「私なんて……」と悩むすべての人に(編集I)

SPUR3月号「Who am I」では、今までにないアプローチでファッションストーリーを特集しました。「私はいったい誰なんだろう」と、何者にもなれない凡庸な自分に悶々と悩む日もありますよね。そんなときはファッションの力を借りてみませんか? 極端なシルエットの服をまとって体を拡張したり、こんなふうに、メゾンマルジェラのドレスに、常識を打ち破るフェイスペイントを組み合わせてみたり。

photography:Yuji Watanabe
photography:Yuji Watanabe

既存の価値観からは考えられない装いで自己解放し、実験する旅へ。そんなふうに新しい視点で自分の体に向き合うことは、「私は誰?」というアイデンティティを問う助けになってくれるはずです。

今回、モデルを務めたのはサヤ・ベラミー。カナダと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する傍ら「自分は何者なのか」という悩みに常に向き合い、それを詩やアートへ昇華し、発表し続けています。今回は企画趣旨に賛同の上、特別に詩を書きおろしてくださいました。彼女がこのテーマを通して伝えたかったこととは?

「他人や世間が決めたストーリーやルールの枠組みに自分を当てはめて、自身を隠してしまうのはもったいない。誰もが好きなように服をまとって、自由に物語を描くことができるんです。雑誌を開いてモデルを見たときに、『まるでおとぎ話の国のプリンセスのよう』という感想を持つことがあるかもしれません。でも、それぞれが自分だけのおとぎ話を描ける魔法を持っているんです。今回私はこのテーマのモデルを務めましたが、誌面を見た方に、『私を見本に着てみて、私のようになって』と言うつもりはありません。むしろ読んだ方がまるごと自分自身を受け入れて、のびのび自由にファッションを楽しんで、自分の物語を描いてくだされば……という気持ちで望みました」(サヤ・ベラミー)