登山者同士の「どうも」を広げる。YAMAP(ヤマップ)の山を豊かにするための取り組み

自然を満喫できる春はすぐそこ。登山やハイキングを計画している人も多いのではないだろうか。今や多くの登山者にとって欠かせない存在となっているのが、累計410万ダウンロードを突破 (2024年1月時点)した登山アプリを運営する、国内最大の登山・アウトドアコミュニティのYAMAP(ヤマップ)。スマホの電波が届かない場所でも家族や友人に位置情報を送信できたり、歩いたルートを記録してほかのユーザーと共有できたり、登山者のためのプラットフォームとして大きな支持を得ているだけでなく、山岳遭難救助の現場でも重宝されている。

他者への貢献を見える化する循環型コミュニティポイント「DOMO(ドーモ)」

登山者同士の「どうも」を広げる。YAMAの画像_1

登山者やコミュニティに貢献するヤマップならではの仕組みに、ユーザー同士が贈り合えるポイント制度の「DOMO(ドーモ)」がある。山で誰かと挨拶を交わすときの「どうも」からとったネーミングで、ヤマップユーザーに対して感謝や共感、応援の気持ちを伝えるための手段として導入された。

アプリ上で登山活動日記を公開したり、家族や友人に位置情報を送信する「みまもり機能」をオンにしたりなど、ヤマップのツールを活用してユーザーやコミュニティに貢献する行動をとると、DOMOが付与される。アプリ内のほとんどのツールは無料で利用できるため、ユーザーに金銭負担はない。これまでユーザーのモチベーションだけで成り立っていた利他的なアクションをDOMOとして可視化させることで、ユーザーに価値を還元する。

自分のためではなく人のために使う「利他的」なポイント

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貯まったDOMOは自分のためではなく、人のために使う。ショッピングをしたら貯まる一般的なポイントと大きく異なる点はここにある。「活動日記、とても参考になりました」「素敵な山登りをされているのでフォローします」といったポジティブな気持ちを込めて、SNSの「いいね」のような感覚でほかのユーザーへDOMOを贈ることができる。

一回につき贈れるDOMOに上限はなく、使用期限は3ヵ月と短い。貯めることよりも、積極的に誰かに贈ることを目的としているためだ。これまでに21.2万人のユーザーがDOMOを贈り、23万人がDOMOをもらう体験をした。ユーザー間で贈り合ったDOMOの数は、132億DOMOにのぼる(2024年2月時点)。

「誰かのためになる行為をすれば、DOMOが自然と貯まっていき、ユーザー同士で贈り合える。ヤマップ内でDOMOが循環すればするほど、利他的な行為が増え、プラットフォームが健全になっていく。プラットフォームが健全になれば、山に行く人も増える。DOMOという仕組みを通じて、山を豊かにする好循環を目指したい」代表の春山慶彦さんはそう力を込める。

山を守り、豊かにするための支援にも活用

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特筆すべきは、DOMOがユーザー同士で贈り合えるだけではなく、山の保全活動や登山道整備の支援にも使えること(100DOMOで1円に換算)。2024年2月までに37の支援プロジェクトがヤマップのアプリやサイト上で公開され、約55万人ものユーザーが支援に参加。日本円で約4,000万円分のDOMOが支援に使われた。支援にかかる費用はYAMAPが負担するほか、DOMOを持たない人でもプロジェクトに参加できるように、クレジットカードを利用した金銭による寄付も受け付けている。

例えば、生物多様性の低下が深刻化する小笠原諸島・父島の「洲崎村民の森」では、2023年に小笠原独自の豊かな森を取り戻す自然再生活動を実施。小笠原グリーン株式会社とNPO法人小笠原野生生物研究会が主催する「Team Wood Recycle」がヤマップ上で支援を呼びかけたところ、総額100万円以上の寄付金が集まった。支援金は固有種や在来種の植樹と、伐採した外来種の木材資源を利活用する住民参加型イベントの開催にあてられた。

山に行く人を増やし、DOMOを増やすことが、ひいては山の保全につながる。山を愛する登山者たちのコミュニティや助け合いの文化を、循環型コミュニティポイントという仕組みに昇華させたことが高く評価され、2022年にはDOMOが「グッドデザイン賞・ベスト100」を受賞した。

気候危機が深刻化し、企業の社会的責任がますます重要視されている昨今、同じ趣味を持つ人同士のつながりや共助を通じて、豊かな山づくりを目指すヤマップのDOMOは、ビジネスと社会貢献をつなぐ新たな取り組みともいえる。山に行く人はもちろん、行かない人も支援プロジェクトに関わることで、自然環境への意識を高めてみてはいかがだろう。

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