“Blue for Girls” ゲランの新フレグランス「ルール ブルー」が塗り替える、女性らしさの新しい色

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「蒼」を女性のための香りに。
それは、ゲランが2026年に投げかけた、美しく大胆な提案だ。

1912年に誕生した名香「ルール ブルー」が2026年、新たな姿でよみがえった。昼と夜、現実と夢、その境界がゆるやかに溶け合う「蒼の時(ブルーアワー)」。世界は深い蒼色に包まれ、そのひとときには、すべてが移ろい、そして何者にもなれるような、静かな可能性が宿っている。
1912年、ジャック・ゲランはその刹那の美しさを、「ルール ブルー」として香りに閉じ込めた。昼から夜へと移り変わるほんのわずかな時間を描いたこの作品は、メゾンを象徴する存在として愛され続けてきた名香だ。

そして2026年、その物語に新たな章が加わる。110年以上の時を経た今、同じ蒼い空を見上げたのが、ゲラン専属調香師デルフィーヌ・ジェルクだ。しかし彼女が目指したのは、単なる復刻ではなかった。1912年の「ルール ブルー」への深いオマージュを捧げながら、彼女は改めて問い直したのだ。現代を生きる私たちにとって、「蒼の時」とは何なのか、と。
3年以上の歳月と1000回以上の試作を経て、彼女が辿り着いた答えは、「空そのものの香り」。それは、「蒼の時」の空がもたらす清涼感や高揚感、そして人生が動き出す転換点に訪れる、無限の可能性の感覚を映し出した香りでもある。そして同時に、一人の女性調香師が現代女性へ向けて描いた、新しい「ルール ブルー」の姿でもあった。

新フレグランスの発売を記念して来日したデルフィーヌ・ジェルクに、その創作の背景と、彼女が思い描く現代の女性らしさについて話を聞いた。

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ゲランの専属調香師であり、フレグランス クリエイション ディレクターのデルフィーヌ・ジェルク。2007年に、メゾンのアイコンである「ラ プティット ローブ ノワール」の創作に携わり、2014年より正式にゲラン専属調香師を務める。

「ジャック・ゲランの作品を尊重し、その作品と深く結びついていることが不可欠でした」

そうして生まれた香りは、従来の「ルール ブルー」と同じく、アイリスとギモーヴ アコード、そしてオレンジブロッサムのブレンドが中心に香り立ち、やがてやわらかなヴァニラが温もりを残していく。

だが、この香りを単なるフローラルとして語ることはできない。デルフィーヌが描こうとしたのは、「蒼の時」の空気そのものだった。

夕焼けから星空、星空から朝へと移ろう、あの数分間だけ訪れる澄み切った空気。その浮遊感を表現するため、新たに開発されたのがオゾニック アコードである。

「オゾニック アコードは、まるでオゾンを含んだ空気のように軽やかで、エアリーな香りです。『蒼の時』に感じる、身体がふっと解き放たれる感覚を表現したかったのです」

澄み渡る空気や蒼空、そよぐ風、そして静かに満ちていく息吹……目には見えない「空気そのもの」を香りに変えるための核となる存在だ。彼女は制作過程を振り返り、こう語る。

「香りをまとった瞬間の感覚と、心の中に起こる変化には、確かなつながりがあると私は信じています」

だからこそ、このフレッシュさは単なる爽快感では終わらない。ひと息吸い込むたび、心まで少し軽くなるような感覚。まるで空へ向かって身体がふわりと浮かび上がるような、「蒼の時」ならではの浮遊感が、香りの幕開けに静かに広がっていく。

興味深いのは、このアコードこそが、1912年版との最も大きな違いでもあることだ。デルフィーヌは今回の創作を「復刻」ではなく、「オマージュ」と繰り返し表現する。その理由は、ジャック・ゲランの時代には存在しなかった香料のパレットを取り入れているからだ。

「今日、私にはジャック・ゲランの作品にはなかった香料のパレットがあります。特に、新鮮な空気や空の香りを想起させるオゾニック アコードです。私は、この香りの本来の核となる要素を尊重しながら、この軽やかで爽やかな新鮮さを表現したかったのです」

