ここ数年、梅毒をはじめとした性感染症が流行しているのをご存じですか? その実態や感染経路、予防対策や万が一のときの対応などを取材したこちらの記事でも、セックスの経験があれば誰でも感染しうる身近な病気になりつつあることを産婦人科医からお話しいただきました。その中でご紹介した「保健所では無料かつ、匿名で性感染症検査を受けられる!」という件について、エディターが体験。性感染症検査は47都道府県の保健所で実施されていますが、今回は東京都内の保健所で実際に受検をしてきました。
まず初めに、どこで検査を受けられるのかをリサーチ。今回私が使ったのはHIV検査・相談マップというサイト。タイトルにHIV(Human Immunodeficiency Virus・ヒト免疫不全ウイルス)とありますが、広く性感染症の検査を受けられる保健所を探せるサイトで、都道府県や現在地、希望の条件などから調べられます。基本的には生活圏内で検査する方が、陽性だった場合に保健所から近隣病院を紹介していただけることもあるのでベター。とはいえ決まりはないので、受検したい地域を選んで保健所を検索します。
今回は新宿駅周辺でリサーチ。保健所によって受検できる曜日・時間や検査内容(梅毒検査、クラミジア抗原検査など)、結果通知の時期などが異なるため、自分の希望に近いものに絞ります。私は複数の病気を検査できるところが良いなと思い、新宿区保健所健診会場を選択。会場によっては予約が不要な場合もありますが、今回受検する会場は要予約のため、事前に電話で予約し、予約番号をもらったら準備完了です。
検査当日、まずは受付を済ませます。ここで病院での受検との違いを実感。病院ではまず保険証や診察券を提示しますが、こちらの保健所は電話で聞いた予約番号を伝えるだけ。さらに受付時に渡される問診票にも、氏名や住所、生年月日などの個人情報の記載項目はありませんでした。まさしく匿名受検。問診票には、検査希望項目や受検のきっかけ、性感染症の罹患歴に加え、検査結果日にドクターに相談したいことの有無などを記載します。私はこの保健所で受検可能な、HIV、梅毒、B型肝炎、性器クラミジア感染症の全てを希望し、尿検査と血液検査を受けることに。
検査番号で呼ばれてまず向かったのは、検査の部屋、ではなくて問診の部屋。保健所によってこの手順は異なるそうですが、この会場ではまず問診からスタート。プライバシーに配慮された個室内で、保健師さんとマンツーマンで問診票を元に会話をします。気になる症状や受検のきっかけなどをお話しすると同時に、検査や病気に対する不安感や疑問点なども気兼ねなく聞けるので、「1人で抱え込まず、相談していいんだ。聞いてくれる人がいるんだ」と肩の荷がおりるような気持ちになりました。
問診が終わると、まず尿検査からスタートです。廊下を進み、尿検査の受付に着くと検査カップを手渡されるので、すぐ近くにあるお手洗いで採尿。受付で提出したら尿検査は終了。次は、血液検査。また別の部屋で採血をしていただいたら検査は終了。その後5分程度、止血をしながら、待合室で念のため安静にしたのちに、異常がなければ帰宅OK。この日は受付から退出まで、大体30分程度で完了しました。
保健所での検査では紙での結果通知はなく、口頭通知のみ。検査会場や受検内容によって結果通知のタイミングが異なりますが、私が受検した会場と内容は1週間後に結果が出るとのことで検査会場を再訪しました。どうやらHIVだけの検査など限定的なものであれば、即日結果がもらえるところもあるようなので、予約時にニーズに合わせて選びたいところです。
受検時に手渡される控えの紙を受付に提出し、検査番号で呼ばれたら、問診時と同様の部屋へ。同じようにプライバシーに配慮された空間で、今度は保健師さんではなくドクターから結果通知を受けます。検査結果について説明を受け、陽性の場合、この会場ではその後のステップについても相談可能。受検者が希望すれば、近隣の病院へ紹介状を書いてもらえるなど「陽性になったらどうすればいいか」までサポートしてくれるのが心強い。ここでも、「1人で抱え込んで悩まず、相談に乗ってくれる人がいる」という安心感を得ることができそうです。
結果通知の日は、おおよそ5分ほどで終了。検査も結果通知も、予約制ということもあるのか想定よりもスムーズかつスピーディで、もちろん日によって状況は異なると思いますが、「役所系の手続きとか、病院って所要時間読めないから腰が重いんだよな~」という先入観が覆されました。
待合室にはリラックスできるような懐かしの音楽が流れ、性感染症や自分の身体を守るためのことに関する様々なパンフレットが置いてあります。検査会場の至る所に、スタッフの皆さんからの「気負わずに、リラックスしてくださいね」という心遣いを感じられ、会場を訪れる方の不安な気持ちを包み込んでくれるようでした。
「保健所で受ける、無料の性感染症検査」と聞いて、無機質に検査するだけなのかなと想像していましたが、この会場では問診で保健師さんやドクターと向き合い、対話できる時間があったり、随所に見受けられる受検者への配慮などを感じ、なんだかいい意味で予想を裏切られました。不安になったら1人で抱え込まず、最初から病院にかからずとも、まずは無料で匿名で受検できる保健所を頼ってみるのも選択肢の一つだな、と実感すると同時に、この制度があることをより多くの人に知ってほしいと思います。
HIV検査・相談マップ
https://www.hivkensa.com