ベストなバランスの在り方を椅子から学ぶ【ジャン・プルーヴェ】
“椅子に座ったときに最も負荷がかかるのは?”。昨今の大規模な展覧会で一層注目度が増しているジャン・プルーヴェの代名詞であるチェア「スタンダード」は、このひとつの疑問からはじまった。デザイナーであり建築家、そしてエンジニアでもあった彼は、その知識とキャリアを生かして椅子にかかる重さを床へと逃がす画期的なスタイルを1934年に考案。一番重心がかかる後ろ脚は鋼板で頑丈に、比較的重さが軽い前足は細い鋼のチューブを採用することで、機能性に基づいた美しいデザインを完成させた。
ジャン・プルーヴェが機能的で美しいバランスを生み出したように、これからはじまる新生活でも、柔軟な思考でふたりのベストバランスを見つけ出そう。
センプレ ホーム(ヴィトラ)
https://www.sempre.jp/
03-6407-9081
帰りたくなる、心地いい家を光で叶える【ポール・ヘニングセン】
パンデミック以降、より一層こだわる人が増えた心地いい住環境づくり。1958年にポール・ヘニングセンが生み出した「PH 5」は、今改めてフォーカスしたい“快適な光”を60年以上も前に実現させた北欧の名作照明だ。そのままだとまぶしくて周りが見えにくくなる電球を、反射原理に基づいた3枚のシェードで覆うことで光を効率よく反射して下を明るく灯し、さらに側面に広がる光が器具全体を美しく照らす設計を構築。
照明デザインのパイオニアである彼の代表作は今なお支持を集め、2022年には「モノクローム・オイスター・グレー」などの新色4色をローンチ。多彩なカラーバリエーションからふたりで色を選ぶのも、このアイテムならではの楽しみのひとつ。
ザ・コンランショップ(ルイスポールセン)
https://www.conranshop.jp/
03-5322-6600
オープンなダイニングテーブルの最適解【ピート・ハイン×ブルーノ・マットソン×アルネ・ヤコブセン】
「スワンチェア」に「エッグチェア」など、名作椅子で知られるアルネ・ヤコブセン。実は彼には共作で作り上げた著名なダイニングテーブルがある。1968年にタッグを組んだのは、同時代にデザイン界を賑わせたピート・ハインとブルーノ・マットソン。”スーパー楕円テーブル”と呼ばれるそのモデルは、長方形でもなく一般的な楕円形でもない、美しいカーブを描いたシルエットが一番の特徴。この形がストックホルムの交通問題の解決策になった環状交差点からインスピレーションを得たというのも、数学者としての一面を持つピート・ハインと手を取り合ってこそ生まれたエピソードだ。
トップは洗練されたホワイトラミネートで、シェイプされたスチール脚は椅子の出し入れもスムーズ。3人の名デザイナーに思いを馳せながら、角のないオープンなテーブルで、大切な家族や仲間と食卓を囲みたい。
アクタス(フリッツ・ハンセン)
https://online.actus-interior.com/
03-5269-3207
工芸品のように愛でたいラウンジチェア【ピエール・ジャンヌレ】
類まれなるセンスを持ちながらも謙虚な性格から、生涯ル・コルビュジエの右腕として影の存在でいたピエール・ジャンヌレ。彼がインド・チャンディガールの建築群のためにデザインした一連の家具が40年以上の沈黙を経て、近年世界有数のオークションハウスで高額で競り落とされている。その背景から数多くの復刻品が出回る中、インドの工房「ファントム・ハンズ」は2015年から、オリジナルデザインの美しさを正しく継承する再生産プロジェクトをスタート。彼の遺産を引き継ぐ姪から多くのアドバイスを受け、熟練職人が一脚ずつ丁寧に作り上げることで、“工芸家具”として当時と同じ魅力を現代に受け継いでいる。
アートピースのように飾りたくなる美しい椅子だが、ソファのように身体をゆったり預けられる心地よさや、移動しやすく自宅の好きな場所にパーソナルスペースを作れる使い勝手の良さも魅力的。これがあればパートナーが寝落ちしてソファを占拠しても、穏やかに見守れそうだ。
51%トウキョウ(ファントム・ハンズ)
