奈良県北東部に位置する天空の里、大和高原。古くからお茶の栽培が続くこのエリアは、日本でも屈指の生産地だ。そんな自然豊かな山間部に、お茶にまつわる体験型施設「瑞徳舎(ずいとくしゃ)」はある。日本の暮らしの原点を感じられるこの場所で、内なる自然の声を聞く
茶畑で語る、スタイリスト4人がつなげていきたい未来
想像力をシェアすれば、きっと見えない景色が見えてくる
実は、金子さんと飯島さんは師弟関係にあり、吉田さんもかつて、椎名さんのアシスタントをした経験をもつ。人と自然が共生する里山に身を置き、互いの創造性を循環させながら、合作でファッションストーリーを作り上げた。この体験が、自身が引き継いだ仕事との向き合い方やスタイリストとして表現するために大切なこと、バトンをつなげていきたいファッションの未来について、思いを馳せる機会ともなったようだ。それぞれが、こんな思いを語る。
「先輩たちと過ごしたこの数日は、数えきれないほど気づきがあった。人としての魅力があるからこそ続けていける仕事だと再認識できたのも、そのひとつ。そして、精一杯楽しめばいいんだよ、と背中を押されたようにも思う。次の世代にもリラックスして歳を重ねればいいと伝えたい」(吉田さん)。
「自分が学んだ、表現することの楽しさ、自分の中に楽しみを見つける喜びを、後輩にも伝えていきたい」(飯島さん)。
「アシスタント時代、師匠から言われた言葉を思い起こしました。『現場の素晴らしい人たちの仕事を見られるのは財産だから、よく見なさい』と。自分も人に見せられる仕事をしていかないと」(椎名さん)。
「スタイリストの仕事を続けてきたことは本当に宝物。この日本の原風景で体感したわくわくは、ものづくりの原点でもあると感じています」(金子さん)。
自然が循環する茶畑で、五感の扉を開けたとき、きっと未来につなげていきたい何かが見えてくる。ここ「瑞徳舎」は、過去と未来が出合う、希望の交差路なのかもしれない。
煎茶美風流四世家元 中谷美風さん × 健一自然農園代表 伊川健一さん。大地の記憶を宿す、お茶という宝石
過去から未来を見つめる、古くて新しい茶農園のカタチ
大和高原の“暮らし”の歴史は古く、縄文時代草創期にまでさかのぼるという。また、日本のお茶栽培の歴史は806年に空海が唐から茶の種子を持ち帰り、奈良の大地に植えさせたのが始まりと伝えられる。そんな大和茶をめぐる物語に耳を傾けていると、古代からの記憶が染み込む一滴のお茶が、よりおいしく感じられる。「大和高原の地に持続可能な里山循環地域のひな形をつくりたい」と目を輝かせる伊川さんと、知的好奇心を満たし、精神面におけるお茶の世界を教えてくれる家元。ここはまさに、心の中の輝きを見つけられるかけがえのない“宝石箱”なのだ。
農事組合法人春日茶園の監査や、天理市里山地域づくりアドバイザーの役も担い、風土と季節を生かした自然茶づくりを提唱。
水墨画家としての画名は。奈良に本部を置き、本来の文人趣味である煎茶喫茶趣味の復興と普及において活動。
奈良県山添村に位置する、お茶にまつわる体験型施設。奈良市内からわずか50分ほどで、日本の原風景に出合える場所だ。お茶摘み&製茶のプログラムをはじめ、活け花や水墨画、煎茶道の礎となる文人趣味にかかわるワークショップが定期的に開催されている。
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