テキスタイルの廃棄物を新たなテキスタイルに。【クヴァドラ】から柳原照弘デザインの新作「Ame」が登場

デンマークのテキスタイルメーカー、クヴァドラが去る6月に米国最大級のインテリア見本市、ネオコンで発表した新作テキスタイル「Ame(アメ)」の日本での展開がスタートした。デザイナーの柳原照弘が手がけたこのテキスタイルは、クヴァドラにとって繊維廃棄物をリサイクルした初の製品となる。

デンマークのテキスタイルメーカー、クヴァドラより、繊維廃棄物をリサイクルした新作インテリアテキスタイル「Ame(アメ)」が登場。日本での展開がスタートした。

デンマークのテキスタイルメーカー、クヴァドラが去る6月に米国最大級のインテリア見本市、ネオコンで発表した新作テキスタイル「Ame(アメ)」の日本での展開がスタートした。デザイナーの柳原照弘が手がけたこのテキスタイルは、クヴァドラにとって繊維廃棄物をリサイクルした初の製品となる。

デンマークのテキスタイルメーカー、クヴァドラより、繊維廃棄物をリサイクルした新作インテリアテキスタイル「Ame(アメ)」が登場。日本での展開がスタートした。

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デザイナーの柳原照弘が「Ame」で参考にしたのは、平安時代の宮中で着物を重ねる際の配色マニュアルとして定着した「かさねの色目」。

1968年に創業したクヴァドラは、世界中の建築家、デザイナー、個人消費者向けに上質でモダンなテキスタイルや関連商品を販売しているブランド。ラフ・シモンズやオラファー・エリアソン、皆川 明などといったデザイナーやアーティストとのコラボレーションでも知られている。同社は環境への配慮を大きく掲げており、2025年までに85種類のリサイクル繊維製品を展開し、それにより売り上げの30%を占めることを目標に掲げている。

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インテリアテキスタイル「Ame」 素材:ポリエステル100%(リサイクル繊維廃棄物) 色展開:12色 幅:140cm

「Ame」はテキスタイルの生産過程で生じる繊維廃棄物から作られているのが特徴。これらの繊維は回収・分別・裁断ののち化学分解して単一素材にリサイクル。その後、ポリエステルチップに再重合し糸に紡いでいく。これによって、クヴァドラにとっては初めて、パートナーサプライヤーの工場で出た繊維を再び自分たちでテキスタイルにする「Textile to Textile」の循環が実現した。

今回製品化に成功したリサイクルポリエステルは、バージンポリエステルと同等の性能を持ち、椅子などの張り地として使用するにも十分な強度や柔らかさを備えている。柳原は既にクヴァドラで「Autumn(オータム)」という、使用済みペットボトルから作られた再生ポリエステル糸で構成されたテキスタイルを発表しているが、今回はさらに最先端の技術を駆使した糸を使ったテキスタイルに挑戦したことになる。

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「Ame」は日本の刺し子からのインスピレーションのもとにデザイン。先日、神戸で開催された発表会では、刺し子を施した履物や着物の展示も行われた。

「Ame」は、柳原照弘が日本の伝統的な繕いの技法としておなじみの刺し子に着想を得てデザイン。太さの異なる2種類の系で織ることで生み出したこの刺し子柄は、ステッチと下地に対照的な2色を使うことでさらに強調されている。柳原は「物を捨てることなく、手入れしながら長く美しく使いつづけるという日本の思想は、『Ame』の特徴に通じるものがあると感じました。色を重ねたり、刺し子の繊細な精度を現代の織りの技術に合わせることに重点を置きました」と話す。

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ステッチと下地の2色の対比によって刺し子の雰囲気を見事に表現。

カラーパレットは、平安時代の宮廷の人々が階級や季節の色合いの変化を表現するために、さまざまな色の着物を美しく重ね合わせた「かさねの色目」から着想を得たそう。この印象的で詩的なカラーパレットには、シルクロードで出合った織物と技術、そしてそれらが日本の伝統的な織物に与えた影響に関する柳原の広範な研究が反映されている。

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現代的な空間に柔らかさを与えてくれるカラーリング。

近くで見ると、手で糸を刺したようなパターンが美しい「Ame」。グレーやグリーン、ブルーのグラデーションにブラウン系の色を加えた全12色は、現代のインテリアにもぴったりのカラーリング。温かく、明るく、落ち着いた雰囲気を醸し出してくれる。

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サステイナブルやリサイクルという点で大きな意味があると同時に、修繕の跡に普通の農民たちの美意識やこだわりが表れた着物。

先日、このテキスタイルの日本での発表会が、神戸にある、Teruhiro Yanagihara Studioの運営するギャラリースペース、VAGUEで開催された。ここでは「Ame」に加え、柳原がこれまで手がけた「Autumn」と、コーティングテキスタイル「Haku(ハク)」の全ラインナップとともに、「Ame」の開発に際して影響を受けた古布などを展示。木綿が貴重だった時代に破れたり穴が開いたりした布を刺し子で補強しながら使い続けた襤褸や、大麻布の研究者として知られる吉田真一郎(近世麻布研究所代表)から借りた大麻布や藍染の大麻繊維の糸など、魅力溢れる貴重な資料が並んだ。

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履物関づかによる、「Ame」を使った草履。

また、ネオコンでの発表時にも展示された、京都の履物職人、関塚真司による履物関づかが「Ame」を使って製作した草履も展示された。

国連の持続可能な開発目標12「つくる責任、つかう責任」に沿った製品設計をするクヴァドラだけに、「Ame」はそれ自体リサイクル可能。サステイナビリティに関するクヴァドラの取り組みについては、彼らの公式サイトに詳しく紹介されているので、ぜひ読んでみてほしい。


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