2020.04.07

さあ、絵画を学ぶ時間ですよ #StayHome #深夜のこっそり話 #1255

本格的な在宅勤務になり「おうち時間」が増えています。予定していた外出がキャンセルになった先週末は、久しぶりに本棚の整理を。手に取った本が面白すぎて読みふけってしまう整理整頓あるあるトラップにしっかり誘導してくれたのは、視覚デザイン研究所から刊行されている、「巨匠」シリーズの2冊。読み物としても解説書としても面白い、ユニークなアプローチ。絵画に興味がない人でも、『情熱大陸』や『プロフェッショナル 仕事の流儀』といったドキュメンタリーテイストで画家とその作品にふれられる傑作本です!

『巨匠に学ぶ構図の基本』は、名画の名画たる所以を構図の観点から検証。大胆にクロップしたりミラーリングして見ることで、作品本来の構図と比べ、その効果を紐解きます。単なるテクニック集にとどまらず、画家に意図することや伝えたいことがあり、それを表現するための最適解としての構図だったんだというところまで分析。絵画は“観るメッセージ”なんだと思い知らされます。

さらに面白いのが『巨匠に教わる絵画の見方』。この本でいう巨匠とは、ルネサンス前夜から20世紀美術まで、ジョット、ダ・ヴィンチにはじまり、モネ、ゴッホ、クリムト、ピカソにホックニーにいたるまで、名画を世に送り出してきた画家たちのこと。彼らの代表的な作品を、その人生や歴史的背景とともに解説します。そして興味深いのは、文献に基づき、本人のコメントに加え、後の巨匠のコメントも掲載されていること。

例えば、モネの作品に対するゴッホの「印象派ではモネしか認めないよ。彼が風景を描くようにぼくは人物を描きたい(P88)」といったクール発言があったり。そんなゴッホの作品に対してゴーギャンは「ゴッホはすべてが乱雑と混沌のなかにあるクセに、キャンバスの上ではすべてが輝いている。また、彼の芸術についての言葉も同様だ(P104)」と、ツンデレな賛美を述べたり。巨匠たちのいわゆる“口コミ”がうまくまとめられているのです。

クセのあるふたりの画家による、似て非なるミレー観が対比できる、「ミレーの解釈をめぐるゴッホとダリ(P80)」なんか最高です。巨匠たちがどのような視点で絵を見ているかということに対する驚きもさることながら、絵画は観る人によって様々な視点と受けとり方があるという、忘れかけていた気づきを与えてくれます。

フェルメールを崇拝していたダリは言いました。「偉大な絵は、芸術家が暗示するだけで、目に見えない大きな力を感じとることができる(P46)」。そう、絵画も写真もイラストも漫画も、上手い下手ではなく、人々の心を掴むものが名画・名作になるんだなと。

大学生のとき、はじめて訪れたパリのルーブル美術館で見たモナリザ。名画中の名画です。直近でいうと、マルモッタン・モネ美術館での印象派の作品群。それぞれ、何がどういいのかはすぐに言葉にできなかったけれど、それらを目の前にしたときの足がすくむ感じははっきり覚えてます。

今まで訪れた美術館にもう一度足を運び、名画と再会したい、新たな視点で対話したい。まだ見たことない作品もできるだけこの目で見たい。もう旅に出たくて出たくていたしかたなくなりました。このウイルスの問題が早く収束することを願いながら、いつかその望みがかなう日がくることを祈り、今夜はこの本を通して楽しく絵画にふれたいと思います。

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エディターYOSHIMURA

食べること、カラダを動かすこと、旅することが大好物のアクティブ派。その反動か、ワードローブは甘め嗜好。花柄アイテム&ワンピースがクローゼットを占拠しています。

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