原材料の調達から製造、販売まで、長く複雑なサプライチェーンを抱えるファッション産業。これまでブラックボックスだった部分をどう見える化するか、トレーサビリティをどう改善していくかといった課題が広く認識されるなか、三井物産が始めたプロジェクト「ファーマーズ 360° リンク(farmers 360° link)」がいま注目を集めている。同社が開発したネットワークシステムを通じて、“服の原材料を作る生産者”と“服を購入した消費者”をつなぎ、商品価格の一部を生産者に還元する仕組みを構築した。2023年春からロンハーマンでの導入がスタートする、新たなプロジェクトの魅力に迫る。
アフリカの小規模零細農家を支援するために
インターネットはもちろん、水道も電気もガスも通っていないアフリカ・ザンビアの農村部。人口の大部分を占めるのは、家族経営の小規模零細農家だ。生活環境の向上が課題となっているこの地域の開発支援を目的に、2021年9月、三井物産の「ファーマーズ 360° リンク」プロジェクトが始動した。
服の原材料となるコットンを作るザンビアの農家のほとんどは、昔ながらの方法で綿花を手作業で栽培しているため、生産性が低いうえに労働に見合った対価を受け取れていないという問題を抱えている。一方、機械を使わない分、化学肥料や水の使用量が抑えられており、大規模農家による大量生産よりも環境負荷が低いのが利点だ。事実、環境にやさしい農法で作られる彼らの綿花は、国際認証の「コットン・メイド・イン・アフリカ」を取得している。三井物産は、同社が出資するアフリカの農業関連会社、ETC Group Limited(ETG)と連携し、ザンビアの小規模綿花農家から調達したコットンの価値を消費者に伝える仕組みを作ることで、農家への還元を目指す。
顔の見える生産者を“応援”するトレーサビリティシステム
生産者と消費者をつなぐ「ファーマーズ 360° リンク」プロジェクトでは、コットンの生産にまつわる情報をブロックチェーン技術を用いて可視化させ、消費者が服を購入する際に確認できるようにする。その情報とは、単なる産地証明にとどまらないのが大きな特徴だ。生産者がどんな人なのか、どんな環境で、どんな種子や農薬を使い、どんな農法で綿花を栽培しているのかといった、サプライチェーンの一番川上の部分を透明化することで、ほかに類を見ない高精度のトレーサビリティシステムを実現させた。
独自に開発したネットワークシステムで、生産データを管理
ところで、通信技術やインフラが整備されていないザンビアの農村部から、どうやって農家一軒一軒の収穫物の情報を取得し、データベース化できたのだろうか。Wi-Fi環境のない農村部では、これまで収穫物の管理はすべて紙面上で行なわれてきたが、「ファーマーズ 360° リンク」プロジェクトの実施にあたり、三井物産がオフラインでも使えるモバイルアプリを開発。現地の農家にスマホを供給し、紙からアプリ上のデータ入力に切り替えてもらったという背景がある。
2023年春から、ロンハーマンでの導入がスタート
新たなエシカル消費体験を創出する「ファーマーズ 360° リンク」にいち早く目をつけたのが、スペシャリティストアのロンハーマンだ。オリジナルブランド、8100(エイティワンハンドレッド)の2023年春夏コレクションにおいて、Tシャツやスウェットパンツなどの全6型に「ファーマーズ 360° リンク」のコットンが採用される。






