アメリカ空軍のフライトジャケット「MA-1」をモチーフにした、PORTER(ポーター)の代表的なシリーズ「TANKER(タンカー)」が、昨年40周年を迎えて大幅にアップデート。タンカーらしいデザインはそのままに、素材を100%植物から生まれたナイロンに変更し、ディテールにも改良を加えた。なぜ、このタイミングでタンカーを刷新したのか、また開発の経緯をポーターに取材。そして、エディターが新しくなったタンカーの使い心地や品質を徹底チェック!
この先も100年愛される「タンカー」であるために
SPUR.JPエディターA(以下A):ポーターの顔とも言えるタンカーですが、40周年を迎えたこのタイミングで素材を刷新した理由は?
吉田カバン広報部(以下Y):タンカーは1983年に誕生したシリーズです。この40年の間にも、使いやすさを見直し、少しずつバリエーションを広げてきました。素材を変更することはなかったのですが、タンカーをこの先も長く続いていくシリーズにするために、有限資源である石油を使用しない素材に切り替える必要があると考えました。
A:環境のことも含め、タンカーシリーズの未来のために決断したんですね。
Y:はい。タンカーを発表した1983年当時は、ミリタリーをモチーフにしたタンカーはとても革新的なデザインだったので、すぐに受け入れられたわけではなかったんです。それから時間をかけて、品質を理解していただき、今ではポーターを代表するシリーズとして世界中から支持をいただいています。発売当時の革新的な精神を継承しながら、時代の先を行く存在であるために、100%植物由来のナイロンに変えることにしました。
A:素材は何ですか?
Y:今回のタンカーの素材は、繊維メーカーの東レが開発した「エコディア® N510」。とうもろこしの非可食部と、「トウゴマ」とも呼ばれる「ヒマ」の種から作られた植物性のナイロン繊維です。もともとの「エコディア®」は、非常に細く切れやすかったので量産が難しい繊維でした。弊社と東レが協業開発し、さらに日本初のナイロンを生産した「東レ愛知工場」の長年の技術力もあって、世界で初めての量産化に成功しました。
A:しかも、バッグとなるとより強度が必要ですよね。
Y:そうなんです。新しいタンカーは「何も変わらず、何もかもが変わる」がコンセプト。素材を変更しても品質は下げたくないという思いが第一にありました。プロジェクトでは、糸をもっと太く、安定して量産することができ、耐久性を出すというのが大きな課題でした。東レの兼田千奈美さんが専任でこのプロジェクトに携わってくれたんですが、ほとんど工場につきっきりで開発に取り組んでくださいました。
メイド・イン・ジャパンだからこそ実現できた
A:今回のタンカーを発表するまでにどのくらいの時間がかかったんですか?
Y:プロジェクトがスタートしてから約2年かかりました。今回お願いした織物工場や染色工場、縫製工場は、日本でトップクラスの技術を持っています。なにせ初めて扱う素材ですから、トラブルが起きるたびに、どこに問題があるのか、繊維に立ち返って調べたり、機械を調整したり、東レだけでなく工場のみなさんが何度も試行錯誤してくれました。実は途中で、「これは無理かもしれない」と弱気になったこともあったんです。でも、みなさんが諦めずに取り組んでくださって、2023年11月に今回のアップデートについて発表することができました。40周年に間に合ったことも、タンカーが素材から縫製まで、すべて「メイド・イン・ジャパン」だからこそ実現できたことなんじゃないかと思います。
A:従来のタンカーは、素材から縫製までこだわりが詰まっていたので、「何も変わらず」ということが、そもそも高いハードルだったんですね。
Y:これまでのタンカーと同じものを作るのではなく、その先を目指そうということで、新生タンカーでは、1cmあたりの糸の密度を増やして生地の強度を高め、従来のタンカーよりもハリと光沢を出すことができました。それから、タンカーのシグニチャーであるオレンジ色のナイロンタフタもリサイクルのものに切り替えました。バッグの表面の加工は非フッ素に切り替え、さらに汚れにくい弱撥水加工を実現するなど、実は以前のタンカーを超えているところもあるんです。
見えない細部までこだわりを貫く
A:バッグのパーツも改良されたそうですね。
Y:パーツの塗装はベースの上に6回も塗装を繰り返し、色が剥がれ落ちないように改良しました。ナスカンやホックなどは、組み立てる前の部品の段階で塗装をすることで、パーツの奥まで塗装が行き届くように。ナスカンのレバーも開けやすい直線的な形状になりました。
A:かなり細かい部分まで追求したんですね。
Y:以前は、塗装をあえて1回に抑えて、使い込んだ感じを楽しんでいただけるようにと考えていたんです。それから、従来フラットだったファスナーのスライダーも、先端を少し隆起させることで、より開閉しやすくなりました。
A:確かに! 持ち手に引っかかりができて、スムーズに開けやすいですね。
Y:さらに、ポケットのベルクロは、長さを短くすることで、指が入りやすいようにしています。ベルクロ自体も、指があたっても痛くないように角を丸くしました。
SPUR.JPエディターが、新しい「タンカー」の使い心地をレビュー!
