日本一きれいな観光用公衆トイレを目指して。奥多摩のトイレ清掃集団OPT(オピト)

奥多摩町で活動するトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」。クリエイティブな発想で、公共トイレが持つ負のイメージを覆すメンバーに、活動の内容と意義について聞いた

OPT(オピト) 大井朋幸さん(右)、関 舞さん(左)
OPT(オピト) 大井朋幸さん(右)、関 舞さん(左)プロフィール画像
OPT(オピト) 大井朋幸さん(右)、関 舞さん(左)

オピト●2017年発足。「奥多摩総合開発」の清掃事業部門に所属し、奥多摩町内にある20軒以上の観光用公衆トイレの清掃を行う。チーム名は"オクタマ・ピカピカ・トイレ"の略。現在、クリーンキーパーは3名在籍。週5日、1日平均8〜10軒のトイレの清掃を行う。

清掃員と利用者が相互に築く平和の象徴としての清潔なトイレ

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
奥多摩駅前のトイレ。月一で建物全体の洗浄をするほか、周辺のゴミ拾いや木々の剪定なども定期的に実施

アウトドアの聖地・奥多摩。観光客でにぎわうこの町の公衆トイレは、7年前まで、〝汚い、臭い、怖い〟と利用者から敬遠され、公に開かれた場所とは言えなかった。そんなトイレの印象を、丹念な清掃と画期的なアイデアで覆したのが「OPT」。リーダーを務める、大井さんは清掃開始当時をこう振り返る。

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
1日1回磨く便器は白く清潔感が漂う。夏の行楽時期は清掃も念入りに

「駅前のトイレは、薄暗くて便器に染みついたアンモニア臭や、尿石による床の黄ばみがひどく、清掃は想像を超える大変さ。粉塵マスクとゴーグルを装着し、汚れが目立たないユニフォームで臭いに吐き気をもよおしながら作業を行なっていました。

そんなある日、私の娘が同級生に、『トイレ清掃員のお前のお父さんは汚い』とからかわれ、泣きながら学校から帰ってきたことがあって。そのときに、世の中が持つ清掃員や、トイレに対する負のイメージを、僕が〝日本一イケてる清掃員〟になって逆転させようと決心したんです」

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
内部は明るく開放的。1回の清掃にかかる時間は約4時間。利用客が入るごとに一度退出する

そこから大井さんは、利用者がトイレ清掃員に親しみを持てるよう、それまではなかったチーム名「OPT」を考案。また、作業着のデザインをスタイリッシュに刷新した。

「トイレをきれいにすることは、想像以上に難しい。というのも、奥多摩という土地柄、簡単には清掃資材が手に入らないので、用具はすべて家庭用を使います。よく大型施設で見かける業務用の自動床洗浄機もここにはありません。ですから僕らが手作業で、床や便器を磨き上げたとしても、清潔さを維持するのは大変。そこで重要になるのが、利用者の協力です。〝きれいに使おう〟という意識を持ってもらえるように、ポップな作業着を着た僕らが、楽しみながら清掃する姿をSNSで発信したり、積極的にあいさつを交わしたりしています」

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
古くなったバスタオルで作ったぞうきんを使い、タイルの溝にたまった汚れを徹底的に落とす

そうして〝日本一きれいな観光用公衆トイレ作り〟に取り組んできた大井さんには、駅前のトイレを利用した年配女性からかけられた忘れられない言葉がある。

「『公共トイレは、昔は落書きがあり、汚くて、怖いイメージだった。今日生まれて初めて、ここのトイレに入ったけれど、この町は治安がいいんだね』と言っていただいて。そのときに、トイレが町の平和のイメージを作るのだと実感したのと同時に、観光客に『この町にようこそ』という歓迎の気持ちを伝える場所でもあると気づいたんです」

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
便器も手作業で清掃。家庭用のスポンジや洗剤を使って、キュッと摩擦音が聞こえるまで磨き上げる

近年、「OPT」は、地元の小学生に、トイレ清掃の体験授業を定期的に実施している。

「普段、自分たちが使うトイレが、どのようなプロセスを経て清潔に保たれているかを体験してもらうことで、そこに携わる人や、使い方を考え直すきっかけになればと。日本では、安全に管理された衛生的なトイレに、当たり前にアクセスできます。しかし、世界を見渡すとそうでない国がほとんど。きれいなトイレがあることが当然ではないことを、今後の活動を通して伝えていきたいですね」

奥多摩のトイレ清掃のエキスパート集団「OPT」
CDコンポからは、チームのテーマソング「OPT」が流れる。YouTubeでは活動を紹介するPVを公開
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