2022.01.13

今イギリスで叫ばれている更年期レボリューション【フェムテック調査団】

こんにちは。イラストレーターのクラーク志織です。今回素敵な巡り合わせがあり、こちらに記事を書かせていただける事になりました! テーマは、私の暮らす国イギリスで人々はどのように更年期障害と向き合っているのか、です。

今イギリスで叫ばれている更年期レボリューの画像_1

イギリス社会でも更年期には「ヒステリックになる」「性的魅力がなくなる」などの偏見や「おばさん特有の現象」のように女性の加齢を嘲るような風潮がつきまとったり、更年期障害について主要メディアでも取り上げられることもほとんどなく、人前でオープンに話すのが難しいトピックという雰囲気が長らくありました。そのせいで必要な人々に正しい知識が届かず適切な治療にたどり着くことを困難にしている、という現状が問題視されています。

でも「もうこんな風潮無くさない?オープンに話して偏見なんて取り払っていこう!」というムーブメントが最近になって盛り上がりはじめているのです。

1人で抱え込まないで

例えば、2019年にBBCの朝の人気ニュース番組Breakfastは、更年期障害の色々な側面を取り上げ人々の間で議論を盛り上げるための特別コーナー「Wake up to the menopause」を1週間に渡って放送しました。その後も更年期についての発信を積極的に続けています。また同番組のメインキャスターだったLouise Minchin も、自身の更年期障害に対する知識不足からすぐに適切な治療に取り組めず苦しんだエピソードを番組内や他のメディアでオープンに語り、もっと話しやすい雰囲気を作ることで社会にはびこる偏見を無くし、1人ぼっちで孤独に抱え込む人を減らしていきたいと訴えました。

他にも様々な著名人が自身の更年期障害についての体験を語り始めています。

ホルモン治療を無料化すべき!

今年の10月には「#MenopauseRevolution(更年期革命)」をスローガンにして展開された、HRT(ホルモン補充療法)の無料化運動が成果を出しました。

スコットランド地方とウェールズ地方ではすでに無料で処方される更年期障害のホルモン補充療法ですが、イングランドではまだ無料化されておらず、通常年間£100〜£250くらいかかってしまう。そしてこのコストが人によっては治療を受けるための弊害になってしまうかもしれない。だから無料化すべきと政府に訴えかけたのです。

イギリスの人気オンラインコスメショップのCultBeautyもこれに連帯し、政府に支持を呼びかける手紙を出したり、署名活動を展開したりしました。

結果的に無料化にはいたりませんでしたが、政府は治療費の大幅なカットを約束しました。いえい!

ちなみにキャンペーンの中心人物のイギリス労働党のキャロライン・ハリス議員はThe Guardian紙のインタビューで、「女性は更年期障害を乗り越えられるようになりましたが、それは必要なサポートを受けた場合のみです」「(政府などに対して)求めたり、要求したり、何もしないとろくでなしだと思われるような状況に追い込まない限り、変化は得られないのです」と語っていました。かっこいい!!しびれるぜ。

他にも「Menopause The Musical(更年期 ザ ミュージカル)」というタイトルのコメディーミュージカルが人気を博し全国ツアーをしたり、またある街では顧客と更年期について話しサポートできるトレーニングを受けたスタイリストのいるヘアサロンがオープンしたり、女性たちを中心に今までの雰囲気を打ち破る様々な色々な取り組みが広がってきています。

話せば話すほど偏見はなくせる

人によっては30代後半や40代前半からでも始まるという更年期。なのに今30代後半の私には知識がほとんどない事に最近気が付きました。ぼんやりと「どこかの未来で待ち受けているかもしれないなんだか嫌なもの」としての印象があるだけでした。

女性は若ければ若いほど価値があるという風潮がまだまだはびこるこの社会で、女性の加齢は男性のように「渋み・貫禄」などと称賛されることもほぼなく、笑いものにされたりジョークのように扱われる。「あの人更年期?」のように年配の女性があざ笑われる場面を幾度も見てきました。

こういった社会の眼差しは自分の中にもしっかりと染み着いている。だからこそついつい自分の加齢を認めたくないと思ってしまうし、「更年期」というワードを自分から遠ざけ切り離そうとしていたのだと思います。正直あまり考えたくないトピックだったのです。

でも、年を重ねることは悪いことでもなんでもない。そして更年期を迎えることは笑われるようなことでもなんでもない。

「私たちがそのことについて話せば話すほど、偏見をなくせる。そして知識は我々の力になる」

これはBBC NEWSの特派員Marie-Louise Connollyが自身の更年期体験についてTwitterで連続ツイートした中の一文です。

本当にその通りだと思います。

この言葉を胸に、私ももっと更年期のことを気軽に話していきたいと思います。「加齢は笑われるもの」「更年期はあまり人前で言えない話題」そんな風潮をなくしていきたいです。

そして誰も孤独の中で苦しまずに、更年期を乗り越えるための正しい知識とサポートを手にしやすい社会になってほしい、そんな風に願います。

PROFILE

Shiori Clark/クラーク志織●イラストレーター
雑誌やWEBメディア、広告でイラストレータとして活動すると同時に、フェミニズムやSDGsについて考える連載を執筆。ロンドン在住。instagram(@shioriclark)



参考文献
Menopause: Speaking up to end the stigma BBC
https://www.bbc.com/news/uk-northern-ireland-57640881

‘We have to better support women’: MP leading the fight on menopause The Guardian https://www.theguardian.com/society/2021/oct/18/we-have-to-better-support-women-mp-carolyn-harris-leading-fight-on-menopause

Menopause: HRT prescription cost cut welcomed by campaigners BBC
https://www.bbc.co.uk/news/uk-politics-59088557

Warwickshire stylists trained to start menopause conversations BBC  
https://www.bbc.co.uk/news/uk-england-coventry-warwickshire-57828507

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