心身の疲れをリセットし、健やかな毎日を過ごすために、良質な睡眠をとりたいと願う人は多いはず。その一方、眠りに満足できない原因がぼんやりしていたり、自分なりにしてみた快眠対策がなかなか結果に繋がらないなど、客観視しにくい眠りに不安を感じることもあるのでは?
より良い睡眠への第一歩は、まず、自分自身の睡眠を知ることから。手軽に睡眠データを測定できる睡眠計測デバイスなら、そんな悩みに寄り添ってくれるかも。
計測した睡眠データを参考に、自分に合った睡眠を見つけるアドバイスを、睡眠研究のエキスパート、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究員の平野有沙先生に伺った。
心身の疲れをリセットし、健やかな毎日を過ごすために、良質な睡眠をとりたいと願う人は多いはず。その一方、眠りに満足できない原因がぼんやりしていたり、自分なりにしてみた快眠対策がなかなか結果に繋がらないなど、客観視しにくい眠りに不安を感じることもあるのでは?
より良い睡眠への第一歩は、まず、自分自身の睡眠を知ることから。手軽に睡眠データを測定できる睡眠計測デバイスなら、そんな悩みに寄り添ってくれるかも。
計測した睡眠データを参考に、自分に合った睡眠を見つけるアドバイスを、睡眠研究のエキスパート、筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構 主任研究員の平野有沙先生に伺った。
世界で一番睡眠時間が短い、日本の女性たち。家でも外でも働くことや、女性ホルモンが影響
理想的な睡眠のために。 可視化した睡眠サイクルに合わせて、体内時計の調整を
——睡眠記録をとり続けることで、良質な睡眠がとれるようになるのでしょうか?
睡眠を記録することは、眠りへの意識を変えるのに効果的だと思います。
まずは、決まった時間に起きなければならない日と、制限なく寝られる日において、睡眠時間にどれくらい差があるのかを確認してみてください。普段睡眠時間が足りているか否かが客観的にわかります。それぞれの間を探りながら、自分にとっての最適な睡眠時間を見つけていきましょう。
そして、加えて、自分の睡眠タイプ(クロノタイプ)も把握しておくことも大切です。
——自分の睡眠タイプ(クロノタイプ)とは、「朝型」「夜型」などでしょうか?
そうです。単純に朝起きるのが苦痛ではない、夜更かしが出来ない人は朝型です。逆に、朝起きれない、夜でもパフォーマンスを落とさずに夜更かしできる人は夜型と言えます。
「早起きは三文の得」と言いますが、それは朝型の人に言うことであって、夜型の人には当てはまりません。朝型でも夜型でも自分にあったサイクルで生活できていれば、問題はありません。気をつけたいのは、自分の睡眠タイプと、仕事や学校など社会活動をすべきタイムスケジュールがずれているときです。
平日の生活スケジュールが自分の睡眠タイプにあっていないことを、ソーシャルジェットラグ(社会的時差ボケ)と言います。夜型の人が普通の生活スケジュールで無理やり生活しているときも起こりますし、中間の睡眠タイプの人が早すぎる生活スケジュールで生活しているときも起こります。後者は特に若い世代に多く見られる傾向にあり、近年は普通の学生にとって、午前9時頃に開始される1限の授業は早すぎることが指摘されています。
睡眠記録を長期的に続けることで、 「睡眠時無呼吸症候群」など発覚のきっかけにも
——睡眠サイクルにいつもと違うパターンが現れていたら、過去の結果と照らし合わせて、その理由を自覚しやすくなりますね。では、睡眠記録を長期的に続けることで、病気のリスクを察知することも可能でしょうか?
