どうかしてるくらい、美味しい。今までみりんと思っていたものはなんだったんだろう。
ストレートで口にしたとき、衝撃が走りました。濃い。甘い。馥郁とした深みがあって、のどを越えてしまうのが、惜しくなる。このまま舌の上で永遠に遊ばせていたい。そのくらい美味しいみりんと出合ってしまいました。
お正月のお屠蘇としてみりんをいただく地域もあるそうです。みりんをグラスに注いで味わった経験はなかったのですが、この美味しさには大感激。これ、甘露酒としてイケるクチじゃないか……。お酒大好き人間の前に現れたスーパールーキー、その出会いに小躍りしたのは言うまでもありません。
純米本みりんの原料は、ごくシンプルなのです。もち米、米麹、米焼酎。もち米を蒸して米麹と焼酎と仕込みます。すると米麹から生成されるアミラーゼによって、米のデンプンが糖分に、タンパク質はアミノ酸などのうまみ成分に変わります。この醸造工程で、酵母やうまみはもろみとなり、ゆっくりじっくり、美味しさや味わいを深めていくのですが、私が普段口にしている大量生産のみりんは、そうではない。醸造工程を劇的にはしょり、「本みりん」と呼ばれるみりんでは出荷まで3か月、「みりん風調味料」に至っては発酵調味料や化学調味料などを盛大に調合してハイ販売っていうじゃないですか!
すべての工程に惜しみなく愛情が注がれています。ええ、もう変態級に。物語は愛知県碧南市の杉浦味醂で始まりました。大手メーカーによる安価なみりんが市場のシェアを占めるなかで、小さな味醂蔵は次々に姿を消していく。経営困難に陥るなか、三代目が蔵の2階で偶然見つけたのが、お祖父さんが残した秘伝のレシピ。100年前にしたためた古式三河仕込み純米味醂の調合を、現代に蘇らせることを彼は誓うのです。かつて祖父がこしらえ、「愛櫻」と名付けて売り歩いていたその看板を守るため、伝統的な製法を復刻させ、本来の味を取り戻す——そのためには、高価な原料を調達し、大量生産とは比べ物にならないくらい長い時間を発酵に費やさなくてはなりません。
並大抵ではない努力を経て、今では超人気純米味醂を生み出す創り手として見事復活した「杉浦味醂」とアムリターラが手を組んだのが、このみりん。原料に熊本県産の緑米のもち米(ちなみにこちらも超ストイックな自然栽培で変態的に作られている原種米です)と米麹、本格焼酎を厳選。もろみには180日というあり得ないくらいの時間をかけ、昔ながらの圧搾機で丁寧に絞ります。そのあとの貯蔵熟成にも300日以上。つまり出荷まで1年以上かかっているんですよこのみりん!贅沢過ぎます。
古代米を使っているため、養分が豊富。お米がしっかり発酵分解しているので、香り立ちもとっても華やか。だから、ぜひたっぷりしたワイングラスで香りを回してから味わってほしいのです。甘みたっぷりなのに、糖質は同量で砂糖の約4割。血糖値を跳ね上げるGI値も砂糖が109なのに対し、15しかありません。血糖値が急激に上がりずらいのも、おとなには嬉しいメリット。
「きれいは、おいしい」そのシンプルなことばが全てを物語っていると思うのです。口にしたものが、明日の自分になる。というわけで、頑張った夏の日の晩酌にお気に入りのグラスでチビチビといただくうちに、あっという間に飲み干してしまったんですね。料理に使う前に空瓶になっていた事実に愕然。ああ、あのみりんでピカピカのぶりの照り焼きを作りたい。味がしみしみにしみたカボチャの煮物を作りたい。発売は今月中旬。手間を惜しず、時間と愛情を注いで作られた宝石のようなみりんを、この手に再び掴むことができるのでしょうか。発売日、アムリターラの店舗に駆け込むアップを今から始めています。