日々を過ごしていると、胸の中にいろいろなモヤモヤが渦巻いてくる。
たとえば、自分の体型の変化や、それに伴う周囲からの視線。セクシュアリティが揺らいだり、価値観をアップデートする中で過去の自分を責めそうになったり。モヤモヤしていることを言葉にできず、さらにモヤモヤすることもある。
そんな様々なモヤモヤに、どう向き合っているのか? 俳優の剛力彩芽さん、臨床心理士のみたらし加奈さん、イラストレーターのクラーク志織さんの3名から、経験をもとに話を伺った。
【剛力彩芽さんのモヤモヤ】変化する身体への戸惑い、その経験を経て得た新たな視点
まず話を聞いたのは、1980年代の女子プロレスの世界を描いたNetflixシリーズ「極悪女王」に出演する俳優・剛力彩芽さん。 2024年9月19日からNetflixにて配信されるこの物語の中心は、“最恐ヒール”として女子プロレスファンを魅了したダンプ松本と、共にブームを牽引していた女子中高生のアイドル的存在、長与千種とライオネス飛鳥のコンビ「クラッシュ・ギャルズ」。
そのライオネス飛鳥を演じる剛力さんは、華奢なモデル体型から、たくましい女子プロレスラーへと肉体を作り変えて役に臨んだ。その過程で次第に、自分の身体へのまなざしがモヤモヤから自信に変わっていったという。今の剛力さんが考える“美しい身体”とは?
半年間をかけ、+10kg増量した身体づくり
──ドラマを拝見すると、試合の場面が多く驚きました。スタントなしのシーンも多かったとのことで、身体づくりや技の習得は大変だったと思います。どんなトレーニングや食事管理をされたのですか?
撮影に入る半年前くらいからトレーニング期間が始まり、週3日はウェイトトレーニング、週2日はプロレスの練習をしました。合計週5日は練習なので、ほぼプロレスラーのような生活です(笑)。食事は栄養士さんに食べた量やカロリーを共有して、指導していただきました。
アスリートさながらの日々だったので、運動して1時間以内に消費した分のカロリーを補わないと、本当に身体が動かなくなってしまうのですが、私はもともと小食で、たくさん食べることが難しくて。それで栄養士さんがいろいろ考えてくださり、1日5回に分けて食べたりしながら少しずつ身体を大きくしていって、最終的に+10kg増量しました。
トレーニングを続ける中で、変化する身体に自信が生まれた
──確かに試合のときの水着姿を見ると、これまでの華奢な雰囲気ではなくて、全体的にがっしりした印象に変わっていましたね。10代の頃からモデルをされていた剛力さんは、「スレンダーであることが正義」とされるような世界で育ってこられたと思います。今回、身体を大きくすることに抵抗はありませんでしたか?
抵抗がなかったと言ったら嘘になります。体型が変わっていくのを見て悲しくなったり、プロポーションが変わったことで自分が思うように服が着られなくなってがっかりしたり。ネガティブな方向に行きそうになったこともありましたが、トレーニングを続けるうちに徐々にそれが変わっていきました。
まず健康的に体重を増やしたら、すごく元気になったんです。筋肉がついたことで代謝も良くなったし、冷え性もなくなって。身体を動かすと、気分も明るくなって前向きになりますよね。適度な運動と食事って、すごく大事なんだなと気づきました。
それと役に向けて身体が仕上がってきたら、筋肉がついた自分の身体をかっこいいと思うようになったんです。健康的だし、美しいし。鏡を見て、「いい身体だな」って思う瞬間もあって。姿勢も良くなり、自分に自信がついたように感じました。
──前向きな心境の変化があったのですね。プロポーションが変わったことで、逆に似合うようになった服はありますか?
