PART 4 リアルな声をインタビュー三者三様の妊活への道
10人いれば10通りの方法があるといわれている不妊治療。だからこそ、いろいろなパターンの人の話を知って、これから先の自分の人生の選択の参考に。
現在の体の状況を知ることは今後の人生を考える一助に
自身の体に向き合うきっかけは、婦人科検診で言われた「妊娠を考えるのであれば一度検査をしておいたほうがいいですね」という一言だった。現在、Aさんは37歳で未婚。昨年つき合っていた人と別れたこともあって、もう子どもを産むことはないだろう、と思っていたという。子どものいる人生に執着はなかったが、出産は人生の選択肢のひとつと感じて、真剣に考えることを決意した。
「病院を調べるところから始めました。不妊検査はすべての産婦人科で受けられるわけではないこと、予約しようとしても1週間以上かかる病院が多いことも驚きでした。医師と相談のうえ、卵巣内にどれぐらい卵の数が残っているかを調べるAMH(抗ミュラー管ホルモン)検査と卵巣機能を調べる女性ホルモン検査の2種を受けることに。ただ、女性ホルモン検査は生理3〜5日目でないと調べられないため、まずはAMH検査を実施」
1週間後の検査結果は、37歳の平均値を大きく下回る、46歳くらいの値だった。不妊検査は、今すぐ妊娠したい人だけがするものと思っていたが、今後のライフプランを考えるうえでも必要だ、とAさんは言う。
「結果を聞いたときはショックでした。まずは、女性ホルモン検査を行なってさらに状態を調べるつもりです。以前、子どもを産むのであれば転職をしないほうがよいかと悶々としていた時期もあったので、検査結果をこの先の人生を考えるきっかけにしたいと思います」
「自然妊娠は無理」と言われ、20代で不妊治療をスタート
「30歳までには子どもが欲しかった」というBさんは、現在、35歳の夫と3歳の娘の3人暮らし。26歳で結婚をし、その1年後には、仕事をしながら不妊治療を始めた。
「20代前半にした無理なダイエットのせいか、婦人科系が乱れ生理不順だったんです。でも、20代だから子どもは自然にできると楽観視していました」。しかし、いざ妊活をしてみると、1年過ぎても妊娠しなかったので、まずは生理不順を整えようと病院へ。甲状腺疾患もあったため、精密検査をした結果は「自然妊娠は無理」という診断に……。
「医療を介入しないと子どもができない事実がとにかくショックで。でも、子どもは欲しかったので、すぐに不妊治療を始めました」
まずはホルモン療法からスタート。注射を打ちに、毎日、もしくは1日おきに病院へ行かなければいけなかった。
「職場には不妊治療をしているとは言えず、昼休みや退社後に病院へ。最初に受診した病院が、生殖医療も行なっているうえ、勤め先と近かったので何とか乗り切れましたが、時間に追われ、体力的にもきつかったです」
この生活を5カ月続けたところでタイミング法を開始。ところが5カ月続けても成果がなく、精神的につらくなって2カ月間治療を休止。でもこれが功を奏し、「一度休んだことで気持ちが前向きになり、その後、1回の体外受精で子どもを授かることができました」。
こうして約1年の不妊治療を終えた。
夫の強い希望をかなえるために全力で不妊治療に臨んだ
10年のつき合いを経て、34歳で結婚をしたCさんは、「子どもはそのうちできるだろう」と思いながら2年が経過した。実はCさん自身、この年齢からの出産・育児を考えるとそれほど積極的に子どもを欲しいとは思えなかったが、夫は違っていた。そこで、夫婦で不妊検査を受け、不妊治療をスタート。
「排卵誘発剤を使ったタイミング法をしたけれど半年はかすりもせず。次に体外受精へ。体に合わせて急遽病院へ行かなければならないなど、仕事を頻繁に休まなければいけなくなりました。もともと40歳までは不妊治療を受けようと夫と話し合っていたので、仕事を辞めて不妊治療に専念することにしました」
その後は、鍼治療や漢方薬も取り入れ、妊娠しやすい環境をつくる努力をしつつ、体外受精、顕微授精を何回か試みるが、着床はするものの実を結ぶことはなかった。治療を始めて4年、40歳を前に流産したことをきっかけに、夫の意思を確認したうえで不妊治療を終了した。かかった費用の総額は約700万円。
「子どもを産むのに及び腰になり、不妊治療を始めるのが遅くなったのが反省点。見た目は若さを保つことができても、体の中は正直でした。妊娠・出産を考えるのであれば、早めに検査をし、体を知ることが大切。自分の卵子の数が少ないなんて知らなかったですから」
再就職したCさんは、仕事をする傍ら、自らの経験をもとに、不妊治療をする人のサポートを考えている。
SOURCE:SPUR 2021年5月号「体のこと、助成金のこと、今知りたいこと全部! 2021年の不妊治療を考えよう」
illustration: Misaki Tanaka text: Yuumi Fujii〈dis-moi〉