2020.12.18

私は微力だけど、無力ではない(編集KO)

これは、作家・温又柔さんが木村友祐さん宛の書簡に書かれた一節です。このお二人の往復書簡は『私とあなたのあいだ ―いま、この国で生きるということ』と題して、明石書店より出版されています。持てる者と持たざる者、性と性、国家と家族、リアルとバーチャル――社会にはいくつもの「あいだ」があり、それは時として「分断」につながり、「境界線」の向こう側の人を差別したり、攻撃したりする。でももっと怖いのは、誰かが引いた境界線に何の疑問も持たず、無自覚に受け入れてしまうことなのかもしれない……。温さんと木村さんの率直な言葉のやりとりと、そしてこのSPUR2月号「彼女たちはどう闘うか」企画を通じて、改めてそう思いました。

今回、スプツニ子!さん、伊藤詩織さん、そして温さんが教えてくださった注目の海外アクティビストは、政治、IT、映画や音楽など、さまざまな分野で女性差別や社会の不均衡と闘っている女性たちです。特に、AI(人工知能)にひそむ差別構造の問題に切り込んだジョイ・ブオラムウィーニや、児童婚への抗議活動を行うアフガニスタン出身のミュージシャン、ソニータ・アリザデは、個人的に今回の企画で初めて知った人たち。「こんなすごい人がいるんだ!」という感嘆とともに、現代社会を取り巻く問題は数限りなくあり、そのほとんどが容易に解決可能とはいかない現実に気持ちがやられてしまいそうにもなるのですが……そこで唱えたいのが、冒頭の温さんの言葉と、本企画の最後に上野千鶴子先生が語ってくださった「自分の子どもたちに、もう少しはマシな社会を手渡したいと思うなら、一歩一歩政治と制度を変えていくしかない」というメッセージ。

ちょっと硬いテーマではありますが、一人でも多くの方に読んでいただきたい企画です。

 

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