まずはごみの問題を知って、ゼロ・ウェイストについての知識を深めよう【PART1】

「ゼロ・ウェイストタウン」として世界からも注目を集める、徳島県勝浦郡上勝町の環境施策にも携わり、自身も一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパンの代表理事を務めている坂野晶さんに、世界と日本のごみの現状とゼロ・ウェイストについて聞いた。

世界規模で増え続けるごみは、2050年までに70%増加する?!

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急激な都市化と人口増加で、2050年までに世界の廃棄物は70%増加すると予測されている。

「世界のごみの量は、これからもどんどん増えていくと予想されています。現状のまま対策が講じられなければ2050年には70%増加するという報告もあります(※1)。その主な理由は人口増加によるものです。ごみの量が増えると別の課題も見えてきます。例えばごみの増加率の高いサブサハラ・アフリカ(サハラ砂漠より南の地域)や南アジアなどは、都市化しながらもまだごみ処理インフラが整備されていないエリアが多く、処理の段階で汚染物質やCO2が排出され、環境負荷が高くなったり、健康被害が出たりしています」(坂野さん)

ごみの課題については、SDGsでは特に目標12「つくる責任、つかう責任」の中に含まれており、「開発途上国の開発状況や能力を勘案しつつ、持続可能な消費と生産に関する10年計画枠組みを実施し、先進国主導のもと、すべての国々が対策を講じる(12.1)(※2)」としている。
今後、開発途上国の中間層人口が増えることを予測したうえで、大企業や多国籍企業にも、積極的に持続可能な取り組みを実践していくことが求められている。

(※1)参考:
THE WORLD BANK(2018) 「What a Waste 2.0: 2050年までに向けた世界の廃棄物管理の現状と展望」
(※2)参考:JAPAN SDGs Action Platform外務省

現状のまま資源を使っていると、地球が1.75個必要という試算も!

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「私はごみの課題について考えるとき、2つの方向から現状を知る必要があると思っています。ひとつはごみの出口となる処理の問題。気候変動対策が急がれる中で、ごみの廃棄処理過程では、さまざまな温室効果ガスが発生します。また、ごみの量が増えると埋め立て処分場の確保や、ごみ処理のインフラ整備不足による環境へのごみ流出の問題があります。もうひとつは入り口となる資源の問題です。ごみが増える理由が人口増加による消費量増加ということは、化石燃料由来のプラスチックをはじめ、資源の使用量が増えるということでもあります。天然資源の枯渇や、資源確保の過程での環境破壊が懸念されます」。(坂野さん)

ごみの問題というと処理や処理の際の環境汚染について語られることが多いが、SDGsでは持続可能な生産消費形態を確保するという意味で、つくる側の責任にも言及。人口増加にともなって天然資源の需要も増し、今以上に地球への負荷をかけることを懸念し、警鐘を鳴らしている。現状のような資源の使い方をしていると、地球があと1.75個必要という試算も出ている(※3)。
(※3)参考:
Global Footprint Network(2022) 「How many Earths would we need? if everyone lived like U.S.A. residents」

日本のごみの課題はリサイクル率の低さ!

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ごみ総排出量4,272万トンのうち総資源化量は852万トンで、リサイクル率は19.9%。

長い間、自治体の廃棄物政策に携わっている坂野さんは、日本のごみの課題は、主に焼却処分によるものだという。

「日本の一般ごみのリサイクル率は約20%(※4)と欧州平均47.8%と比べて低くなっています。これは焼却処分を前提としたごみ処理の体制だからです。実は世界を見ても焼却処分をしている国はわずか。日本は国土面積が小さく、ごみの容積を減らしてから埋め立てる必要があります。また衛生面でも焼却処分することで、虫などの発生を抑制できるため推奨されてきました。

ですが、同時に資源の再利用という面では焼却処分が大半を占めることにより、遅れをとっています。ただ、日本にも良いところはあります。ガラスビンや缶、古紙など分別ルールをしっかり設けて再資源化する仕組みが各地にあり、住民の意識が高く、協力的でもあるので、自治体の機能をうまく活用できればリサイクル率を高めることも可能だと思います」(坂野さん)

坂野さんも携わったゼロ・ウェイストの町、徳島県勝浦郡上勝町では家庭ごみは45に分別され、多くを資源として再利用。なんとリサイクル率は80%を超えている(※5)。

(※4)参考:環境省「一般廃棄物の排出及び処理状況等(平成30年度)について」
(※5)参考:ZERO WASTE TOWN KAMIKATSU「上勝町ゼロ・ウェイスト宣言」

ごみを出さない、循環型社会づくり―ゼロ・ウェイスト

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こうしたごみの現状を打開するために出てくるのが「ゼロ・ウェイスト」という考え方だ。「ゼロ・ウェイストとは、ウェイスト(無駄、廃棄)をゼロにするという意味ですが、元々は廃棄物政策の一環として、英国経済学者ロビン・マレーが提唱したものです。ローカルで、低コストで、自分達で工夫して、環境負荷を低くするというのがゼロ・ウェイストの基本姿勢。さらにゼロ・ウェイストの大切なテーマとして、出たごみをどう処理・再利用するかよりも、そもそもごみを出さないようにしていくという考え方があります。

私はよく講演などでごみの話をするとき、最初に皆さんに『“ごみ"とは何だと思いますか?』と質問するのですが、ごみの定義は人によってそれぞれ違います。だからこそ使い手、使い方などを変えてもう一度活用できればごみは減ることになります。ですから、3R(Reduce、Reuse、Recycle)などを実践しながら、ごみを出さない仕組みを作っていくことが大切だと思います。生活者ができることは、お店や行政、自治体に働きかけることです。容器を持参して買い物をしたり、率先して使われていない資源を活用したりしていく中で、行政がサポートし、仕組みが変わっていくのだと思います」(坂野さん)

ゼロ・ウェイストを実践するには、3R(スリーアール)が大事!

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日本では環境省もごみ削減のために「3R」を推進している(※6)。坂野さんによると、ゼロウェイストの考えで特に注力したいのは、ごみのもととなるモノの消費を抑える「Reduce」。3Rを意識した生活を送れば、資源を繰り返し使うことができる。

1 Reduce(削減する)
ごみの発生源となる、資源の消費をもとから減らすこと。必要なもの以外は買わない、もらわない。マイバッグやマイボトルを持参してごみとなる容器・包装を削減。

2 Reuse(再使用する)
今あるものをくり返し使うこと。リターナブル容器や詰め替え製品を選んだり、リユースショップを利用して使わなくなったものを譲り合ったりする。

3 Recycle(再資源化する)
資源として再び利用するために、ごみを出すときは正しく分別すること。再生素材を使用した製品を積極的に利用するのもこの取り組みの一つ。

(※6)参考:環境省 Re-Style「3Rとは?」 

 
ごみの現状、なぜごみを減らさなければならないのかをしっかり把握したら、次はアクションへ。PART2では、ゼロ・ウェイストを目指すサステナ賢者の日々の取り組みをご紹介!


坂野晶/Akira Sakano
一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン代表理事。2020年まで徳島県上勝町のNPO法人ゼロ・ウェイストアカデミー理事長、2019年世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)では共同議長を務めた。

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