タンクトップが似合うようになりました。以前は胸元がガリガリだったのですが、大胸筋がつくと張りが出て、胸元がきれいになるんですよね。それと背中に筋肉がついたのもうれしくて、背中が開いている服を無意識に買っているかも。
自分が美しいと思う身体であること、それがいい
──背中に筋肉のついている女性、かっこよくて憧れます! 近年SNSなどでも取り沙汰されている、外見で人を判断しようとするルッキズムの風潮がありますよね。「極悪女王」の世界観は、その真逆にあるような気がします。この作品を通して、外見や体型に関するご自身の考え方で、何か変化があれば教えてください。
撮影期間中、指導してくださった女子プロレスラーの方々をはじめ、周囲の人たちみんな身体が大きかったんですね。そんなとき、久しぶりにファッションショーを見に行ったら、「ファッション業界の人って、こんなに細かったっけ!?」ってびっくりしてしまいました(笑)。
もちろんモデルにはモデルのプロ意識があり、それはそれですごいのですが、誰もがそこを目指す必要はないと思っていて。「細くなければ美しくない」とか、「こうでなきゃダメだ」とか、そういうことではない。自分がなりたい理想像があって、それに対して一生懸命であれば、それでいいと私は思うし、そういう人が一番輝いているんじゃないかと思います。
私自身、今トレーニング前の自分の写真を見ると、めちゃめちゃ細く感じるんですよ。だから撮影が終わって1年以上経ちますが、実は元の体重には戻してなくて、5kgほど落としただけ。このくらいが自分にとってベストなんじゃないかと思っています。ただ細いより、筋肉がついて締まった感じのほうが美しいと今は感じるので、この身体を維持していきたいなと思っています。
──最後に、これから「極悪女王」を観る方々にメッセージをお願いします!
長期間にわたって準備して、ひとつひとつみんなで積み重ねてできた作品で、そこに参加できたことをすごくうれしく思っています。これが実際の話をもとにしてできた作品だというところがすごいですよね。ダンプ松本さんをはじめ、キャラクターの生きざまが丁寧に描かれているので、観た方の心に響く作品になっていると思います。日本中の人たちが熱狂した女子プロレスラーたちの熱気、そして1980年代の時代のエネルギーを感じてほしいと思います。
2008年、雑誌『Seventeen』の専属モデルとしてデビュー。2011年、『大切なことはすべて君が教えてくれた』(CX)で、本格的に俳優デビュー。以降、ドラマ、映画、CMなどで幅広く活躍。2024年は、2月に舞台『メイジ・ザ・キャッツアイ』で藤原紀香、高島礼子とトリブル主演を務める。7月には主演映画『私が俺の人生!?』も公開された。
【みたらし加奈さんのモヤモヤ】セクシュアリティのゆらぎ、染みついた価値観をアップデートする痛み
次に話を聞いたのは、自身のセクシュアリティが異性愛者から、パンセクシュアル※1に変化した経験を持つ、臨床心理士・みたらし加奈さん。人の性自認やセクシュアリティはゆらぐことがあるし、それは誰にでも起こり得ること。けれどいざ自分自身にゆらぎを感じると戸惑いを覚えるかもしれない。そんな自身のモヤモヤに対してどう向き合ったのか? また自分の中で起こる価値観の変化と、それに伴って生じるモヤモヤをどう整理しアップデートしていったのか? ご自身の経験を踏まえてお話しいただいた。
※1 相手の性のあり方に関係なく人を愛する全性愛者
友人に伝えた「好きならやってみたら」が自分に返り、ゆらぎに気づいた
──みたらしさんはパンセクシュアルであることをオープンにしていらっしゃいますが、ご自身のセクシュアリティにゆらぎを感じたきっかけは?
大学生の頃、女友だちから「女の子に告白された」という相談を受けて、「好きなら付き合えばいいじゃん」と伝えた言葉が自分にも返ってきたんです。それまで、自分は異性愛者だと思い込んでいたのですが「違うかもしれない」と直感的に思って。友だちについてきてもらって新宿2丁目に行ったりアプリを使って女の子とデートをしてみたりして、自分のセクシュアリティを探りました。初めての女性との交際をきっかけに、パンセクシュアルだと気づいたんです。
モヤモヤしているなら答えは出ている。一歩踏み出してみて
──「自分はシスジェンダー※2で、異性愛者のはず」と思いながらも違和感を感じて、そんな自分に動揺したり性に悩んでいたりする方から相談を受けることもありますか?
