ジェンダー平等への機運が高まるにつれ、近年さらに活発化している「選択的夫婦別姓」についての議論。より理解を深めるために現状や歴史を参照しつつ、鼎談やインタビューを 通して、"結婚"にまつわる未来のあり方をじっくり考えてみたい
PART 1 選択的夫婦別姓、どう思う?
SPURのメールマガジン読者を対象にアンケートを実施。ご協力いただいた933名のうち約92%が女性、平均年齢は約42.8歳だった。貴重な回答から、まずはリアルな意見や現状を参考にしてみたい
Q1 選択的夫婦別姓に賛成ですか、反対ですか?
賛成意見
自分の姓で仕事も続けたいし、愛着があるから
どちらか一方だけが仕事の都合や手続きなどで不利益な状況や負担になることが多いので、平等に選べるようになってほしい
入籍当時、旧姓をなくした寂しさがあった。できればそのまま姓を変えずにいたかった
反対意見
子どもの姓を決める過程で、子ども自身が傷つかないかが不安
現行の法制度や、付随するさまざまな体制が整っていないまま別姓が可能になるとデメリットのほうが多いのでは?
上の世代には夫婦別姓の理解がもっと浸透しておらず、たとえば夫の家族や親族に「生意気だな」とよい印象は持ってもらえないかも、と感じる
賛成派の意見として多かったのは「個人の自由を尊重すべき」「選択肢があったほうがいい」といった趣旨のもの。反対、またはどちらでもないを選択した人のなかには「通称使用の拡充を推進していってほしい」といったコメントもあった。子どもの姓の決め方についてはPART2のQ4も参考にしてみたい。また、結婚=入籍ではなく、夫婦ふたりで新戸籍を作るのがいまの法律婚。
Q2 現在、夫の姓と妻の姓、どちらを名乗っていますか?
全回答者のうち「法律婚をしている」と答えたのは約57.8%。そこから約9割の人が「夫の姓」を名乗っているという。「妻の姓(=自分の姓)」を名乗っていると答えた女性のなかには国際結婚のため改姓をしなかった人も複数含まれることを考えると、「妻の姓で同姓」という事例がかなり限られたケースということも読み取れる。
Q3 いまの姓に決めた理由を教えてください。
当たり前だと思っているから
自分の名字に愛着があり、相談して夫が改姓した
好きな相手の姓になりたかった
自分の旧姓が好きではなかった
改姓した人の自由回答に多かったのは「当たり前に感じていた」というもの。選択式回答のなかでは「暗黙の了解で決まったから」、次に「自分自身はこだわりがなかったから」が多く、Q2の結果と合わせると"女性が改姓するもの"という社会的な慣習の影響が大きいようだ。なかには「別姓を望んでいたが、相手の親族との面倒を起こしたくないと夫の姓に」といった回答も。
Q4 自由に姓を選べるなら何を選びますか?
もし「選択的夫婦別姓」が実現したなら? その状況下では同姓と別姓を選ぶ人が、およそ半分ずつ。「個人的には名字が変わることは結婚という節目のような気がしてうれしい」という人も「自分の姓は珍しいので変えたくない」という人もそれぞれの立場をともに尊重できる。
Q5 通称使用について、どんなメリットやデメリットを感じますか?
職場では旧姓を使用。余計な説明などをせずによく、周囲の混乱も避けられる
離婚したときなどにプライベートを詮索されにくい
書類によってどちらの姓の押印が必要か確認が面倒なときもある
戸籍上の本名ではないけれど、仕事など社会的活動の場で既婚者が便宜上、引き続き旧姓を通称として使う「通称使用」。アンケートで「通称使用をしている」と答えた人は91人。「仕事で覚えてもらった名前を変えずに済む」などキャリアを分断されない一方、「顧客には旧姓で呼ばれ、結婚後の知り合いや事務職の方には新姓で呼ばれ混乱することも」という意見も。
SOURCE:SPUR 2021年7月号「ありたい社会のために いま、選択的夫婦別姓を考える」
interview & text: Rio Hirai illustration: Aki Ishibashi