紅葉が見頃を迎え、山々がグラデーションを描くように色づく頃、奈良県宇陀市にある室生寺(むろうじ)にて、アンダーウェアブランドayame(アヤメ)が主催するイベント、「なでしこのマドイ」第一回が開かれた。「女性のエンパワメント・地域創生」をテーマに、奈良にゆかりのある5つの企業や団体が、特産品を販売するマルシェや経営者たちによる座談会を開催。約60名が参加したイベントの様子をレポート!
場所は“女性の駆け込み寺”として知られる「女人高野」室生寺
「なでしこのマドイ」は、自分らしく生きたいと願う女性たちの声を聞き、コミュニケーションが生まれる場を目指すもの。「マドイ」は、楽しい会合、交流を深める意味である「円居(まどい)」と、女性たちのリアルな気持ちを表す「惑い」に由来している。
会場となったのは、“女性の駆け込み寺”として知られる室生寺の慶雲殿。真言宗室生寺派大本山である室生寺は、女人禁制だった高野山に対し女性の参詣が許されていたことから「女人高野」の異名を持つ。まさに古くから女性に開かれていた場所であり、今回のテーマである「女性のエンパワメント・地域創生」にぴったりの場所だ。
ayameは奈良の地からはじまり、今年で創業92年を迎えた老舗女性下着メーカーのタカギが手がけているブランド。オーガニックコットンを使用した美しい色合いの吸水サニタリーショーツや布ナプキン、ブラジャーなどを展開している。
会場のマルシェでは、実際に購入できる製品を展示。普段は一部店舗とオンライン販売のみのため、実物を手に取りたいという声があったことも「なでしこのマドイ」開催のきっかけのひとつになったという。今回はそんな奈良に根ざす企業であり、長年女性のサポートをしてきたタカギが音頭をとって実現した。
まずは奈良の地元企業の製品を集めたマルシェ。参加者は奈良の特産品を手に取ったり試飲したりすることで、奈良の歴史と今を実際に体験することができた。ブランドの創設者や生産者と話をすることで、より深く製品について知ることができるまたとない機会に。
ayameは展示販売の他にも、88色のカードから色を選ぶことで自己理解を深める色彩交流体験も実施。「何色の服が欲しい?」「何色の絵を飾りたい?」などの質問に色で答えることで、カラリストがその人に必要な色や、落ち着く色などを教えてくれる。知っておけばセルフケアの役に立ちそう。
試飲コーナーでは、明治26年創業の梅乃宿酒造が誇る日本酒とリキュール「あらごしシリーズ」をテイスティング。漬けた後の梅肉をすりつぶしたとろみのある梅酒や、果実のプチプチ感まで楽しめるみかん酒など、思わずぐびぐび飲んでしまいそうなリキュールは、奈良土産としてもぴったり。
奈良市出身の植物療法士・漢方養生指導士の女性が手がけるヘルスアンドビューティブランドのTHERA(テラ)からは、火を使わないお灸「YOJO灸」を紹介。石灰に水を加えることでお灸が温まり、火を使わずツボを温めることができる。奈良は古くから薬草の名産地として知られ、「YOJO灸」の原料の一部は奈良県で栽培から研究まで行われているというこだわりっぷり。
室生寺がある宇陀市が特産品として打ち出しているのは、生薬の大和当帰(やまととうき)。セリ科の植物で、まるでセロリのような爽やかな香りが特徴だ。古来より漢方薬として、補血、強壮、鎮痛、鎮静などの目的で、婦人薬や冷え症用薬などに配合されてきた。奈良県生駒市のアロマテラピーサロンNeroli(ネロリ)が提案するブランド、大和かぎろひからは、大和当帰を使用したお茶やアロマオイルなどがラインナップ。焙煎タイプのお茶は酸化防止やアンチエイジングに、乾燥タイプのお茶は生理不順が気になる人におすすめなのだそう。
マルシェの横のスペースでは奈良の老舗企業を継いだ女性リーダーたちによって、「事業継承と仕事と親業の両立」をテーマにしたトークが行われた。タカギ代表取締役4代目社長の髙木麻衣と、梅乃宿代表取締役社長・5代目蔵元の吉田佳代が登壇。
4代目となる髙木は3人の子を育てながら社長として会社を率い、2021年にayameを立ち上げた。ブランド名は1960年代に日本で初めてサニタリーショーツを開発した、尊敬する祖母の名から。歴史ある会社を継いで、なおかつ育児との両立は大変だが、どうしたら楽しめるかに考えをシフトしていったという。「海外出張も子どもがいたら無理だと思ったけど、思い切って連れていった。そうしたら『ママの仕事をやりたい』と言ってくれて、子どもの経験にもなった。できない理由を探すのではなく、まずやることを決めてから、そのためにどうすれば良いかをひとつずつ調整していった」と髙木。
まもなく創業130周年を迎える梅乃宿酒造の長女として生まれた吉田は、子どもが生後6ヶ月の時に突然蔵を継ぐことに。髙木と同じく、「できない言い訳はいくらでもできるから、できる方法を探すことが大切」と語る。「この家に生まれ育って、大好きな会社と環境で働きたいとずっと思っていた。日本酒業界は男性社会で大変なことも多いが、逆を言うと女性だからこその視点が大きな強みになる」。また、来場者から「パートナーとのコミュニケーションで大切にしていることは」と聞かれると、ふたりとも「小さなことでも『ありがとう』と言うこと。そしてそこにちゃんとリスペクトを込めること」と確信を持って答えた。
両者とも奈良で生まれた老舗企業として、そして“女性”経営者として、新たなロールモデルを模索し、提案している段階だ。「なでしこのマドイ」が、地域の企業や住民、そして訪れた人々とのコミュニケーションの場になることで、文化と伝統が熟成し、女性たちがエンパワメントし合う場として発展していくことを期待している。
なでしこのマドイ
https://takagi-innerwear.jp/ayame_event/murouji/