たくさんDMが届きます。そういう方々に伝えたいのは、「踏み込んでみてもいいんじゃない」ということ。というのも、今の自分にモヤモヤしている時点で答えは出ていると思うんです。気持ちを押し殺すくらいなら一度飛び込んでみてほしい。そうして、コミュニティで友だちをつくって、遊ぶ機会を増やして、スモールステップで自分の気持ちを確かめてみてください。違うと思ったら、離れてもいいんです!
※2生まれ持った性別と性自認が一致していること
──中には結婚をしていたり子どもがいたり、そういった制約からジェンダーのゆらぎを口に出せず苦しんでいる人もいると思います。
実は結構いらっしゃって……自分ひとりの問題ではないので、なかなか気持ちを吐き出せなくて苦しいと思います。そういうときは、カウンセリングを利用するのもおすすめ。カウンセラーは守秘義務があるのはもちろん、決して相手を責めたりジャッジしたりしないので、ありのままを受け止めてもらう過程で、自分のゆらぎが明確化されるかもしれません。
価値観のアップデートに伴う心の痛みは、会話の中で解消していく
──「ジェンダーの考えをアップデートするときに、ものすごく傷みがともなった」という発言を拝見しました。お話できる範囲で、どのような痛みを感じられたのか伺えますか?
私はジェンダーロールを自分らしさのひとつとして、内面化してしまっていたんです。普段はガサツでも「女性らしくて好き」と言われたら、その役割を演じようとして。
それなので同性のパートナーと付き合いはじめたとき「どっちが料理するの?」などと困惑しました。次第に「好きな方がやればいいんだ」と思えるようになって、少しずつ固定観念が剥がされていった気がします。
ジェンダーやフェミニズムといった学問に出合えたことも大きいですね。学ぶほど、過去の自分に罪悪感を感じたり、尊敬していた人の考えとの乖離に気づいて自分の指針がなくなってしまったり、そういったことで起きる心の波に苦しみました。
けれど「自分はどうありたいのか」という価値観を再構築するためには必要な痛みだったと、今は思います。知ることで苦しんだこともあるけれど、知らなかった自分に戻りたくはないから。
──どのように価値観を再構築されていったのですか?
生まれてからの25年ほどで形成された価値観だったので、別に自分を責めなくてもいいと思えたんです。今は友だちとの会話の中で “いわゆる”という言葉をつけて固定観念について話したりすることで、過去の自分を責めずにいられることに気づきました。
そして価値観をアップデートしていく中で思うのは、周囲に対するモヤモヤよりも「共感できた嬉しさ」や「こうしたい」という気持ちに着目すると、自分の心を守れる気がするということ。たとえ他人でも、加害性をストップさせたいと思う場面に遭遇することがあるじゃないですか。見ていてモヤモヤするような。そういうとき、周囲に期待して待つよりも、自分から「おかしい」と声を上げて、共感してくれる仲間を見つけて、手を取り合える喜びが今は強いです。
「自分がこうしたいと思った」という意思を大切に言動する
──最近、手を取り合う喜びを感じた瞬間はありましたか?
通っているカフェで、隣の席にいた男性二人が新入社員らしき女性に大きな声でマウンティングしていたんです。「何歳の頃の俺を超えろ」「お前バカじゃないのか」みたいなことまで。いじめのような構図だったので介入すべきだと思い、店員さんに共有したら動いてくれて。会計後男性二人が先に店を出るように促してくれたので、残った女性に「大丈夫ですか? もし大丈夫なら変な人に声をかけられたと言っていいし、何かあったらInstagramに連絡をください。私は、あの言動はないと思う」と打ち込んだスマホのメモ画面を見せて伝えました。彼女はそのまま去っていったので、もしかしたら迷惑だったかもしれないけれど、店員さんと連帯して彼女にひと言伝えられたのは良かったなと思います。スマホのメモ機能は、周囲に聞こえないように伝えられるのでおすすめです。
──他者同士のモヤモヤするシーンに遭遇したとき、介入するのは勇気がいるなと思います。もしかすると迷惑かもしれないと思ったり……。
自分が思っていることを伝えるのは、躊躇してしまいますよね。私は言葉を選ぶときも行動に起こすときも「私がやりたいからやっている」という意識を大事にしています。例えば「奥さん」や「旦那さん」など、世間の“一般的な基準”に合わせるのではなくて、私が呼びたい方で呼ぶ。どう呼んだらいいかわからないときは、呼ばれたい名前を本人に聞くようにしています。そうして、自分を主語に言動する意識を持つと間違いを恐れなくなりますし、嫌だと言われたら「私が勝手にしてごめんね」と素直に謝りやすい。ある種の“わがままさ=自分の意思のままでいること”は大事にしています。
──どれだけアライ※3としての気持ちがあったとしても、コミュニケーションの取り方によって相手を傷つけてしまう可能性があります。ジェンダーについて話すときの心がけはありますか?
