#1【性的同意】についてSHELLYさん、寺町弁護士らにインタビュー! /【性的同意】について、今、改めて考える。被害者にも加害者にもならないために

2023年6月16日。“同意のない性行為”を犯罪とする刑法の改正案が、参議院本会議で可決・成立した。これは2017年に続き、この過去116年間でたった2度目のこと。でもここへきて立て続けに性犯罪に関する刑法改正が続いたのは「多くの人が声を上げ、実際に働きかけたから」だと、弁護士の寺町東子先生は話す。性に関する話がタブー視され、性教育を受ける機会の乏しかった私たち大人が、今、改めて【性的同意】について考えることが必要なのはなぜだろう? 

それは自分の心と体を守るためにはもちろん、気づかぬうちに加害者にならないために。そして人生を豊かにしてくれる自己決定権と他者を尊重する気持ちを、次の世代へ受け継いでゆくためでもある。他人事ではなく自分自身の力で、みんなが生きやすい今より安心な社会にしたいから。新しい刑法が7月13日より施行となるこの機会に【性的同意】についての正しい知識を身につけるべく、3組の識者にそれぞれの視点から話を聞いた 。

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性教育のオピニオンリーダー・SHELLYさんに聞く、【性的同意】をきちんと取ることはなぜそんなにも大切なのか?

今回【性的同意】をテーマで取り上げると決まったとき、スタッフ間で真っ先に話題にあがったのがタレントのSHELLYさんによるYouTube。「性教育について知っているのと知らないのでは、歩む人生があまりにも変わってくる」。そんな風に話す彼女のチャンネルでは、セックスコミュニケーションから生理の話、ジェンダーについてなど、押さえておくべき性の知識を楽しくわかりやすく学ぶことができる。だからこそ、性教育に興味はあるけれど何から始めたら……と迷える人にまずはここにアクセスしてほしくて。【性的同意】とはどんなことで、人生に何をもたらしてくれるのか。SHELLYさんに改めて聞いてみた。

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SHELLY(シェリー)

タレント。昔から性やジェンダーに関心を持ち、個人的に勉強を続けて2020年に性教育を発信するYouTubeチャンネル「SHELLYのお風呂場」をスタート。ネーミングの由来は“裸になってプライベートゾーンを見せ合うお風呂場は性教育にぴったりの場所”という想いから。今年の5月には、刑法改正の審議のために開かれた衆議院法務委員会に参考人として出席。ジョークも交えながらのわかりやすくも真摯な意見表明が注目を集めた。

YouTube「SHELLYのお風呂場」

——そもそも【性的同意】って、なんですか?

キスやハグ、相手に触れるなど、セックスに限らない性的な行為全般において“今この場で、お互いにこの行為がしたいかどうか”を確認し合うことです。ここで重要なのは毎回、すべての行為に対して、相手が嫌かどうかではなく、積極的にしたいかどうかを確認するということ。夫婦、カップル、セックスフレンド、ワンナイトの相手……関係性に関わらず、すべての相手に対してです。逆に言うと、その積極的な同意の取れていない性行為はすべて性暴力、レイプなんです。日本の映画やドラマ、漫画ではこの“無理やりする”という行為を恋愛として描いているものが非常に多く、それにはとても危機感を抱いています。

——ではなぜ、その【性的同意】を取ることが大切なのでしょうか?

本来は自分だけのものであるはずの自分の体を乱暴に扱われたり、いいように弄ばれたら、体だけではなく心にも大きな傷が残ります。それは逆も然りで【性的同意】の概念について詳しく知らないでいた結果、あなたの不用意な言動が相手を深く傷つけるかもしれない。被害者にも加害者にもならないために、みんなが共有してゆくべきルールなのです。女の子同士で「おっぱい大きいね〜」と勝手に触ったり、子どもがふざけて誰かにカンチョー!とするのも相手が嫌だと思った時点で性暴力なのですが、でもされた方が本気で嫌がったりすると「え、ノリ悪くない?」となる空気ってありますよね。でもそんな風に加害者を擁護して助長する悪しき慣習は、もういい加減やめなくては。よく性被害に遭わないためにも夜道は一人で歩いちゃいけないよとか、露出の多い格好はやめなさいなんて言いますが、そもそも性被害というのは加害者が100%悪い。その忠告を守らなかった自分がいけなかったとなぜか被害者が自責の念に駆られてしまうようなめるような、今の社会に蔓延するムードがおかしいのです。自分の体と同じくらい相手の体をリスペクトすることも大切だから、どうか“加害者にもならないために”という視点でも【性的同意】について考えてみてください。

