2023年7月20日に開幕に控える大舞台、2023 FIFA女子ワールドカップ。サッカー愛の深い二人が、日本と海外のそれぞれの最注目プレーヤーを選出。またマンチェスター・シティで活躍する長谷川唯選手のインタビューもお届け。開催前にマークして!
2023 FIFA女子ワールドカップでは、この選手に注目!
「WE Love 女子サッカーマガジン」主筆 石井和裕さんが日本のプレーヤーを選出!
世界の女子サッカーの勢力図が変化してきています。女王アメリカ、ドイツ以外に、ヨーロッパチャンピオンになったイングランドやスペインが台頭。いわゆるサッカー大国が力をつけてきました。なでしこジャパンは現在FIFAランキング11位(2022年12月)。W杯ではグループステージ突破は必須で、ベスト4が目標になると思います。浜野まいか選手など急増中の海外クラブ所属選手が多く出場すると予想しますが、国内選手にも期待したい。海外移籍が加速しているのはレベルや環境面、給与面などの魅力以外に、欧米では女子サッカー選手の人気が高くてリスペクトされていたり、ビッグクラブ同士の試合に大勢の観客が訪れ応援してくれたりと、憧れの存在になっているから。そういうステータスのある立場に身を置いてプレーしたい選手が多いのだと思います。
長野風花(リヴァプールFCウィメン)
「コツコツと技術を磨いてきたボランチ。長谷川選手とのコンビに磨きをかけてきました。背番号は10」
植木理子(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)
シュートコントロールがうまい点取り屋。「2022-23 Yogibo WEリーグの得点王。前回大会は怪我で出場できなかった悔しさをぶつけてほしい」
FW浜野まいか(チェルシーFCウィメン)
現在ハンマルビーIFに期限付き移籍中。「天真爛漫なプレーで世界中の同世代選手から愛される18歳。シャツは常にイン!」
遠藤純(エンジェル・シティFC)
ナタリー・ポートマンなどが出資するクラブ所属のMF。「私服はビビッドなファッションでチームでも大人気」
「WE Love 女子サッカーマガジン」主筆 石井和裕
WEリーグ・女子サッカーウェブマガジンの主筆。なでしこリーグ公式「日本全国なでしこリーグの街を訪ねて」連載。著書に『横浜F・マリノスあるある』(TOブックス)などがある。
ジャーナリスト 萩原麻理さんが海外のプレーヤーを選出!
海外のプレーヤーにも注目を。ただちょうど今、知名度も実力もある選手がW杯に出られないかもしれない状況が起きています。大きな怪我が多発していることと、待遇の改善などを求めて連盟と闘っているケースがあるのです。
王者USAもミーガン・ラピノーらが中心となり、裁判で男女同一の報酬を勝ち取ったところ。スター揃いの世代から若手に引き継げるかどうかが連覇のカギです。
欧州ではやはり連盟との問題で、スペイン代表の選出に暗雲が。特に最強クラブ、バルセロナ女子の選手たちの去就が取り沙汰されています。注目はボンマティと怪我から復帰したアレクシア・プテジャス。W杯開催国オーストラリアのサム・カーにも期待!
アイタナ・ボンマティ(スペイン代表/バルセロナ)
中盤の選手。「この人がいればアシストもゴールも自在。連盟との問題が解決して代表入りしました」
ソフィア・スミス(USA代表/ポートランド・ソーンズ)
昨シーズン米国のリーグで最年少MVPを受賞し、チームを優勝に導いた。「国際舞台でも輝けるか注目!」
サム・カー(オーストラリア代表/チェルシー)
必殺ストライカー。「東京五輪で知り合ったUSA代表のクリスティ・ミュイスと交際中」
兵庫県生まれ。雑誌の編集を経て、映画・カルチャーを中心に記事を書き、翻訳も。訳書『ボビー・ギレスピー自伝』(イースト・プレス)ではスコットランドのサッカー事情もよくわかる。
世界に羽ばたくプレーヤー、長谷川唯選手にインタビュー
プレミアリーグで活躍する冨安健洋選手や三笘薫選手と同じくらい、イングランドで高く評価されているのがマンチェスター・シティの長谷川唯選手。その目標は?