ポーターにとっても、壮大な挑戦だったタンカーのアップデート。素材とともにディテールも改良されてますます使いやすくなり、新しいサイズやバッグのバリエーションも増えた。そこで、SPUR.JPエディターが、アップデートされたタンカーの実際の使い心地をレビュー! 今季発売する40型のバッグの中から、おすすめの5型をご紹介。
【ミニトート】収納力抜群のワンマイルバッグ
コンパクトなサイズ感のミニトート。取り外し可能なストラップつきで、肩掛けと手持ちの2WAYで使用が可能。ポケットも豊富で、スマホや財布、リップ、500mlのウォーターボトルなど、外出に必要なものは、すべて収納できる。なんといってもバッグ本体が472gと非常に軽いので、持ち運びがらくなところがうれしい!
取り外し可能になったクリアポケット
ほとんどのアイテムの内部に付属しているクリアポケットが着脱可能にアップデート。スマホが入るサイズなので、車で移動するときにバッグ本体は車内に置いて、クリアポケットだけを取り外して買い物に、という使い方もできる。
【ショルダーバッグ】仕事や旅に。シーンを問わずマルチに活躍
国内外問わず大人気のスリングバッグダブルジップ。こちらも収納力が抜群で、取り外し可能なクリアポケットつき。外側のファスナーは大きく開くので、荷物の出し入れもスムーズにできる。メインの収納部分は10インチのiPadが入るサイズなので、ワークシーンにもおすすめだ。旅行のサブバッグとしても活躍しそう!
【スクエアトート】デイリーに使える通勤バッグ
スクエアシェイプのカッチリしたデザインで、14インチのPCや、A4の書類も折らずにそのまま入るので、通勤バッグにおすすめ。こちらも取り外し可能なストラップつき。
500mlのウォーターボトルがすっぽり入るサイドポケットもついており、収納力が高いので出張や旅行用のバッグにも最適。
【ロールバッグ】コンパクトな横長シェイプのバッグが新発売
特徴的な横長シェイプのロールバッグ。キュートなルックスは、スポーティな印象をプラスしたいときにもぴったり。こちらもストラップは取り外し可能で、手持ちと肩掛けの2WAY仕様。ワンマイルバッグとしてはもちろん、6Lの収納力があるので、デイリーユースに便利。
【バックパック】オン・オフ問わず使える! デイパックの究極形
ボディバッグのようなフロントポケットが特徴的なデイパック。背面には15インチに対応できるPC・タブレットポケットつき。取り外し可能なクリアポケットや、500mlのウォーターボトル、折り畳み傘が収納できるサイドポケットもついて、容量は16Lとたっぷり。
ビジネスシーンや1〜2泊の旅行でも、オン・オフ問わずに使える優秀さ。しかも、これだけ多機能でありながら、本体の重量はわずか1104g。汎用性の高いデザインと機能性を両立した理想のデイパックだ。