https://pierrejeanneret.jp/
03-5577-6293
自然美を描くライトでムードある空間に【セルジュ・ムーユ】
静かな夜にふと明りをつけると、見慣れた自宅が雰囲気の良い空間へとアップデートする。そんなうれしい出合いをくれるのが、セルジュ・ムーユの照明作品だ。パリに生まれ、銀細工職人として学んだのちに照明の製作を行ったのは、1950年代前半から60年代半ばの期間のみ。その年数の短さと同時代のトレンドとは一線を画す、自然をモチーフにした優美なコレクションは希少性が高まり、今でも各国の建築家やデザイナーに多くのファンを持つ。
ピックアップした「ランパデール アン ルミエール」は植物の葦を想起させる、伸びゆく凛とした姿で見る者を魅了。シンボリックだけれど空間を選ばず、すっとその場に馴染んでくれるのもうれしい。ベッドルームやソファの横など、一日の終わりに過ごすふたりのくつろぎの場を、ドラマティックに照らして。
イデーショップ 自由が丘店
https://www.idee.co.jp/
03-5701-7555
夫婦のはじまりに、夫婦共作のスツールを【チャールズ&レイ・イームズ】
デザイン史に残る名作「シェルチェア」をはじめ、遊び心と機能性が宿るプロダクトでミッドセンチュリーを彩ったイームズ夫妻。当時、“ディテールが製品を作る”と話していたふたりは、1959年ロックフェラーセンターに新たに建てられたタイムライフ社のインテリアをデザインするにあたり、彫刻のように細部まで研ぎ澄まされたスツールを考案。洗練されたデザインからのちに「イームズ ウォールナットスツール」として待望の製品化が実現し、中央のパーツは直線と曲線のコンビネーションが楽しい3種から選べるスタイルに。
彫刻作品とリンクする、シンプルな力強さ【イサム・ノグチ】
ガラスの天板と2本の脚。たった3つの要素で成り立つシンプルな構成と有機的なフォルムは、20世紀を代表する彫刻家イサム・ノグチの作風そのもの。インテリアの分野では照明コレクション「AKARI」のイメージが強い彼だが、自身が手掛けた家具の中で最高のデザインと語るのは、1944年に発表した初のインテリア作品であるこの「コーヒーテーブル」だ。一見すると不安定に見えるバランス感も、このデザインの大きな魅力のひとつ。ユニークな形を描く脚部は19mmと厚みのあるガラス板と垂直に合わさることで、ぐらつくことなくしっかりとキャッチ。3辺それぞれに異なるカーブを描くガラストップは空間に優しくなじみ、温かな家族の風景ともよく似合う。
アート好きの友人が自宅を訪れたら、きっと興味をそそられる唯一無二のシルエット。ふたりのお気に入りの彫刻作品を飾るように、リビングの主役に迎え入れてみては。
MoMAデザインストア 表参道(ヴィトラ)
https://www.momastore.jp
03-5468-5801
家族で時間とシェルフを積み重ねる幸せ【ヴァーナー・パントン】
1960年代に考案した世界初のプラスチック一体成型の椅子「パントンチェア」が象徴するように、革新的なアイデアと色使いで知られるヴァーナー・パントン。このミニマルなワイヤーシェルフにも、時を経ても色褪せない彼らしい発想が生きている。一番の特徴は自由な組み合わせでカスタマイズできるシェルフシステムであるということ。棚はシングルとダブルの2サイズで展開され、付属の連結パーツで縦にも横にも自由に拡張できる、無限のアレンジを秘めている。カラーバリエーションはブラック、ホワイト、シルバー、ブルーの全4色。同シリーズには豊富な棚板もあるので、同系色でまとめたりバイカラーを楽しむなど、色で遊べるのもうれしい。
ひとつでも棚やテーブルとして使用でき、部屋の大きさに合わせてアレンジも自由自在。5年後、10年後と節目ごとに使用スタイルを変えたり、子どもが生まれるタイミングで新たなシェルフを組み合わせるのも素敵なアイデア。家族の形もシェルフも、変化を楽しみながら時を重ねたい。
リビング・モティーフ(モンタナ)
https://www.livingmotif.com/
03-3587-2463