2021.06.19

今月のゲスト:古川直子さん【シオリーヌのご自愛SESSION 第4回】

助産師であり、性教育について発信するYouTuberであるシオリーヌさんのトークセッション連載。今回は、セクシュアルアイテムでおなじみのTENGAのグループ会社、TENGAヘルスケアが運営するティーン向けの性の情報サイト「セイシル」の古川直子さんをゲストにお迎え。TENGAヘルスケアの熱心な取り組みに、思わず感激!

TENGAグループだからできる、「適切な性の伝え方」

今月のゲスト:古川直子さん【シオリーヌのの画像_1

Profile
シオリーヌ●助産師/性教育YouTuber。総合病院の産婦人科病棟や精神科児童思春期病棟での勤務経験も。著書に『CHOICE 自分で選びとるための「性」の知識』(イースト・プレス)、『こどもジェンダー』(ワニブックス)。

Profile
ふるかわ なおこ●助産師として総合病院の産婦人科病棟に勤務後、2019年にTENGAヘルスケアに入社。ティーンをターゲットとした性の情報発信サイト「セイシル」に立ち上げから携わる。性教育に関するシンポジウムへの登壇も。

答えを決めつけない! TENGAが発信する性教育

シオリーヌ(以下S) 「セイシル」が始まったのは2019年の12月でしたね。初めて見たときは、とても感激しました。「こういうプラットフォームが必要だったな」と。日本人なら誰もが一度はその名を聞いたことのあるセクシュアルアイテムメーカーのTENGAが、性教育を始めてくれたというのは、すごく意義があることだと思う。

古川直子さん(以下F) ありがとうございます。私はもともと、シオリーヌさんと同じように、病院の産婦人科病棟で助産師として働いていました。ずっと性教育に携わりたいと思っていて、ちょうど「セイシル」のプロジェクトが立ち上がった頃に、今の会社であるTENGAヘルスケアに転職しました。もともとTENGAという会社には、2005年の創業当時から、正しい性の知識の普及・啓蒙をしていこうという理念があったんです。性教育関連の学会に参加する中で、助産師さんや医師から、生徒にマスターベーションを教えるのが難しいという声を聞き、「セイシル」を立ち上げることになりました。

S 「セイシル」のすごくいいところは、「答えを決めつけない」というのが徹底されているところ。私はYouTubeで情報発信していますけど、本当は「こうしないとダメ」みたいな強い表現を使ったほうが、動画を見てくれる人の満足感も高まるし、ビュー数も稼げるんですよね。でもやっぱり、その人の道筋を決めてしまうような断定的な表現はしたくない。だから、「セイシル」の姿勢に共感します。

F もちろん専門家に聞いた正しい性の知識をベースにしていますが、どうチョイスして、解決につなげていくのかは、人によって異なりますよね。そこで「セイシル」では、ひとつの相談に対して複数の答えを提示するようにしているんです。自分にしっくりくる回答を生かしてもらえればと思って。

S ほかにも、若い人向けのサイトということで、気をつけていることはありますか?

F 気軽に見に来られるような場所を目指しています。たとえば、性表現ってどうしても生々しくなってしまったりするので、親しみやすいイラストで伝えたり。でも内容は決してオブラートには包まず、大人にも響くようなものにするというのを大事にしていますね。

セクシュアルアイテムのメーカーだからできること

S 実はTENGAグループって、「生活における性の満足感が、人生をよりよくしていく」ということに、すごく真摯に取り組んでいる会社なんですね。本当に、「なんて真面目な会社なんだ!」って驚きました。これまであった会社に対するイメージが変わりましたね。

F 私も入社するときに友達に反対されたりしました(笑)。でも今では、だからこそできることがたくさんあると思っています。TENGAというブランドは、若年層での認知度が8割くらいあるんです。そういう会社が性教育をやるというのは、すごくインパクトもあってキャッチー。今まで教育界ではなかなかできなかったことも、TENGAならできると思っています。

S こういった活動は、いくら熱意があってもお金や人的資源に余裕がないと、やっぱり限界がある。その点、企業だと資金力もありますしね。

F もともとTENGAヘルスケアの取締役は、障害者の性や高齢者の性など、今までスポットライトを浴びてこなかった性への問題意識を持っていたという経緯があって。そういう課題にフォーカスするのって、NPOだとなかなか難しいですよね。

S わかる! 時間もお金も、ものすごくかかる。本当に大事な問題なのに、すごくタブー視されていて、助成金もそう簡単には出ないですよね。それにしても、「セイシル」のメインターゲットは中高生ですが、会社の主力商品は成人向けですよね。「セイシル」の活動は顧客開拓にダイレクトに結びつかないのではと思うけど、会社としては大丈夫なんですか?

F そうですね、会社の名前も知ってもらえたらいいなとは思っているけれど、それは全然、主たる目的じゃないんです。まずは「セイシル」で正しく健全な性知識を得て、その上で大人になったら、TENGAの製品を楽しんでくれたらうれしいですよね。

S 性の知識って、その人の人生をダイレクトに左右する場合もあるから、そういう情報を発信していくやりがいはありますよね。

F 本当にそうですね。以前、「セイシル」を見て心当たりがあって、病院に行ったことで婦人科疾患が見つかったという子から「おかげで助かりました」という声をもらったことがあって。「セイシル」が、そのくらい大きな出来事のきっかけになりうるというのは、責任もやりがいも感じますね。

S 最近、性に関する商品を作っている企業から、性教育に携わりたいという相談を受けることがすごく増えて。「セイシル」がとてもいい影響を与えているんじゃないかな。性にかかわる企業が性教育をやっていこうという流れができつつある。これがさらに広がるといいですよね。

F ありがたいです。もっとみんなで連携していきたいですね!

『セイシル』

TENGAヘルスケアが運営する、ティーンがメインターゲットの、性教育を学べる情報サイト。楽しく性にまつわる悩みを共有・解消できる。詳しくは→https://seicil.com/

 

SOURCE:SPUR 2021年7月号「シオリーヌのご自愛SESSION」
photography: Kae Homma text: Chiharu Itagaki

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