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「したい?」と問いかけたときに、積極的な「YES!」以外の答えはすべて「NO」という考え方はいまや世界的な通念に。もちろん問われた方も自分の意志を明確に示すことが大切。

——実際にはどう同意を取ればいいですか?

セックスとなると途端に秘め事として扱われがちですが、本当は日常の中でも特にコミュニケーション能力が求められる場面で、その基本が【性的同意】なんです。だからルールやマニュアルはない! 普段の生活でゴハンを食べにいくときに「何が食べたい? 嫌いなものはある?」と聞くのと同じ思いやりを持てればいいんです。せっかく気持ちが近づいて二人の関係がよくなっているときに、うまく同意が取れなかったせいで関係性や信頼がくずれてしまうのを防ぐためにも。基本的な概念を理解して、雰囲気を壊さない、断られたとしても気まずくならない素敵な聞き方を大人のスキルとして身につけたいですね。

——3人の娘さんのママとして、子どもたちへの性教育はどうされていますか?

まずできるのは、小さな頃から家庭内で当たり前に性の話をできる環境づくり。我が家では上の娘たちが1歳半の頃から「ここは大事なところだから、人に見せたり触らせたりしてはいけないんだよ」と話したり、お風呂で胸にバーッとタッチされたりしたら「ここはお母さんのプライベートパーツだから勝手に触らないでね」と伝えています。家族の間でもお互いをリスペクトして性の話題を当たり前にできるようにしておけば、もしも外で性被害に遭うようなことがあっても絶対に話してくれると思うんです。子どもは年齢とともに性的な話をどんどん恥ずかしいと思う傾向にあるので、明日より今日!の姿勢で1日も早く。とはいえ、もう子供が大きくなって直接話すのは恥ずかしい……というところまで来ているのであれば、信頼できる性教育のコンテンツを見つけてシェアしてみては? たとえば「これ面白かったよ〜」と私のYouTubeのリンクを送ってもらってもいいですし(笑)、性教育についての本を部屋に置いておくなどもおすすめ。で、数日後には「あれどうだった?」と必ずフォローアップしてみてください。それで子どもがそっけない反応だったとしても別によし。怖い目に遭ったときに誰にも言えず抱え込んでしまうという事例が子どもは特に多いので、こちらが性の話題をオープンにできる相手だと示してあげることが重要なんです。

——国会の刑法改正案審議に参考人として出席されたSHELLYさん。「同意のない性行為は暴力」と訴えられましたが、そのときの感想は?

意外にと言ったら失礼かもしれませんが、頷いてくださったり、前のめりに聞いてくださったりする議員さんも多くて。性的同意について熱心に勉強されている方の想いが強いなと感じたので、全体的にはポジティブな印象でした。一方で居眠りされている方もいらっしゃったのですが……(苦笑)。あと性的な話がタブー視されがちなテレビで私のニュースをたくさん取り上げてくださり、そこにもこの数年間での大きな変化を感じましたね。ただコメンテーターの中には「不同意性交罪って怖いよね。後から元カノに『同意してなかった』って言われたらどうするんだよ!」という方もいて、それは違うなと。不同意性交罪というのは、同意があった性行為を後から「同意していなかった」と言ってどうこうできるわけではありません。そうではなくて、拒否したにも拘わらず無理やり性暴力を働かれた場面でより被害者に寄り添うために。今までは「そんなに抵抗されなかった」などの言い訳を加害者側に許してしまっていたのを、その場の“不同意”を証明できれば相手を罪に問えるというものなんです。そのあたりの理解を一人一人がもっと深めてゆける世の中になることを切に願っています。

性的同意についてもっと身近にもっと知ってほしい。そのためにもSHELLYさんの動画をチェック!



性犯罪・性暴力の相談窓口
https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/avjk/consultation.html

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