自覚するのが難しい病気の発覚に、睡眠記録が役立つ可能性があると思います。例えば、睡眠時に無呼吸になったり呼吸が浅くなる「睡眠時無呼吸症候群」は、寝ている間のことなので自分自身では気づきにくい病気です。睡眠時に呼吸を十分にできていないと、血中酸素の数値が下がります。そのため血中酸素の数値を参考にすると、「数値が低いから、病院に相談してみた方が良いかも」などアクションのきっかけになるかもしれません。
また、睡眠時間や睡眠の質に問題があると、あらゆる病気のリスクを高めると言われています。代表的なものだと、癌、糖尿病、動脈硬化やうつ病などです。睡眠時間が足りていないと病気のリスクは高まりますが、必要以上に寝ればいいというわけではありません。睡眠記録を通して、自分にとってベストな睡眠のとり方を知っておくことは、とても良いことだと思います。
【睡眠悩み別】快眠に導くアクションと心構え
睡眠記録によって自分の眠りの傾向が掴めたら、それに合わせて、良質な睡眠に導く行動を毎日のルーティンに落とし込もう。ただし、念頭に置いておきたいのは「主観的に感じている睡眠悩みは、日中のパフォーマンスに影響していなければ、問題として捉えなくても良い」ということ。
「主観的な眠りと客観的な眠りは、一致しないものです。『寝つきが悪い』『眠りが浅い』などは個性の一つ。それらの悩みによって、日中どうしても眠くなってしまうなどのパフォーマンス低下につながらなければ、ネガティブに捉える必要はありません。まずは睡眠時間が十分なのかを知ること。加えて、自分の睡眠タイプは朝型なのか、夜型なのかを理解した上で、問題がある場合には対処しましょう」と平野先生。
より良い睡眠を目指すために知っておきたい、睡眠悩み別に見る生活習慣や眠りの基本とは?
悩み① 夜はなかなか寝付けず、目覚めが悪い
〈解消法〉
朝起きたら光を浴び、決まった時間に3度の食事をとる。睡眠前から徐々に部屋を暗くして。
眠気を促すホルモン、メラトニンは光により抑制されるので、朝起きたら、カーテンを開けて朝日を浴び、身体を目覚めさせましょう。
また身体は、食事をとることで「今はアクティブに行動する時間なんだ」と認識します。朝・昼・晩と、毎日なるべく決まった時間に食事をとることも効果的です。夜になると再びメラトニンの分泌が始まります。部屋が明るいと身体は「まだ昼間なんだ」と勘違いします。眠る時間が近づいたら、部屋の中を暗くすることで、スムーズに眠りやすくなります。
入眠できないとき、アルコールに頼るのは逆効果。睡眠の質を下げてしまうので気をつけましょう。
悩み② 昼間の眠気をどうにかしたい
〈解消法〉
夜の睡眠が浅いときは、足りない睡眠を補うような形で昼寝を。寝すぎには注意!
悩み③ 睡眠時間は確保できているはずなのに、満足できない
〈解消法〉
生活リズムがバラバラだと、睡眠の質に影響。寝る時間と起きる時間はだいたい一定に。
睡眠データを見るとき、入眠した時間と起床した時間が、毎日一定の時刻であるかチェックするのも大切。
例えば毎日8時間の睡眠がとれていたとしても、時間がバラバラではなく、一貫したパターンであるほうが質の高い睡眠をとるのに重要だと考えられています。というのも、身体に備わる体内時計にズレを生じさせないようにするため。
平日の睡眠負債をとり戻そうと、週末に寝溜めすることも、体内時計を狂わせる原因になります。
悩み④ 「良い」とされる睡眠状況と比べたとき、違いがあると不安に思う
〈解消法〉
睡眠は自分軸で捉えること。周りと比較するのではなく、身体の声に耳を傾けて。
必要な睡眠時間や朝型・夜型タイプなど、睡眠には個人差があるもの。指針にすべきは自分の心身の状態です。疲れやすかったり、日中のパフォーマンスが低下しているときは、睡眠に問題がないか注意しましょう。
「睡眠のリズムが崩れたとしても、すぐに何かが起こるというわけではなく、少しずつの無理の積み重ねが将来の不調につながる。自分の眠りを俯瞰することでその“少しずつの無理”に目を向けられるようにしてもらいたい」とも話してくれた平野先生。
現在、睡眠サイクルだけでなく、体温から自分の体内時計を可視化するデバイスの開発も進んでいる。可視化された睡眠データと体内時計データを活用できるようになれば、テクノロジーの力で睡眠と健康をサポートする可能性がますます広がりそうだ。
自分の身体が求めている眠り方を読み解く、睡眠計測デバイスという存在。睡眠記録が教えてくれる今の自分を受け止めることで、理想の生活リズムのために何ができるのか、向き合っていくきっかけに。良い眠りは充実した毎日を送るためのベースとなるものだから、テクノロジーを上手に活用していきたい。
東京大学理学部生物化学科卒業。人々が健やかに眠れる社会の実現を目指す、世界トップレベルの睡眠医科学研究拠点である筑波大学 国際統合睡眠医科学研究機構に所属。概日時計と呼ばれる体内の時計システムの設計原理を専門に研究。いまだ多く残される睡眠の謎に挑む。