2021.08.23

「結婚の平等」はみんなのために。同性婚の今を知る PART 2

好きな人と一緒に人生を歩みたい。そう思っても、今の法律や制度ではその権利が認められていない人たちがいる。「同性婚」をめぐる議論の歴史や当事者の声を通して、望む未来の実現に向けて一歩前進しよう。

PART 2  映画と本をガイドに

知見を深めるために、まずは触れてみたい映像作品と書籍。おすすめの作品をそれぞれの分野に詳しい二人がピックアップ。

【 世界各国の物語から、背景を知る 】

Recommend by

児玉美月さん(映画執筆家)

こだま みづき●映画執筆家。『ユリイカ』『映画芸術』『キネマ旬報』『English Journal』などの雑誌やウェブ、パンフレットに多数寄稿。共著に『「百合映画」完全ガイド』(星海社)がある。

『Starting Over』

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(U-NEXTほかで配信中)  ©ML9

レズビアンカップルを描いた2014年製作の日本映画。「日本でパートナーシップ制度が初めて自治体レベルで認められたのが、公開後の2015年。登場人物が同性カップルの婚姻の権利についてインターネットで調べる場面では、PC画面に当時の困難な状況が表示されます。劇中には若い同性カップルが抱える漠然とした憂慮や、社会的な立場の心もとなさが終始漂う。法制度が整っていない問題が、二人のそうした不安感を助長しているんです」(児玉さん)

『ハンズ・オブ・ラヴ 手のひらの勇気』

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(U-NEXTで配信中)  ©Lionsgate/Everett Collection/amanaimages

実在の女性カップルの人生をもとに、同性婚が認められる前のアメリカを描いた映画。「ローレルは末期がんを宣告されるも、パートナーのステイシーに遺族年金を遺せない。そこで二人は訴訟を起こします。病院での面会拒否など、婚姻関係を結べない同性カップルが直面する問題も描かれます。望んでいるのは"結婚"ではなく"平等"だとローレルが何度も口にするのが印象的です。主演のエリオット・ペイジは、2020年にトランスジェンダーであることを公表しました」(児玉さん)

『君の心に刻んだ名前』

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(Netflixで独占配信中)

互いに惹かれていく男子高校生を描いた本作の舞台は1987年、戒厳令が解除された直後の台湾だ。「直接的に同性婚は出てこないのですが、"LGBT先進国"と呼ばれる現在の台湾から過去を振り返る重要な作品です。台湾は、反対派からのバックラッシュに遭いながらも、2019年にアジアで初めて同性婚を認める法律を可決。自伝的な内容を映画にしたリウ・クァンフイ監督は『婚姻の平等が台湾で認められるまでの30年は非常に長かった』と話しています」(児玉さん)

『人生は小説よりも奇なり』

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(Amazonプライム・ビデオで配信中)  ©Sony Pictures/Everett Collection/amanaimages

ニューヨーク州で2011年に同性婚が合法化された背景をもとにした映画。39年間連れ添ったゲイカップルがようやく結婚できたものの、同性婚を理由にジョージは勤めていたカトリックの学校を解雇され、二人は家を追い出されてしまう。「法的に結婚が認められても、依然として社会には偏見や差別が存在することをこの作品は伝えています。老年のカップルの直面する老いと死というテーマが描かれる一方で、ラストは次世代への希望が託されています」(児玉さん)

【 見識を広げる、入り口の4冊 】

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潟見 陽さん(書店オーナー)

かたみ よう●グラフィック・デザイナー。アジアを中心に世界各国のクィアをテーマにした書籍やzine、グッズを扱うブックストア兼ライブラリー「loneliness books」の店主も務める。

『ふたりのパパとヴィオレット』

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エミール・シャズラン/ガエル・スパール著、中山亜弓訳(ポット出版/1,650円)

もしも両親がパパ二人だったら? 少女ヴィオレットの視点から"新しい家族像"を描くフランスの絵本。「同性婚のカップルを想像する入り口としておすすめの一冊。日本ではまだ養子縁組があまり普及していませんが、欧米ではゲイカップルが養子を育てるケースも多いんです。20年くらい前から雑誌でも取り上げられていました。血のつながりがなくても家族になり得る。そんな家族観を広げてくれる作品です」(潟見さん)

『マンガでわかるLGBTQ+』

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パレットーク著、ケイカ画(講談社/1,430円)

LGBTQ+の基本知識を楽しく学ぶならこの一冊。22のマンガを通して、カミングアウトをされたときの心構えなどがわかりやすく解説されている。「"LGBTQ+と法律"の章を読むと、同性愛者が法的にどんな不利益を受けているのかがよくわかります。税制の優遇がなかったり、共同親権や配偶者ビザが得られなかったり。マジョリティにとっての"当たり前"が保障されていない。同性婚の必要性がよくわかります」(潟見さん)

『女ふたり、暮らしています。』

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キム・ハナ/ファン・ソヌ著、清水知佐子訳(CCCメディアハウス/1,650円)

独身でも結婚でもない"第3の道"として友人との同居を選んだ韓国の人気コピーライターと元ファッション誌編集者がその愉快な生活を綴ったエッセイ集。「彼女たちはレズビアンではありませんが、恋愛をベースにしない新しいパートナーシップを"分子家族"と名付けて実践しています。家族になるのは恋人同士でなくてもいいと気づかされました。もちろん同性婚は早く認めたうえで、家族の姿はより拡張してほしい」(潟見さん)

『二人で生きる技術』

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大塚隆史著(ポット出版/2,420円)

同性婚が夢のまた夢だった頃から、同性との関係を持続していく術を探究してきた老舗ゲイバー〈タックスノット〉の店主によるパートナーシップ指南書。「法的な保障がない中で、ゲイカップルがどうやって関係を長く続けてきたのか、その試行錯誤の記録であり、 パートナーシップを長く続けることの魅力が詰まった一冊です。きっとどんなカップルにも参考になるヒントが詰まっているのではと思います」(潟見さん)



SOURCE:SPUR 2021年10月号「 同性婚の今を知る」

edit: Sogo Hiraiwa illustration: Fuyuki Kanai

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