子どもへの性教育のあり方が議論されているけれど、大人たちはどうだろう? 生物学的な身体の仕組みだけではなく、セックス、パートナーシップ、人間の尊厳、多様な性のあり方など……さまざまな知識を十分にインプットできているかというと、自信がないという人もいるのでは。
性について学ぶことは、自分の人生における選択肢を増やし、主体的に生きることにつながるはず。大人になってからも学びを続ける、芸人のバービーさんと、性教育を通じて、誰もが自分らしく生きる社会の実現に取り組むNPO法人ピルコンの染矢明日香さんに「大人の性教育」について、そして参考にしている情報源について話を聞いた。
子どもへの性教育のあり方が議論されているけれど、大人たちはどうだろう? 生物学的な身体の仕組みだけではなく、セックス、パートナーシップ、人間の尊厳、多様な性のあり方など……さまざまな知識を十分にインプットできているかというと、自信がないという人もいるのでは。
性について学ぶことは、自分の人生における選択肢を増やし、主体的に生きることにつながるはず。大人になってからも学びを続ける、芸人のバービーさんと、性教育を通じて、誰もが自分らしく生きる社会の実現に取り組むNPO法人ピルコンの染矢明日香さんに「大人の性教育」について、そして参考にしている情報源について話を聞いた。
【芸人・バービーさん】自分で自分の身体の舵を取るために、性を学ぶ
1. 人の基準ではなく、自分が「いいな」と思ったものを選ぶ
──わからないことがあったとき、どのようにして情報収集をしていますか?
まずはインターネットで検索。それから、その分野に詳しい医師のクリニックへ行き、実際のところどうなのかを聞いています。ネットで拾った情報は、整理されていなかったり、鵜呑みにしないほうがいいものもあります。なので、一応ネットでも調べますが、最終的には専門家に話を聞いて、そのうえで自分が「いいな」と思ったものを選択します。
2. 性について本当は話したい、という人は多い。学び合える場がもっと必要
──バービーさんといえば、実際に婦人科に足を運んで、複数の専門家の方に話を聞かれている印象が強いです。やはりいろんな意見を聞くことは、大事にされているんですね。
私は困ったら、すぐ人に聞いたり調べたりしますが、意外とそうではない人が多いと気がついたのはYouTubeを始めてからです。テレビでは話していないことをやりたいと思っていたので、まず生理用品に関する動画を公開したら、予想以上に困っている人がいて。ナプキンの使い方を知らない人もかなりいました。粘着面をお股に貼っていた、捨て方を知らなくてサニタリーボックスの上に置いていた、という人も。
──わからなくても、聞けなかったのかもしれませんね。
コメント欄に「今まで誰にも相談できませんでした」とあって、そこで優しく噛み砕いた発信を必要としている人がいるんだと気がつきました。婦人科を訪問する動画も反響があり、動画を見てクリニックを受診した方がいたんです。後から、実はその方の症状がかなり深刻だったと聞いて「やってよかった」と思いました。怖くて足踏みしている人のために自分の経験や調べてきたことを伝えよう、それが誰かの気づきになるといいなと今は思っています。
3. 自分で調べて学んで、主体的に情報を探しにいく
▼バービーさんが、学び直しに活用している&したいのは……
【NPO法人ピルコン代表・染矢明日香さん】心も身体も人間関係も良好な状態を築くために、性を学ぶ
1. 性的同意や性にまつわるコミュニケーションに、自信がない大人が多い現状
──性教育について長年啓蒙活動をされていますが、大人がどれくらいの性知識を持っているのかという点で、最近印象的だったことはありましたか?
「性と恋愛2023」(調査元:ジョイセフ)という調査で、若い世代で「性的同意」について大切だと認識している割合は高いものの、「性的同意とはどういうものか、正直わかっていない」という回答が男性は4割を超えていたことです。同意が取れているか自信がない、という回答も多くありました。
──大切だと思いつつも、性的同意への理解が不足している、自信がないのが現状なのですね。
それはきっと、性別問わず普段から自分の気持ちを大事にしながら意見をすり合わせる経験が少なかったからではないかと思います。男性なら積極的に、女性なら受け身といった固定観念に縛られるのではなく、自分はどうしたいのか、互いの心地よい状態を探り、じっくり向き合う必要があると思います。
2. 性はひとりで学ぶものではない。仲間と対話を重ねる過程も学びになる
──そもそも、染矢さんが性について学び直そうと思ったきっかけは?
もともと性について興味がある方で、保健体育の授業もワクワクしていました。ですが、ボディイメージや性行為、パートナーとの関係など自分が知りたかった情報は教えてもらえず。大学3年生の時、意図せず妊娠し中絶を選択したことで、性の知識不足によって人生が大きく左右されることを実感しました。
その後、大学の授業で中絶について調べる機会があり、当時日本での中絶件数が年間30万件もあると知って衝撃を受けたんです(令和5年度の中絶件数は約12万件:厚生労働省「衛生行政報告」より)。周りの友人にも、性行為についてパートナーと話し合えないことに悩んでいる子がいて、性教育に問題意識を持つようになりました。
──学び直すにあたって、どのような行動をされましたか?
私自身は、産婦人科医にセミナーを開催してもらったり、性教育にまつわるイベントに参加したりしていました。そこで性教育に関心の高い仲間ができ、「人生をデザインするために性を学ぼう」と視野が広がったと思います。
ピルコンに入ったばかりのスタッフに聞くと、YouTubeやInstagramなどSNSで性について発信しているアカウントをフォローすることから始めている人が多いです。そこでコメントをしたりイベントに参加したり、話せる仲間ができるといいですよね。性のことって、ひとりだけで学ぶものではないなと思います。
3. パートナーや友人とも。性教育は、心地よい関係性を構築するための知識
──染矢さんご自身は性教育を学び直すことで、どのような変化がありましたか?
知識が増えると選択肢を持てるので、自分の人生に必要なことだったと思います。たとえば生理痛やPMSなど、身体が十分なパフォーマンスを発揮できない時期を理解して、それに対応する方法を選ぶ。私の場合は避妊具のミレーナを入れていたり、人によっては低用量ピルを飲んでいたり。快適に生活するための自分に合った方法を選択できるようになると思います。
▼染矢明日香さんが、学び直しに活用しているのは……
中高生や保護者、教育関係者向けの性教育講座や情報発信や、政策提言の活動を行う。公認心理師、思春期保健相談士。慶應義塾大学SFC研究所上席研究員。著書に『となりのLGBTQ+ ~それぞれ「性」のあり方を自分らしく生きる14人の物語~』『マンガでわかる オトコの子の「性」』、『はじめてまなぶ こころ・からだ・性のだいじ ここからかるた』など。











