自分らしく生きていくためにわかっておきたい、身体のことや、健やかに過ごすための選択肢、ジェンダーとセクシュアリティ、人との関係性の築き方に、人間が持つ尊厳など。それらを改めて知るために、「包括的性教育」を学び直している大人たちがいる。
どんなきっかけで学び始め、どのようにして情報をインプットしているのか? 「大人の性教育」を実践している6名に、話を聞いた。
自分らしく生きていくためにわかっておきたい、身体のことや、健やかに過ごすための選択肢、ジェンダーとセクシュアリティ、人との関係性の築き方に、人間が持つ尊厳など。それらを改めて知るために、「包括的性教育」を学び直している大人たちがいる。
どんなきっかけで学び始め、どのようにして情報をインプットしているのか? 「大人の性教育」を実践している6名に、話を聞いた。
【髙橋怜奈さん】自分の異変や辛さに早めに気づき、大切にするための行動をとれる
性教育は人権を学ぶ分野でもあるため、私自身も学びを通して自分をもっと大切にできるようになりました。知識を得たことが自己肯定感を高めるきっかけになったという実感があります。大人は“包括的な知識が足りてないという認識”と“アップデートの必要性”を広めなければいけませんし、子どもには小さなときから、“自分の身体や権利を知る”ことの大切さを伝える必要があると思っています。
産婦人科医としてクリニックで患者さんの診療をしていると、自分のデリケートゾーンに触ったことがない方も多いのが現状です。自分の身体を確認することは、性教育の知識を得ることと同じくらい大切なことだと思っています。
山王ウィメンズ&キッズクリニック大森にて院長を務める。親しみやすい人柄で、YouTubeやTiktok、XなどのSNSを通して、性や身体に関する情報発信を行う。元プロボクサー。
【三浦ゆえさん】“よくあること”と蓋をしてきた現実を変えていく
仕事の関係でセクシュアルプレジャーについて学ぶなかで、性に関するヘルスもライツも阻害する「性暴力」の問題の根深さに気づき、学び直そうと思いました。実際に始めてみると、学び直しというより、知らないことだらけ。なぜコレが性犯罪として裁かれないの? なぜ性被害者が責められるの? などです。
自分が“よくあること”と蓋をしてきたなかに、性暴力や深刻なセクハラがあったことにも気づきました。性教育が不十分で、多くの人が性暴力の実態について知識がないように“させられている”現状は、早々に変えていかなければならないと思っています。
女性の性と生をテーマに取材、執筆を行うほか『50歳からの性教育』(村瀬幸浩ら著、河出書房新社)、『性暴力の加害者となった君よ、すぐに許されると思うなかれ』(斉藤章佳・にのみやさをり著、ブックマン社)、『ぼくたちが 知っておきたい生理のこと』(博多大吉・高尾美穂著、辰巳出版)など編集協力多数。著書に『となりのセックス』(主婦の友社)、『セックスペディアー平成女子性欲事典ー』(文藝春秋)がある。
【フクチマミさん】性教育は、自分や他者を大切にするための学び
娘が5歳のとき、「この子には自分が感じてきたような性に関する不安を持たずに生きてほしい。怖い思いや辛い経験をしてほしくない」という気持ちになりました。そのためには性教育が必要と思ったものの、「え、何から? どうやって?」と、実は娘に説明できるほどの知識を持ち合わせていないことに気づいたのが、学び直しを始めたきっかけです。
実はそれまでずっと、性器や性的な欲求は、汚くて恥ずかしいものだと思っていました。自分の身体には“はしたない”ものがついていて、“不潔”な気持ちがあると感じ、苦しかった。でも学び直すことでそうではないと分かり、心が軽くなって自分自身を大切に思えるように。性教育は「自分や他者を大切にするための学び」だと気づきました。
【みっつんさん】対話を通じて安心して暮らせる社会をつくるために
役者としての初舞台は、70年代西ドイツの青少年向け性教育を題材にした芝居でした。自分が十分な性教育を受けていなかったことに、芝居をしていく中で気づきました。同性愛を肯定的に描いた内容に救われ、自分を受け入れるきっかけにも。本を読んだり舞台を見たり「性を知ること」は自他を守ることに繋がります。
知れば知るほど、自らの無知さに気づかされながらも、大人になってからでも学び直せることを実感。性について“正直に恥ずかしがらず”自分の言葉で語れる未来をつくるには、今の大人世代が学び直すことが欠かせません。世代を問わず誰もが加害者にも被害者にもならないために、知識を共有し、対話を通じて安心して暮らせる社会を、共につくっていきたいと思っています。
【花盛友里さん】自己肯定感が生まれ、唯一無二の素晴らしい存在だと気付く
学び直しをするまで、性教育はセックスの仕方を学ぶものだと思ってしまっていました。けれど、性を学ぶということは自分を知り、守り、大切にするということ。それによって自己肯定感が生まれ、私たちは一人ひとり、唯一無二の素晴らしい存在だということに気付きました。学ぶことで、人付き合いや恋愛において有害な関係である時に一歩離れられたりと、日常の中に活かせることがたくさんあると実感しています。
大阪府出身。雑誌や広告を中心に活躍中。女の子の「ありのままの姿」を切り取った作品で注目を集め、『脱いでみた。』シリーズをはじめとして作品づくりを続けている。2021年にアンダーウェアブランド「STOCK」を立ち上げるなど、幅広く活躍。
【羽佐田瑶子さん】権利を知ることで、自分らしい生き方を模索できる
自分自身や友人を通じて、10代の頃から性のあり方や恋愛について悩むことがありました。そのなかで#me tooは大きなきっかけでした。自分にも身に覚えのある出来事が思い出され、性について話すこと=恥ずかしいことという教育を受けたままでは臭いものに蓋をするようで、生き苦しいまま。主体的に自分の人生を選ぶためには学び直す必要があると思いました。
子どもが生まれ、性教育についてより深く学ぶようになり思うのは、性教育とは恋愛やセックスの話に限らないということ。自分を知り、相手を思いやり、関わりや多様な価値観も学べるものだと思います。まだまだ日本では、幼い頃からジェンダー規範を押し付けてくる風習が残っていますが、私の身体も心も私のものなんだ、と権利を知ることで自分らしい生き方を模索できるものだと思います。