自分らしさを忘れず、確かな結果を残したい
2022年秋にWSL(ウィメンズ・スーパーリーグ)のマンチェスター・シティに移籍。その年末には英紙『ガーディアン』が選ぶ世界の女子選手トップ100にランクイン。そこでは「これほど才能にあふれたプレーヤーが欧州のビッグクラブに入り、大きな影響を与えるのは新鮮だ」と書かれていた。長谷川選手への注目度はイギリスで日々、高まっている。
「あの記事はすごくよく書いてもらえました(笑)。やっぱり、今一番女子サッカーが盛り上がっているのがイングランドなので。施設や環境も抜群に整備されているし、試合はもちろん全部天然芝のピッチ。どこのリーグよりもそういう面ではトップを走っていると思います。観客も入るようになってきて、こっちに来てからは、何よりサッカー文化は大事だと実感します」
目の肥えた観客やメディアに評価されているのは、彼女がこれまでの攻撃的なポジションから一列下がり、アンカーとしてチームの要になっているからでもある。
「得意なポジションより後ろめで、当然難しい部分はあります。自分ではリスクを冒すプレーが持ち味だったんですけど、今は安全が第一のポジション。そこで要求されることと、チャンスメイク、リスクを負ってでも出すパスの使い分けを意識しています。ただまだモヤモヤしているところもあって、もっといいプレーができるのに、と。リーグも半分終わって慣れてきたので、もっと攻撃につながるプレーを出していきたいです」
とはいえWSLはスピードがあり、フィジカルや激しさも強いリーグ。そのなかで堂々とボールを捌き、回しているだけでもすごい。
「本当に縦に速くて。でも自分は自分らしく、周りに染まりすぎないように、というか染まれないですね(笑)。自分のよさは忘れないようにしようと思っています。もちろん、フィジカルで負けてはいけないところはあって、そこは妥協せずいきますけど、求められているプレーとやりたいと思っているプレーをバランスよくやりたい」
憧れの選手、目指す選手を聞くと、アンドレス・イニエスタやケビン・デ・ブライネの名前が挙がる。バルセロナやマンチェスター・シティのパスをつなぐ、攻撃的なサッカーの名手だ。
「WSLではチームメイトのローレン・ヘンプの突破力がすごいですね。ドリブルもあるし、すっとかわして、抜き切らないでクロスにしたり。同じアンカーとしてすごいのは、アーセナルのキム・リトルと、シティからバルセロナに移籍したキーラ・ウォルシュ。キーラとは一緒にやりたかった気持ちがあります。バルセロナの女子はみんないい位置にいて、ダイレクトにワンタッチ、ツータッチで速くボールが回る。技術のところで、止める、蹴るがしっかりしてると思います」
ほぼ毎日朝からトレーニングで、午後はジムワークや週に3回、英語の授業。これから夏までWSLの後半戦を戦うとともに、その経験を日本代表に持ち帰ろうとしている。
「この環境で毎日やるのは大事ですね。代表で海外のチームと戦うときも、もう『思っていた感覚と違う』というのがない。以前は試合で、外国の選手のスピードや強さ、脚が長くて遠くまで届くタックルに慣れるまでに少し時間がかかったんですけど。序盤苦労していたのが、今はすぐに自分のプレーが出せる。7月のワールドカップの頃には海外に出て2年になるんですが、そこでどれだけ成長できたかを試す、いい舞台だと思ってます。あとは来年、シティでチャンピオンズ・リーグに絶対出たいので、出場権は必ず取らないといけない。そのためにも、個人としてもしっかり結果を残したいです」
1997年、埼玉県生まれ。6歳からサッカーをスタート。2021年1月にACミラン、8月にウェストハムに移籍。2022年9月、マンチェスター・シティに移籍した。2017年から日本代表に選ばれ、2019年W杯にも出場している。