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メゾンを象徴する香りのシグネチャー「ゲルリナーデ」を構成する香料であるアイリス。収穫に6年を要する貴重な素材で、包み込むようなパウダリックな表情を生む。

そしてそこに静かな存在感を与えるのが、この香りのもう一つの核となるアイリスだ。1912年の「ルール ブルー」でも、香りの中核として咲き誇った花。そのオマージュとして、デルフィーヌはメゾンの象徴ともいえるアイリスに改めて向き合った。特筆すべきは、ゲラン独自の製法によって生み出される「アイリス チンクチャー」である。アイリスの根茎をアルコールに浸し、時間をかけて香りを抽出する伝統技法。約200年にわたり受け継がれてきたこのサヴォアフェールから生まれる香りは、この上なく上質な香りを放つ。

「ゲランだけが受け継いできた極めて希少なノウハウを際立たせたいと思いました。アイリスはメゾンを象徴する花であり、『ルール ブルー』に欠かせない存在なのです」

ベルベットのように柔らかく、パウダリーでありながらどこか湿り気を帯びたアイリスは、この香りに静かな気品と奥行きを与えている。

そして最後に現れるのが、ヴァニラ、アンブロクサンとムスク。しかし、それは従来のフレグランスに見られるような、濃密で甘い官能性ではない。包み込むようなヴァニラの温もりは、決して重たくはない。肌の上で静かに広がり、まるで「蒼の時」の残光のように、長く余韻を残していく。デルフィーヌはこう語る。

「センシュアルであることは、私にとってはフレッシュでクリーンであること。清潔感や透明感のなかにこそ、真の親密さが宿ると思うのです」

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それは決して“誘惑”を目的としたセンシュアリティではない。

長い間、「女性らしさ」はしばしば男性の視線によって定義されてきた。誘惑や官能といった、他者により作り出されたファンタジー。しかしデルフィーヌが描こうとしたのは、もっとリアルで、もっと親密で、もっと複雑な女性像だったのだ。

「最初に伝えたいメッセージは、誘惑ではなく、自分自身を心地よく鼓舞してくれるようなフレッシュさなのです」

その言葉通り、この香りには近年のグルマン系フレグランスに見られる過度な甘さや、女性性を声高に主張するような力強さはない。まるで白いシャツをまとったときのような清潔感と、静かな自信がある。そしてその背景には、彼女が抱く明確な女性観があった。

「私は、女性のための香りを作りたかったのです。近年、フレグランス業界では『ジェンダーレス』がひとつのキーワードとなっています。しかし、『ジェンダーレス』とは本当に現実的なのでしょうか?」

近年、ファッション業界でもビューティ業界でも、性別の境界は曖昧に混ざり合ってきた。一方デルフィーヌは、「女性のため」と言い切る。
しかし、彼女が描いたのは、性別を固定する香りではない。女性だからこそ知っている感覚や経験に誠実でありながら、それを決してステレオタイプへと回収しない、新しいフェミニニティだった。

「私は女性として、女性像を幻想化することはありません。私たち女性が姉妹のように理解し合うように、女性のための香水を作りたかったのです」

印象的だったのは、彼女が「シスター」という言葉を度々口にしたことだ。そこにあったのは、女性を理想化したり、一つのイメージへ押し込めたりするのではなく、同じ時代を生きる女性同士への共感と連帯だった。そして、彼女が香りに込めたシスターフッドは、「ブルー」という色にも託されている。

「だから私は、この香りに込められた“女性のためのブルー”というアイディアを愛しています。ブルーは長い間、男性的な色とされてきたでしょう? でも、女性がブルーをまとったっていいはずです」

それは、長く固定化されてきたジェンダーのイメージに対する、静かな問いかけでもある。彼女が表現したかったのは、いわゆる“ガーリー”な女性像ではない。

「“ガーリー”も女性らしさの一種ではあるけれど、“フェミニニティ”とは違う。この香りには、フルーティーさも、トゥーマッチな甘さも加えたくありませんでした。私にとって“フェミニニティ”とは、例えば恋人のブルーシャツをさらりと着こなしている女性のようなもの。クリーンで、明るく、軽やかでありながら、とてもシック。新しい『ルール ブルー』も、そんな香りにしたかったんです」

