早くからリアルファー使用の廃止を宣言したり、環境負荷に配慮した形でファッションショーを開催したりと、サステイナビリティを目指し積極的なアクションをとってきたグッチ。今回、サーキュラーエコノミー(循環型経済)を推進するエレン・マッカーサー財団との戦略的パートナーシップを締結し、また新たな一歩を踏み出すことに。アニマルフリーレザー「デメトラ」の開発や、自社サイトでのヴィンテージアイテムのリセールなど、グッチが進めてきた循環型経済へのアクションにフォーカス。
持続可能な社会へ向けた、グッチの活動レポートが発表に
サーキュラーエコノミーとは、これまで廃棄されていた製品や原材料などをすべて資源と考え、リサイクルや再利用などで活用し、資源を循環させる新しい経済システムのこと。廃棄物を抑制するだけではなく、廃棄物や環境汚染を「そもそも発生させない」という考えが軸になっている。
グッチは2022年7月に、サーキュラーエコノミーに関して国際的なリーダーシップをとるエレン・マッカーサー財団との戦略的パートナーシップを締結したばかり。今後実施されるおもな取り組みとして、サーキュラーエコノミーの3原則(廃棄物と汚染をなくし、製品や原料を循環させ、自然を再生する)に配慮したコレクションを増やしていくことを発表している。今回のパートナーシップ締結により、どのような革新的なクリエイションが生まれるのか、期待は高まるばかりだ。
また、この発表と時を同じくして、サステイナビリティに関する2021年度の活動内容をまとめた「グッチ エクイリブリウム インパクトレポート」も発表に。このレポートでは、オフィスやショップスタッフの多様性の実現、同等職位におけるジェンダー間での賃金格差の是正、新型コロナウイルスのワクチン支援といった具体的な実績に加え、サーキュラーエコノミーにどれだけ貢献したかも大きく取りあげられている。
たとえば2018年にスタートした「グッチ アップ(Gucci-Up)」プロジェクトでは、商品の製造過程で発生する端材のレザーやファブリックを回収、アップサイクルするなどの取り組みを行なっているが、2021年は端材のレザー290トン、ファブリック250トン、メタルアクセサリー67トンを回収したとのこと。さらにイタリアのNGO諸団体にファブリック9,000メートルを寄贈したことも、インパクトレポート内に記載されている。
アニマルフリーレザー「デメトラ」の開発
そして今、特に注目したい取り組みのひとつが、非動物性由来の素材「デメトラ」の開発だ。2021年に誕生したこの素材は、非動物由来の再生可能なバイオベースの原料によるもの。自社ファクトリーでの高級レザーのなめし加工で培われた専門技術を生かして製造されており、リアルレザーのようになめらかで弾力ある質感を実現している。また、デメトラは汎用性の高さも魅力。エコ素材にありがちな、生産量や用途に条件や制限がつきまとうといった問題がなく、サステイナブルな素材として幅広い製品カテゴリーに用いることができる。
現在は、サステイナブルなライン「グッチ オフ ザ グリッド」コレクションをはじめ、シューズ、アクセサリー、ラゲージなど、70以上の製品にこの素材を採用している。しかもこの画期的な新素材をグッチが独占するのではなく、オープンイノベーションの精神に基づいて、ファッション業界全般に広く提供する予定だという。
「グッチ ヴォールト」でヴィンテージアイテムを販売
もうひとつの大きな動きが、ヴィンテージアイテムの再販売だ。実験的オンラインスペース「グッチ ヴォールト(Gucci Vault)」の構想の一部として、自社サイト内でヴィンテージアイテムのカスタマイズやリセールをスタート。アレッサンドロ・ミケーレとグッチの専任アーキビストが厳選し、グッチの職人が丹念に修繕を施したヴィンテージ品を購入できる。
すべてのヴィンテージアイテムには限定品であることを示すエディションナンバーが付けられ、各アイテムのために特別にオーダーメイドされたパッケージで届けられるといううれしさも。価値あるアイテムをより長く、より大切に使ってもらうことは、ブランドの目指すサステイナビリティの根本となる考え方だ。トレンドはもちろん、サステイナビリティの面でもファッション界をリードするグッチ。今後の動きにもますます注目が集まりそうだ。
text: Chiharu Itagaki