コロナ禍で結婚式を延期したり中止するカップルも多い中、アイデアを駆使した新たなウェディングスタイルで挙式を実現したケースも。ワイナリーでの“ソーシャルディスタンスウェディング”や、会食なしの“展示会形式ウェディング”など、4人の花嫁のウェディングストーリーをリポート! 社会や価値観が大きく変わるいま、これからのウェディングの参考にしたい。
STYLE1 海外気分を味わえる! 沖縄県・浜比嘉島での家族婚
2020年春の時点では、ハワイで親族や近しい友人を招いての挙式を希望していた、名古屋在住の大隈 栞さん。コロナ禍により泣く泣く断念することになったが、海外のようなロケーションで国内でも挙式ができないか模索。
【Data】
挙式場所:413 hamahiga HOTEL&CAFE 日程:2020年11月14日 参加人数:11人
準備期間:4ヶ月 実現までの経緯:ハワイでの海外挙式を計画→沖縄県浜比嘉島での家族婚
プランニング:ベルべデーレ
「少人数でも質が高く、家族の思い出に残る挙式がしたい」というのが、栞さんの希望。家族だけということもあって、派手な演出は控え、両家の家族の距離が縮まるような、アットホームな工夫をちりばめたという。例えば、前日の夜はみんなでBBQを楽しんだり、プライベートビーチで遊んだり、ウェディングパーティ中には、ゲストひとりひとりにインタビューをお願いするなど、コージーな雰囲気の中、心温まる時間を楽しんだ。
家族だけのウェディングであっても、ドレスや会場装飾にもこだわって欲しいというプランナー望月さんの思いから、オンラインで打合せを重ね、ドレスやそれにマッチする会場装飾にもこだわった。
沖縄での2泊3日のウェディングとなれば、美しいロケーションを生かしたフォトシューティングも魅力。大隈 栞さんは家族みんなに同行してもらい、お互いに写真を撮り合ったそう。家族婚ならではの思い出がまたひとつ増え、とてもいい経験になったのだとか。
「両家の喜ぶ姿を見ることができたので、諦めないでよかったと思いました。普段離れて暮らす家族とも久しぶりに長い時間を一緒に過ごすことができたのも嬉しかったですね。プライベート感満載のウェディングは、思い描いていたような海外ウェディングの雰囲気も味わえ、一生に一度の思い出になったと家族からも好評でした!」
from planner:「自粛期間を経て、それぞれが自分を見つめ直す良いきっかけとなった結果、家族や大切な人だけを招いてウェディングをしたい、といったよりシンプルに本質的なウェディングを望まれる方が増えたように思います。自分にとって本当に必要な形をそれぞれ見出していけば、きっと素敵な結婚式になるはず」(ベルべデーレ プランナー・望月実沙さん)
STYLE2 ふたりのこれまでと今にフォーカス。心温まる展示会形式の結婚式
2020年4月の結婚式&披露宴を目指して、2019年4月から準備をすすめていた京都市在住の遥さん。コロナ禍により2度の延期を重ねた結果、今年の2月に約1年遅れの結婚式を実現させた。「結婚を決めてから、すでに2年近くが経過していました。このまま延期を続けていたら私たちも先に進むことができない。中止も頭をよぎるなか出した決断は、せめて大切な人たちと写真を撮る時間だけでも作りたい、という最低限のものでした」。
そんな思いをうけて当初からプロデュースに入っていたクレイジーウェディングが提案したのが、飲食なしの展示会形式の結婚式。感染リスクを避けるため、食事をともにする披露宴はないけれど、写真や映像、思い出の品を通してふたりを深く知ってもらい、一緒に楽しい時間を過ごしてもらというもの。
【Data】
挙式場所:パビリオンコート 日程:2021年2月21日 参加人数:40人
準備期間:1年10ヶ月 実現までの経緯:2回の延期→飲食なしの展示会形式の結婚式
プランニング:クレイジーウェディング
京都の邸宅を貸し切っての結婚式は、3フロアを利用した、まるでアトラクションのような展示会形式。1階は写真好きのふたりの作品、生い立ちを知ってもらう懐かしい写真や思い出の品々で「ふたりが見てきたセカイ」を表現。2階は「ふたりを知る映像展」と題し、お互いについてインタビューし合った映像を流した。3階には写真スペースを設け、ふたりと写真を残せるスポットに。「ゲストに楽しんでいただけるよう、写真の構成や映像にこだわりました。私たちのこれまでと今を感じてもらえる内容になったと思います」。
密集を避けるため、ゲストはいくつかのグループに分け時間をずらして招待した。展示を通してふたりを知ってもらい、ゲストひとりひとりと話す時間も取れたという結婚式は、場の雰囲気も温かなものに。希望していた写真撮影だけではなく、感謝の気持ちも届けられるウェディングとなった。
展示会の合間には、挙式も行った。ゲストに見守られながら誓いの言葉や両親への感謝の言葉を伝えるという内容に。展示を見終わったゲストは、最後にふたりに宛てたメッセージを手渡して帰宅した。
「一時は中止も考えた結婚式でしたが、この状況下だからこそ会うことを躊躇していた親族や友人に会い一緒に時間を過ごせたことは、何よりも嬉しいことでした。参加してくれたゲストからは『ふたりらしさがあふれた時間だった』、『大切なことがギュッと凝縮された素敵な式だった』という感想をいただき、今はやってよかったと思っています」。
from planner:「ふたりの希望は、感染リスクを最小限に抑え、ゲストと写真が撮れる会はできないか?というもの。約1年半近くふたりの結婚式への思いに寄り添ってきたので、写真だけではなく大切な人に感謝の気持ちを伝えられて、喜んでもらえる時間にしたいと思い、展示会形式の結婚式を提案しました。今後はこのような状況下だからこそ、ゲストへの感謝を丁寧に伝える形が増えていくのではと思っています」(クレイジーウェディング プランナー・田口好美さん)
