2026.10.20

なぜ、今グランジメイクアップなのか? 90年代カルチャーが支持される理由

完璧ではなく"あえてルーズ"だからこそ、自分らしくて美しい。再燃するグランジのムードをメイクアップでモダンに投影

完璧ではなく"あえてルーズ"だからこそ、自分らしくて美しい。再燃するグランジのムードをメイクアップでモダンに投影

INDEX

90年代カルチャーに学ぶ 自分らしくあるための生き方

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1 グランジロックバンド、ニルヴァーナのカート・コバーンが、1993年に表紙を飾ったイギリスのファッション誌『THE FACE』。中性的な装いは当時のグランジスタイルの象徴でもある。photography: ©amanaimages

2026-’27年秋冬コレクションでもさまざまなメゾンで見受けられたグランジメイクアップ。「grungy」とは汚れたという意味でもあるが、今再びトレンドが巡っているその背景とは?

「そもそもグランジというのは、1980年代の後半にシアトルで生まれた音楽やカルチャーのこと。当時のきらびやかな商業主義に対する反骨精神から生まれ、強くひずませたギター音、社会への不満や満たされない焦燥感を描いた歌詞、古着をレイヤードしたファッションが特徴的で、ムーブメントの中心にいたのがニルヴァーナなどのグランジロックバンド(1)。なぜまたこのカルチャーが注目されているのかですが、当時と同じく今も戦争が起きていて、物価は高騰、貧富の差が激しくなっているのに、SNSを開けばキラキラとした世界ばかりが目に入ってくる。自分ってこれでいいんだっけという思いがみんなの中にあって、当時ニルヴァーナのカート・コバーンに救われていた部分が、時を経て今のムードとリンクしているところがあるのかなと思います」

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2 1992年に公開されたアメリカ映画『シングルス』。グランジロックムーブメントに沸くシアトルを背景に若者たちの恋愛模様が描かれた。photography: ©amanaimages

今の流行でもある、ヴィンテージ感のあるファッション、テイストをミックスさせた重ね着もグランジにルーツがある。

「当時は、シアトルの寒さゆえ持っている服をどんどん重ねていったのだと思いますが、おしゃれを意識してレイヤードしていないのが、逆にモードな雰囲気を生み出していました。映画『シングルス』(2)や90年代のウィノナ・ライダーの私服(4)も色褪せない。ハイファッション界に若者のリアルな空気感を持ち込んだマーク・ジェイコブスによるルック(3)も印象的でした」

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3 1993年、マーク・ジェイコブスがペリー エリスで手がけたコレクション。グランジファッションは当時の高級ファッション界に大きな衝撃を与えた。photography: ©Getty Images

あいまいな輪郭のオーバーリップ、少しムラ感を生かした発色もすべて計算ずく。リップは重ね塗りをしてくっきりと濃く仕上げる分、唇以外のパーツはノーメイクアップで抜け感を意識して。素顔にダスティなブラウンリップをざっとのせる、このバランスこそが90年代ロックから生まれたグランジカルチャーのマインドだ。

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4 ウィノナ・ライダーの90年代初頭の私服スタイル。デニムにヴィンテージ感のあるレザージャケットを合わせ、洗練されたグランジファッションのアイコンに。photography: ©Getty Images

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5 ビキニ・キルのボーカル、キャスリーン・ハンナ。男性中心だったパンクロック界に異を唱え、フェミニズムの思想を牽引。photography: ©Getty Images

また1990年代に人気を博したライオット・ガールと呼ばれるパンクロックバンド、ビキニ・キル(5)もグランジと深い関係にあり、反骨精神とフェミニズムを掲げていた。

「彼女たちを見ると、ミニドレスを着てぐちゃぐちゃになじませた赤リップをつけているけれど、男性のための装いではなく"自分のため"」。共通するのは、強い意志と飾らない自分らしさだ。それを今の時代のメイクアップに落とし込むなら、軽やかに取り入れるのがいい。

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6 今季のプラダのコレクション。幾重にも重ねたカラフルなレイヤードスタイルにグランジメイクアップを合わせたルックが印象的。photography: ©AFLO

「プラダ(6)やラバンヌ、バウム・ウンド・ヘルガーデンのルックに代表されるように、グランジのエッセンスをソフトに反映させることで、モダンに昇華することができます」

メイクアップアーティストMasayo Tsuda

ロンドンにてメイクアップアーティストとしてのキャリアを積み、2006年から「モッズ・ヘア ヘアメイクチーム」に所属し、日本を拠点に活躍。ファッション誌や広告をはじめ、アーティストなど幅広く手がける。