寺町東子
弁護士・社会福祉士・保育士。性犯罪の撲滅を目指す活動を積極的に行い、性暴力被害者からなる一般社団法人「Spring」の理事も務める。Twitterアカウント、@teramachi_tokoでは性的同意に関する事柄をはじめ、大人として知っておきたい法的知識を随時ツイートしている。
——『強制性交罪』が『不同意性交罪』になる、この名称の変更がなぜそんなにすごいのでしょうか?
今回の改正刑法には“同意しない意思”という言葉が入っています。平たく言えば「同意のない性行為は犯罪になりますよ」と条文にはっきり書かれているのが、とても画期的なのです。
今までの法律で性犯罪が罪に問われるのは、暴行または脅迫を用いた場合、そして心神喪失と抗拒不能に乗じた場合とされていました。ところがこれらの文言は人によって解釈の差が大きいところに問題があったのです。たとえばレイプ被害に対して「抵抗しようと思えばできたよね?」などと言って被害届を受理しない、裁判官が無罪判決をくだす、などの事例が過去にたくさんありました。でも改正された刑法では、性被害において“同意していない”こと及びアルコールや薬物を摂取させた場合や、上司と部下等の社会的地位を盾にした場合など、同意しない意志を表明することが困難とされる8つの類型を証明できればそれは処罰対象になります。この状態に乗じて性行為に及んだ場合も犯罪になるので、「同意があったと思った」などの言い訳も防ぐことができるのです。
注釈)具体的な状況としての8つの類型の詳細は、衆議院のHP刑法「第百七十六条」をチェック! https://www.shugiin.go.jp/internet/itdb_gian.nsf/html/gian/honbun/houan/g21109058.htm
暴行・脅迫やアルコール・薬物を摂取していた、睡眠・意識不明瞭の状態、拒絶するいとまがない、予測と違う事態に恐怖や驚愕を与えられた、虐待に起因する心理的状況にさせられた、経済的・社会的地位を利用されたなど様々なものがあります。