STYLE3 ソーシャルディスタンスを意識した、ワイナリーウェディング
2021年2月には、出会いのきっかけでもありプロポーズの場でもあったホテル挙式が決定していたという20代都内在住のRさん。一時は挙式自体を中止することも考えたそうだが、「派手な演出や装飾で魅了するウェディングではなく、今まで当たり前にできていた、自分たちの大切な人に集まってもらえるウェディングにしたい」と、オーダーメイドでウェディングを手掛けるオートクチュールデザインに相談。“ソーシャルディスタンスウェディング”と題した、ワイナリーでの結婚式が実現した。
【Data】
挙式場所:中伊豆ワイナリーヒルズ 日程:2021年3月31日 参加人数:70人
準備期間:8ヶ月 実現までの経緯:ホテル挙式を計画→ワイナリーでの野外ウェディング
プランニング:オートクチュールデザイン
舞台となったのは、広大な敷地を有する中伊豆のワイナリー。日常の喧騒から離れた自然あふれる環境は、ショートトリップしたかのような一日が楽しめる。ソーシャルディスタンスを意識したウェディングでは、極力手渡しを避けた安全対策を取り入れた。例えば、ゲスト同士の距離を保てるよう、ゆとりのあるテーブル配置や、円卓も4名までに制限。また、テーブルにはメニュー表などは置かずQRコードから読み取ってもらう、アルコールスプレーや席次表などはウェルカムスペースに飾り、セルフサービスにするスタイルに。
装飾のテーマ、「Promise garden~二人だけの花園で愛を誓う~」に合わせて、自分たちだけの花園をイメージしたというRさん。会場全体にデコレーションされた華やかな花々にもこだわりが。地元の花農家から仕入れるなど地産地消を意識。また、サンプルアップ(事前の装飾リハーサル)で使用した花々も捨てることなく、新郎新婦の手作りキャンドルに使用することでサステイナブルを心がけたそう。
「一度は諦めかけた結婚式でしたが、実施してよかったです。結婚式から生まれる特別な空気感はマジックのようで。ゲストや家族との絆を深められたのが、一番の喜びです」。
from planner:「挙式を躊躇される方に向けて、少しでも選択肢を増やしたいとの思いから“ソーシャルディスタンスウェディング”は生まれました。野外なのでゲストも安心なうえに、ロケーションそのものがサプライジングな演出になるのが魅力です。なぜ結婚式をするのか? そんな本質的な問いに向き合うことで、よりふたりの絆が深まるのでは」(オートクチュールデザイン プランナー・阿部理沙さん)
STYLE4 気持ちも華やぐ、花の“装飾パーテーション”を演出に!
2019年3月に入籍後、10月に北海道での家族向けの挙式を行った後、2020年3月に友人向けの挙式披露宴を予定していたという、都内に務める20代の会社員小竹あかりさん。緊急事態宣言をうけて、7月、12月とその後2度にわたる延期を体験した。「当初は渋谷の会場『HOTEL EMANON』を予定していましたが、より換気ができること、収容人数が多いことから、横浜にある『THE BEACH』に変更。ゲストには出欠回答後の変更も可能な旨をお伝えし、最大限の配慮と準備で臨みました」。
【Data】
挙式場所:THE BEACH 日程:2021年4月4日 参加人数:43人
準備期間:1年4か月 実現までの経緯:3回の延期→開放的な横浜のTHE BEACHで挙式
プランニング:ウェディング サーカス
コンセプトは、“みんなちがって、みんないい”。大切なゲストに、「みんなそれぞれ違う個性があり、ありのままで、生きてくれているだけで最高なんだよ」と伝える結婚式にしたかった、というあかりさん。それぞれの個性をカラフルな花で表現しようと、フラワービュッフェを用意。あえて統一感は気にせず、さまざまな種類や色の花を用意し、カラフルなフラワーで会場を装飾した。
前述のフラワービュッフェは、当初からゲスト参加型で好きな花を選んでもらい、会場をデコレーションしてもらおう、と決まっていたそう。コロナ禍をうけて、この状況をポジティブに変換しようと、アクリルのパーテーションをお花で装飾するというアイデアにブラッシュアップ! フローリストによって描かれたお花や枝などのイラストに、ゲスト自ら選んだ花をマスキングテープでデコレーションするという仕掛けに。この楽しい演出に、ゲストからも歓声が湧いたそう。
“みんなちがって、みんないい”というコンセプトは、ゲストのドレスコードにも生かされている。“カラフル”をテーマにし、赤や黄色、ブルーなど、個性あふれるカラーを纏ったゲストのおかげで会場全体が彩りにあふれ、お祝いムード一色に。高砂から眺める景色は最高で、とても幸せな気分になったそう!
「この状況下での開催に不安はありましたが、私たち夫婦にとっては、今思い出しても幸せな気持ちになるほど大切なものになりました。大好きな人たちが一堂に会して、笑顔で楽しんでいる姿を見られただけで満足です。今までお世話になったみんなが健康で笑顔でいてくれることがどれだけ幸せなことなのか、改めて気づかせてもらったような気がします」。
from planner:「ふたりの希望や要望を今まで以上にしっかりヒアリングしながら、安心&納得して選べるスタイルを提案しました。会場のグリーンガーデンを生かし、フラワービュッフェを主役にした世界観を作れ、当初のコンセプトをよい形でいかせました」(ウェディング サーカス プランナー・武田絢子さん)
text:Rie Murata