かな物語の中から与えてくれる存在ですよ!というのを伝えたくて、よしながふみ先生とヤマシタトモコ先生(『違国日記』も読むたびはっとさせられる大好きな作品です!)のインタビュー、そして「“もしも”のための処方箋」と題した漫画レビューをご紹介しています。いつもの生活の中で感じているちょっとした息苦しさや気になることを、すっきりさせてくれるような作品をラインナップしています。ぜひチェックを!

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