S その状況下でも「自分たちのスタイル」を貫くYouTuberもいますが、おるたなChannelはどういうスタンスなのでしょうか。
N 初めは僕らも「楽しければいいじゃん!」というところがあったように思いますね。でも続けていくうちに、誰が見ていて、何が多く見られているのか、というデータが集まってきて、僕らのチャンネルは女性や家族が多いということがわかったんです。僕らは「みんなを喜ばせることが、長く愛されるコンテンツを生み出す近道」だと考えているので、自然と視聴者が喜んでくれるものの比重が大きくなった結果、今のスタイルになっています。
S そうしてそれぞれのカラーが出てくるんですね。変わることに抵抗はなかったですか?
N むしろ、変化していくことが重要だと思っているんです。一回成功体験ができると、それから離れられなくなったりするけれど、周りのYouTuberも時代に合わせて変われる人が強い。僕たちは続けることにプライドを持っていますが、その手段にはあえてプライドを持たないようにしています。シオリーヌさんは発信するカテゴリーが専門的で、僕らがやっていることと異なる気遣いが必要になりそうですね。
S 私はまだYouTubeを始めて2年なのですが、その間にも社会問題への関心が高まったと実感しています。前はそういう内容はあまり視聴数が伸びなかったけれど、今は関心を持ってもらえるように。
N 視聴者のリテラシーも高くなってきていますよね。10年前は、YouTuberはお遊びでやっているイメージを持たれていたけれど、今となっては視聴者の数だけ影響力もあるから、「お手本」にならないといけない部分さえある。
S 私も助産師を代表しているつもりはないけれど、視聴者からは「助産師として」の意見を求められますから、責任を感じます。YouTuberが影響力を持っているからこそ、発信する側が社会問題など、今知っておくべきことを勉強できる講座があるといいですよね。
N 確かに、炎上対策だけでなくそういった研修もあるといいですね。やっぱりあらゆることが世界基準になってきているから、僕らもそれについていくために勉強しないといけない。でもそうして勉強したことは次の動画から反映できるという身軽さも、YouTubeというメディアの強みですね。
S そうですね、確かにそこは他の大きなメディアとの違いです。
自分と異なる意見や、下の世代の声を大切に
N 僕らって、インターネットを一般家庭でも普通に使えるようになった頃に小学生だったり、ネイティブじゃないけれど若いときからギリギリ触れることができた世代だと思うんです。だからこそ、自己中心的な大人にならずに、常に若年層に寄り添い、アップデートする必要があると思いますね。
S 狭間だからこそ、両方の意見にちゃんと耳を傾けられるようにしていきたいですよね。ないとーさんはYouTuber限定のシェアハウス「レイワ荘」を運営されていますが、年下の世代の意見に触れることを意識しているんですか?
N そうですね。YouTuberって意外と孤独だったりするので、同業者で情報をシェアできる環境をつくりたいと思ったのがきっかけです。「レイワ荘」があるおかげで、年下の子たちから僕らが教わることもたくさんあります。
S 確かに自分一人だけでやっているときってしんどいですよね。内容も「自分の価値観」だけが反映されがちだけど、ほかの人が入ると気づきもあるのでありがたいです。でも、自分のキャリアが長くなればなるほど、下の世代の意見を素直に聞くのって難しくなりませんか。
N もちろんそれはありますね。でもそのプライドを捨てないと変われないですから。素直でいたいのに、「あ、小さなプライドに固執してる」と気づくと、自分のことが嫌になります。
S わかります。反論のコメントをもらったら、読んだときにはカチンときてしまったりする。でも冷静になって読み返すと「確かにそうだな……」と思うことがあるから、意図的にプライドを捨てるのは大切だと思います。
N そのプライドを捨てられないと、逆に生きづらいですよね。ちょっとずつ崩していかないと。
S 教えてもらえる、指摘してもらえるってことは、「この人は変わってくれるかも」と思われているからで、言われなくなったら終わりだなとも思います。
N そうですね。まさに、「いじりにくいやつ」になったら終わりだなって僕も思ってます(笑)。たとえば笑福亭鶴瓶さんのように、年下からも慕われて、いつまでもいじられる人間でありたいですね。