結局その人次第なので、どこまでがOKなのか話しながら探っていくしかないと思います。たとえ昔からの友人だとしても、決めつけずに質問をするように。気遣いすぎても変な空気になるので、たとえば生活の中で困っていることがあるのなら、オープンクエスチョンではなく選択肢を用意したうえで「どうしてほしい?」と質問をすると相手も負担なく答えられると思います。ただ、私も度々気まずくなったりして謝っていますし(笑)、相手の様子を見て尊重し合いながら日々トライアンドエラーを繰り返すことで、いい関係を作れるようになってきたと思います。
※3 LGBTQを理解、支援する人
大学院卒業後、総合病院の精神科に勤務。現在は国際心理支援協会にて、カウンセリングを行う。一方、メディアでは臨床心理士として、そしてLGBTQの当事者としてコメンテーターを務め、メンタルヘルスやウェルビーング、マイノリティへの理解を深める講演なども行なっている。また専門家とともに性被害や性的同意に関する情報を発信するNPO法人『mimosas(ミモザ)』の代表副理事も務める。
【クラーク志織さんのモヤモヤ】違和感に意見しづらい空気、それを言語化できない自分自身
そして、「モヤモヤをどう表現していくのか」について話を聞いたのは、イラストレーターでありライターでもあるクラーク志織さん。生まれ育った日本からロンドンへ移住し12年が経ったいま、クラークさんは胸の中のモヤモヤを言葉にできるようになったと振り返っている。思うことがあっても、輪を乱すようで言いづらい空気や、そもそもどう言語化すればいいのかわからないなど、さまざまな壁を感じている人もいるはず。そんな私たちに、モヤモヤへ向き合うためのアドバイスをいただく。
感じるモヤモヤは、気持ちの問題ではなく社会の問題かもしれない
──ロンドンに引っ越すまで「モヤモヤを話すための知識も言葉も持ち合わせていなかった」と著書『ロンドンの片隅で、この世界のモヤモヤに日々クエスチョンしているよ。』(平凡社)で語られていました。日本で発言できなかったのは、どうしてだと思われますか?
日本だと、少しセンシティブな発言をすると面倒くさがられたり、流されたりしてしまう空気感がありますよね。私は日本とイギリスのミックスなのですが、いつも「ハーフ羨ましい」とばかり言われていて。勇気を出して「生まれ育った国で常によそ者扱いされたりと、嫌なこともあるんだ」と思いを打ち明けても、「考えすぎ」と問題がなかったことにされてしまう。私がネガティブすぎるんだと思っていました。
でも、ロンドンにはミックスルーツの人が多いこともあって、悩みを矮小化することなく理解してくれました。ずっと自分の気持ちの問題だと思っていたことが必ずしもそうではなくて、社会のせいだとはっきり言ってもらい、だいぶ心が楽になりました。
──自分の意見を受け止めてもらったことで、次第に表現できるようになっていったんですね。
社会問題について意見する人が多いので、日々様々な考えに触れることができました。そうすると、モヤモヤの原因を探るキーワードをゲットする機会が増えて、言葉にしやすくなったんです。私の場合は一日でガラッと考えが大きく変わることはなくて、日々の小さな積み重ねで少しずつ学び、意見することに抵抗感がなくなっていきました。
──ほかにも、モヤモヤを話すための知識や言葉をどのように吸収していきましたか?
