S この質問は本当によく聞かれますね。私の著書でも取り上げましたし、YouTubeの視聴者さんからも「どう答えたらいいのですか」とよく聞かれます。私たち大人もちゃんとした性教育を受けてきていないから、突然聞かれるとどう説明すればいいのかわからず、たじろいでしまいがち。木下さんはどう答えたんですか?
K 息子は生き物がすごく好きなので、動物の交尾や魚の繁殖行動のことはよく知っていたんです。だから、「人間も動物と同じように交尾をするんだよ。人間の場合は性交といって、男性のおちんちんを女性のお股のところにある膣という場所に入れるんだよ」と説明しましたね。どうやら息子は、赤ちゃんはどこかから突然ママのおなかにやってくると思っていたようで、人間も動物と同じなんだと知って納得したようでした。
S 「コウノトリが運んでくるんだよ」「キャベツ畑で生まれるんだよ」とごまかしたりしがちですが、木下さんは事実をそのまま説明したんですね。すばらしい!
K もともと、息子には何でも包み隠さず説明していたんです。息子が2歳のときに前妻と別居してその後離婚し、僕はシングルファーザーになりました。そのときも、何でパパとママが離れて暮らしているのか、息子には全部話していました。だからこそ、性の話に関しても嘘偽りなく話せたのかな。
S なるほど、ちゃんと話し合える関係性ができていたんですね! 一度ごまかしてしまうと、あとからその嘘を撤回するのが逆に大変になってしまったりしますよね。たとえ、その場ではうまく答えられなかったとしても、嘘をついたりごまかしたりせずに伝えるのが大事なのだろうと思います。
K 実は娘が生まれたとき、当時5歳だった息子も出産に立ち会ったんですよ。
S それはすごい!
K 人が生まれてくるのがどれだけ大変なことなのか、幼いうちに実際に見て理解することで、大きくなっても誰かを傷つけたりしなくなればいいなと思って。それに、女性がこれだけつらい思いをして赤ちゃんを産んでいると知っていれば、「女性は家で子育てをしていればいいからラクだな」という偏った認識を持つことにはならないと思うんです。当日は息子も、鬼気迫る表情で声援を送ったり、妻の口もとにスポーツドリンクを運んだりしていましたね。
S 息子さん、分娩の雰囲気にのまれて固まってしまわなかったのはすごい! 立ち会っていて、気が遠のいてしまうお父さんも結構いるくらいなのに。
K そうですね、夜遅い分娩になったんですが、頑張ってくれました。立ち会いを許可してくれた妻にも感謝ですね。「子どもたちには何でも包み隠さず伝える」というのは、僕と妻の共通認識なんです。だからこそ実現できたことなのかもしれません。
子どもの前で、あえて弱い自分を見せる
S 木下さんは、著書で「子どもの前で、自分の弱い部分を意識的に見せている」と書いていますよね。すごく印象的でした。本当に大事なことだと思います。
K 子どもたちがつらいときに、家で悩みを吐き出せるようにしておきたくて。悩むのは普通のことなんだというのを行動で示すために、子どもたちの前であえて弱音を吐くようにしています。僕も離婚をしたときには、実家にものすごく助けられましたから。
S 自分の親の姿って、ものすごく影響が大きいですからね。子どもの頃は、親は完璧な大人だと思いがちですけど、弱みを見せてくれると「普通の人間なんだな」と安心できそう。
K なかなか酷ですけどね、TVの生放送を終えて帰ってきて、「今日は全然ウケなかったよ……」と子どもに打ち明けるのは(笑)。
S 人に弱みを見せるのは、相手が誰であってもなかなか大変ですよね。特に男性は、なにかと「男たるもの、強くあらねば」と思い込まされていることが多いのでは。木下さんは、そういう葛藤はないのですか?
K 僕は特にありませんね。やっぱり、離婚を経験したのが大きかったのかもしれない。最初は周りにどう思われるかと思い悩みましたが、いざ離婚してみたら、誰も僕のことに興味なんかない。「離婚した? ふーん、そうなんだ」で終わる話。それで、周りを気にする気持ちや変なプライドがなくなって、吹っ切れました。
大変だった思い出が未来の自分を支えてくれる
S 子育て中のストレスは、どうやって解消しているんですか?
K いま、僕はあまり子育てに不満やストレスを感じていないんです。これは本当に妻のおかげですね。とはいえ、子育てをしていると、ショッキングな出来事がしょっちゅう起こる。子どもが牛乳をぶちまけたとか、ティッシュを全部出しちゃったとか(笑)。僕はそういうのを全部メモしています。写真のフォルダにも「悲惨な光景」という項目を作って撮りだめしています。そのときは大変でも、半年後くらいに振り返るとめちゃくちゃ笑えるんですよね。
S 「このとき、ヤバかったな」と笑えますものね。そこで一歩距離を置いて、客観性が生まれるのがすごくいい。これは子育てに限らず大切なことですね。
K 本当にそうだと思います。喜怒哀楽の「怒」や「哀」は、ため込んだままでいると負の感情にしかならないけれど、誰かに話すと笑ってもらえる。「怒」や「哀」こそいいネタになるんです。だから僕は、嫌なことがあるたびに「よし、エピソードトークのネタゲット!」と思うようにしています。そのときはつらい出来事でも、あとから振り返ればきっといい思い出になる。未来の自分を助けてくれるツールになりますよ。
S つらいことも笑いのネタに昇華する。これ、すごく素敵なご自愛スキルだと思います。
K 気持ちに余裕がないとなかなかできないことですけどね。でも実は、子育てで笑いを生むちょっとしたテクニックはたくさんあるんです。ちょうど、それをまとめた本が発売になるので、ぜひ!