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彼女が制作過程で作成していたムードボード。

それは、彼女が制作過程でインスピレーション源としていた、ムードボードとも呼応する。淡いブルーのシャツや風をはらむドレープ、夜のパリ、水面に揺れる光、印象派の絵画、蒼い花々。そして、雲のようにやわらかなギモーヴ。そこには「le bleu pour les filles(女の子のための蒼)」「la page blanche de la nuit(夜の白紙のページ)」といった言葉が静かにちりばめられ、知性や、詩情、そして自由をまとった女性像が立ち現れる。

もともとファッションデザイナーとしてキャリアをスタートさせたデルフィーヌにとって、香りは単なる匂いではない。シルエットや素材、光、色彩、空気感までを含めて、一人の女性を描く総合的なクリエイションなのだ。

そして彼女はこう続けた。

「フェミニニティとは、もっと複雑なものです。シンプルであること、自然体であること、自分自身に正直であること。そういったものの中にも、女性らしさは宿っていると思うのです」

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新生「ルール ブルー」のボトル。1912年にジャック・ゲランの香りのために生み出された「逆さハート」ボトルのスタイルを受け継ぎながら、現代的に昇華した。エッジを際立たせたフォルムに、ゴールドの「L'HEURE BLEUE」の文字が踊る。

そして彼女にとって、そのフェミニニティは決して個人のスタイルだけを意味するものではない。そこには、女性同士が共有する経験や感情も含まれている。

「私たちは女性として、日々さまざまなことに向き合い、多くの課題に直面しています。2026年になった今でも、男女平等が完全に達成されたとは言えません」

男性中心だった調香師の世界で、4人の子どもを育てながら第一線を走り続けてきたデルフィーヌ。その言葉には、自らの人生を切り拓いてきた1人の女性としての実感がにじむ。だからこそ彼女が創りたかったのは、「女性による、女性のための香り」だったのかもしれない。

とはいえ、それは決して排他的な思想ではない。「それでは、この香りは男性には向かないのでしょうか?」そう尋ねると、彼女は笑みを浮かべながらこう答えた。

「もし優しい男性だったら、とても似合うと思うわ」

その答えは、この香りの本質をよく表している。『ルール ブルー』が描くのは、特定の性別に限定された女性らしさではない。優しさ、繊細さ、しなやかさ、そして自分自身に正直であること。そうした人間の内なる美しさそのものなのだろう。

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メインビジュアルは、アーティストのローラ・アクアヴィヴァによるイラストレーション。夢とうつつのあわいに広がる幻想的な情景が、「ルール ブルー」の詩的な世界観を映し出す。

最後に、彼女は「蒼の時」についてこう語った。

「『蒼の時」』には、計り知れないほどの自由が宿っています。妥協せず、挑戦し、大胆でいられる自由です。ありのままの自分であり続けることは、決して簡単ではありません」

昼でもなく、夜でもない。すべての境界がゆるやかに溶け合い、世界が深い蒼に包まれるほんの束の間。その曖昧な時間には、まだ何者でもない自分と、これから何者にもなれる自分が同時に存在している。

「『ルール ブルー』は、昼が優しく夜へと移り変わる、その一瞬の静寂の中で、すべてが可能であることを思い出させてくれる存在なのです」

1912年、ジャック・ゲランが描いた「蒼の時」。彼はかつて、「まだ星を見つけられずにいる時間」としてこの瞬間を描いた。それから110年以上を経た今、デルフィーヌ・ジェルクが見つめる「蒼の時」は、まだ知らない自分自身と出会うための時間なのかもしれない。

現実の輪郭が少しだけほどけ、想像力が呼び覚まされる数分間。昼でも夜でもないその境界には、何者にもなれるかもしれないという自由が宿る。
新しい「ルール ブルー」は、その一瞬の空の色とともに、未来へ踏み出す勇気を静かに香りへと閉じ込めている。

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ルール ブルー オーデパルファン

商品名

ルール ブルー オーデパルファン

ブランド

ゲラン

サイズ

50ml

価格

¥17,600 ※30ml ¥12,320(税込)

2026年8月28日(金)全国発売。2026年8月26日(水)伊勢丹新宿店、同日午前10時 公式オンラインブティック、 イセタン ビューティー オンライン先行発売予定