ポッドキャストを聴くのが好きなので、イギリスやアメリカのニュース番組や、コメディアンが政治を語る番組をよく聴いています。知識も得られますし、カジュアルに友だちとモヤモヤを話す切り口のヒントにもなります。
デボラ・フランシス=ホワイトさんがホストの『The Guilty Feminist』という番組は、冒頭のトークで「私はフェミニストだけど雑誌では見た目を修正してもらっている」みたいな、ちょっとした自分の中の矛盾をさらけ出すところから会話が始まるんです。結局みんな矛盾を抱えて、その中でもがいて生きている。モヤモヤを話すことでお互いを認め合って、良くしていく動きが私は好きです。
同じ目線に立って、学びあう気持ちを忘れないこと
──周りとも気軽にモヤモヤを話したいと思う一方で、今の自分の価値観を共感しきれていない昔からの友だちとは同じ熱量で話せないと思ってしまうことがあります。会話を始めるヒントはありますか?
私もまだまだそういうときがあります。「相手に嫌われたくない」「空気を察して言い出しづらい」「輪を乱したくない」という思いから、話を切り出すことにとまどいが生まれたりしますよね。
一度の会話で、価値観はガラッと変わらない。なので私は、小出しに話題にして、小さな対話を何度もする“ジリジリ作戦”で少しずつ歩み寄っていけると思っています。またロンドンの人たちは話し方や言葉に勢いがあるので、その雰囲気のまま日本の方に話すとものすごく強くて上から目線に聞こえる場合もあるなと気がつきました。“西洋の考え方が絶対”みたいな態度は取りたくない。そして自分が意見を言うだけでなく相手の話も聞きたいので、学びあう気持ちを忘れずに話すことを心がけています。
──ほかにも人とコミュニケーションをとる上で意識していることはありますか?
「ジャッジじゃなくてラブ&リスペクト」と本で書いたのですが、一度会っただけで他者をジャッジしないように心がけています。自分とは考え方が違ったとしても、相手には相手の事情があるはずだから。ただもちろん、悪意をもって誰かを差別するような物言いをする人には、その場でNOと言う勇気も持ち合わせたいです。
私だって偏見があったり、知識がないゆえに間違った見方をしていたりするだろうから、決めつけずにできるだけ会話をすることで知っていきたいと思っています。
「私って最高!」言われたい言葉を、あえて自分から言葉にしてみる
──モヤモヤを表現できず苦しんでいる方々に、どんな言葉をかけたいですか?
私も完璧ではありませんが、モヤモヤに気づいたことは自分が変わろうとしている証なので、過去に言動してしまったことに対して必要以上にジャッジするのはやめようと思っています。考えは変わり続けるものだと思うんです。
もしかしたら、10年後の私が今の私を見たら「アアアアアア!」と後悔しているかもしれない。それでも、変わろうとしていることをポジティブに捉えて、自分に優しくしたいなと思います。
──気づいたら、自分に厳しくしちゃいますもんね。
最近試していることがあって、本心ではそう思えていなくても、心のなかで「自分すごい」「頑張ってる私って最高! 大好き!」って言い聞かせています。
この間も、友人が私と家族の後ろ姿の写真を送ってくれて、「全員可愛くて愛おしいね」って、あえて言ってもらいたい言葉を自分からコメントしてみたんです。そうしたら、温かい気持ちになったし友だちも素敵な返事をくれて、優しさが連鎖するなと思いました。
──日々感じるモヤモヤに対する小さな一歩として、どんなことができるでしょう?
この世界にはモヤモヤ=問題があるっていうことを、みんなが認めることがすごく大事だと思っています。指摘することにためらうカルチャーがあると思うのですが、まずは認めることで問題意識を持てるようになるはず。大きな行動に移すことは難しくても、社会を見つめて、日々考えたり話したりすることで、気持ちを表現できるようになっていくと思います。
2012年よりロンドン在住。雑誌やウェブメディア、広告などでイラストレーターとして活動。加えて、社会問題について考える記事もウェブメディアを中心に執筆している。2024年8月9日に、『ロンドンの片隅で、この世界のモヤモヤに日々クエスチョンしているよ。』(平凡社)が刊行された。