男性にも知ってもらいたい、生理のこと。思いきって身近な男性と語り合うことで、お互いの関係性もいっそう深まるはず。子育て中のモデル&ヘアスタイリスト夫婦、アスリートカップル、同じ会社で働くチームメイト同士の3組が、生理をテーマにトーク!
CASE : 3
メルカリ --- 宮本 祐一さん
メルカリ --- 鈴木 万里奈さん
「体調が悪ければ休む」権利を当たり前に行使できる社会に
――「生理休暇」を導入している会社は増えているけれど、「制度があるのは知っていても使っている人がいない」「取りづらい」という声もあるのが現状だ。そんななか株式会社メルカリが2019年に導入した「Sick Leave」は、本人の病気やケガを事由とした休暇を有給休暇とは別に、診断書などの証明書は不要で年10日まで取れる制度。「みんな躊躇せずに使うようになっているので、精神的にもラクになりました」と話すのはメルカリPRの鈴木万里奈さん。今回、別チームでマネージャーを務める宮本祐一さんと一緒に、社内で生理や体調についてどう共有、対応しているか取材した。
体調不良で休むのは当然の権利という意識はもっと広がるべき
鈴木さん(以下S) 実は先週、実際に「Sick Leave」を利用してお休みしました。HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの副反応による体調不良だったのですが、社内で使っているSlackで「Sick Leaveを使います」と言ったきり寝込んでしまってPCも見られず……、それに対して宮本さんが「僕がその間の仕事引き取りますよ」と返信してくれていたのがうれしかったです。
宮本さん(以下M) そんなこともあったね。オフィスにいたら「顔色悪いけど大丈夫?」と気遣うこともできるかもしれないけれど、今は特にリモートワークがメインでメンバーの様子がわかりづらい。だからこそ、チームのマネージャーとしても、メンバーが有休ではなく「Sick Leave」で休んでいるということ自体がアラートになって、相手をねぎらったり、全体の仕事のコントロールができるメリットがあります。
S 入社前に東ティモールの国際機関で働いていたのですが、現地でも「Sick Leave」は浸透していました。海外ではみんな堂々と「体調が悪いときに休むのは私の権利だから!」という姿勢でしたが、まだ日本では私たちは「申し訳ないのですが……」という枕詞をつけてしまいがち。その意識も徐々に変わっていくといいですよね。
M 確かに! 「体調が悪いときにはしっかり休むように」というムードはあるんですけれどね。社内ではSlackを使ってかなりオープンなコミュニケーションが行われているので「Sick Leave」を使っている最中にSlackがオンラインになっていると周りのメンバーに「ちゃんと休まないとだめだよ!」って叱られるんです(笑)。あと「午前中は頑張れたけれど、午後だけは休む」と柔軟に使えるのもいいです。
S ただ生理って、月に1週間ほど期間があるじゃないですか。生理痛やPMSが重い人だと年に10日じゃカバーしきれない可能性も高い。やはり、チーム内で自分の体調の波について話せる環境が必要だと思います。
M そうだよね。僕自身は男兄弟だったのでほとんど知識がなくて、今のパートナーと長くつき合うなかで「月に数日、こんなふうにしんどいんだ」というのを教えてもらいました。あとは10歳になる娘がYouTubeなどで自分の体のことを学んでいて、「こんな(生理等の)本があるから、買ってほしい」と言われて自分でも読んでみたことも。そういう機会に恵まれて、家族の体や気持ちの波について知ることができました。生理のことをまったく知らないと知っているのとでは、コミュニケーションの取り方は大きく異なってくると思います。
S 私は「Sick Leave」ができる前から、直接仕事で関わる相手には、「生理痛が重いときと扁桃炎をこじらせることがあるので、お休みをもらうかもしれません」と伝えていたんですよね。突然休んで迷惑をかけるよりも、先に伝えておいたほうがいいかなと思って。
M そういうことは共有してもらったほうが、こちらもスケジュールが組みやすいですし、無理させないように調整できるのでありがたいです。
S 「Sick Leave」制度が広がることは、「つらいときには休んでいいんだ」という精神的負担の軽減にもつながっていると思います。本当につらくなってからだけでなく、ひどくなる前の“予防”としても利用していきたいです。
福利厚生の充実は会社からの「応援メッセージ」
M 「Sick Leave」は導入から2年たち、対象範囲が社員本人だけでなくペット、パートナーも含めた家族まで拡大されました。家族の生理が重いときに、僕がこの制度で会社を休んでサポートすることもできるように。
S お子さんがいるご家庭にとってもメリットが大きいですよね。さらに「卵子凍結支援制度」「0歳児保育支援制度」の試験運用も始まりました。私も先日、会社が実施した卵子凍結のセミナーに参加したり。この制度の利用を視野に入れ、病院もリサーチしています。
M こういった福利厚生の充実自体が、組織の多様性を広げ、インクルーシブなチームになると思うので、結果的に会社の競争力向上につながるのではないでしょうか。グローバルな視野を持った企業ほど、その重要性に気がついているはずです。
S 「生理用品を会社の備品にしよう」というアクションを起こしている友人がいるのですが、そういうことも普通になってほしい。会社が備品として認めることが、「あなたを応援している」というメッセージになると思います。
M 生理用品のことも制度になれば、僕のように生理がない人がより理解を深めるきっかけにもなりますよね。「何が起きていて」「どれだけの影響があるのか」、そして「それが人によってどれだけ違うのか」を、まずは知ろうとするのがスタートだと思います。
Profile
すずき まりな●メルカリグループ メルカリPR。上智大学卒。PMインターンを経て、2018年にPRとしてメルカリへ入社。PR業務と並行してD&Iチームの立ち上げも行う。大学時代には、UN Womenにて女性のエンパワメントに関する広報補佐官を担当した。
みやもと ゆういち●メルカリグループ メルペイPR マネージャー。大阪大学を卒業後、証券会社を経て2019年1月に株式会社メルペイに入社。スマホ決済サービス「メルペイ」の立ち上げに携わる。その後、キャンペーンの発信などPR業務全般に従事。
SOURCE:SPUR 2021年9月号「わたしと彼が、生理の"ホント"を語るなら」
photography: Kae Homma interview & text: Rio Hirai